東大グレアムです。
ファイザーのワクチン報道でハイテクグロース株の投資家の多くが打撃を受けましたが、私はこのヘッドラインに逆張りしてトレードしました。
主要株価指数
S&P 500(青線)、NASDAQ 100(オレンジ線)、RUSSELL 2000(緑線)の5日チャートです。
11月11日はS&P 500は+0.77%、NASDAQ 100は+2.31%、RUSSELL 2000は+0.00%とファイザーのワクチン報道で下落したハイテクが盛り返しました。
S&P 500 Map
11月11日のS&P 500のヒートマップです。
11月9日~10日に見られたハイテクからバリューへのセクターローテーションの巻き戻しが起きました。
長期金利
米国債の10年利回り(青線)、20年利回り(赤線)、30年利回り(緑線)の5日チャートです。
9日にワクチン報道で金利が跳ね上がり、いったん下落して10日も上昇傾向を示していました。
10年国債の入札状況
10年国債の発行額
11月10日に10年満期の米国債の入札がありました。
発行規模は41B$と前回10月の35B$からさらに増加し過去最高となりました。
応札利回りは先月の0.765%から0.960%まで急上昇し、3月11日のオークション以来の最高利回りとなりました。
応札倍率は先月の2.47から2.32に低下しました。
前日の11月9日には3年満期の米国債の入札があり、そちらも需給が悪化していることを示していました。
選挙結果は財政出動に積極的なブルーウェーブの可能性は低下していますが、国債の発行規模は拡大を続けており、市場は引き続き財政赤字拡大への懸念と米ドルの信認への懐疑的な姿勢を強めていると考えてよいでしょう。
実質金利
Daily Treasury Real Yield Curve Rates
11月以降の実質金利です。
ワクチンの発表があった11月9日は実質金利も跳ね上がっており、30年限の実質利回りが-0.15まで急上昇したことはハイテクグロース株のバリュエーションに悪影響を及ぼすため、注意するべきです。
尚、11月10日には前日の影響は若干緩和されました。11日は名目金利同様に休場です。
昨今は金利と株価についての話題が盛んですが、以前の記事で示したように、単純に金利上昇が株価にマイナスの影響であると考えるのは誤っており、経済サイクルと潜在成長率、金利・期待インフレ率・実質金利の変動の速度に注意する必要があります。
現在は金利のボラティリティが高く、財政赤字を背景とするドルへの信認の低下も相まって金利上昇の速度が潜在成長率を上回る急ピッチで進行しているため、遠い将来のキャッシュフローを現在価値に織り込んでいるエクイティデュレーションの長いハイテクグロース株にとっては懸念するべき材料となります。
VIXとS&P 500のバリュエーション
VIX (Volatility Index) vs. S&P 500 Valuation
VIX(S&P 500のIV:インプライド・ボラティリティ)とS&P 500のバリュエーションの相関関係を見ると、VIXが大きく減少するときにはS&P 500のバリュエーションは上昇する傾向にあることが分かります。
VIXとVXNはヘッジ・アンワインドにより急落
VIX(青線、右軸)とVXN(NASDAQ 100のIV、オレンジ線、左軸)の3ヶ月チャートです。
11月11日はVIXは-5.44%、VXNは-6.89%と大きく減少しました。
大統領選挙前に不確実性へのヘッジとして急上昇し、イベントリスクを通過したことでヘッジポジションの巻き戻しが起きて急落しています。
先ほどの相関関係に従えば、現在は不確実性の減少により株価のバリュエーションが上昇しやすい局面であることが分かります。
ファイザーCEOがワクチン発表と同時に自社株を売却
米製薬大手ファイザーと独バイオ医薬ベンチャーのビオンテックが共同開発した新型コロナウイルス感染症ワクチンは、臨床試験(治験)で高い有効性を示したことが9日に発表されました。
ファイザーのCEOであるAlbert Bourlaは、COVID-19のワクチン試験の結果を発表した同じ日に、同社の株式の62%を売却しました。
具体的なデータがまだ発表されていないことに加えて上記のニュースから、私はこの材料に逆張りしてトレードすることにしました。
FDAの承認に絶対の自信があるのであれば自社株を60%も売却することはしないはずです。
私は基本的にファンダメンタルズに順張り、ニュースに逆張りです。
ワクチンができても世の中のトレンドが逆行することはない
Ecommerce, online payments, software and SVOD/gaming are *secular* trends.
They were in place before COVID-19, the pandemic simply accelerated them and they'll be here after the virus is gone.
Growth rates will come down, valuations might shrink but they'll keep compounding.
— Puru Saxena (@saxena_puru) November 9, 2020
These high growth stocks are *not* lotto tickets; they are pieces of world-class companies.
As long as the underlying businesses continue to do well, the stocks will bounce back over time. They always do.
— Puru Saxena (@saxena_puru) November 10, 2020
仮にワクチンがFDAに承認されたとしても、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れが逆行することはありません。
昨日のARK社のトレード内容
【購入再開】#ZM #CSTL #INCY #TWST
【購入継続】#ARCT #TDOC #ROKU #NTDOY【新規売却】#SPLK #Z
【継続売却】#CGEN #SSYS #XONE #MCRB※取引量やや多く、ROKU、ZM、TDOC等買い増し。 pic.twitter.com/1wsiNM3IWg
— ARK trade information (@ActiveArk) November 10, 2020
グロース株界隈では注目されている機関投資家のARK社がこの材料に対してどう反応するのかと思っていましたが、やはり材料に逆張りでワクチンのヘッドラインを見た個人が投げ売ったROKU/ZM/TDOCを結構なボリュームで買い戻していました。
ズームちゃんを買い増しました!!
Zoomの株価チャート
私は上記を踏まえて、11月11日の開幕直後にZMを買い増しました。
既に保有しているものも6月の決算直後に購入したものであり、平均取得単価が$200付近であるためそのまま保有しています。
$300台で買えましたが、株価を振り返ってみるとこれは前回の8月末の決算直後の水準となっています。
保有していたグロース株の中には大きく下落したものもありましたが、他の保有株については一切取引していません。
私はポートフォリオの個別株はどれもポートフォリオ全体の7%を超えないように管理しているため、仮にそのうちの1つが大きく下落しても致命傷を負うことはないようになっています。
億り人の中には、特定の銘柄を徹底的に分析して集中投資をしたほうがリスクが低いと言っている人もいますが、それは単なる成功者の生存者バイアスであって明確に誤っており、自身の成功の大半が運によって支えられてきたことを自覚していないだけです。
真のリスクとは”想定外”のものであり、財務諸表やネットで入手できる情報には表れない部分にあるわけで、それを私たちは管理することができないため、アセットクラスや保有銘柄の適切な分散をする必要性があります。
まとめ
・国債の発行規模は拡大を続けており、市場は引き続き財政赤字拡大への懸念と米ドルの信認への懐疑的な姿勢を強めている。
・金利上昇の速度が潜在成長率を上回る急ピッチで進行しているため、エクイティデュレーションの長いハイテクグロース株にとっては懸念するべき材料となる。
・現在はIVの減少により株価のバリュエーションが上昇しやすい局面である。
・ファイザーのCEOであるAlbert Bourlaは、COVID-19のワクチン試験の結果を発表した同じ日に、同社の株式の62%を売却した。
・ワクチンがFDAに承認されたとしても、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れが逆行することはない。
・ARK社はワクチンのヘッドラインに逆張りしてトレードした。
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