東大グレアムです。
世界中の中央銀行が金融緩和をしているので、株価が上がりまくっています。
S&P500のチャート

NASDAQ100指数には出遅れましたが、最近はセクター循環で今まで弱かった株が大きく指数をけん引しています。
NASDAQ100のチャート

NASDAQ100指数は過去最高値を更新しました。
2番底を警戒しすぎた自称マーケットタイミング読めるマンことノンポジマンは、悔しすぎていぬまんさんのツイートを直視できない状態に陥っていることでしょう。
マーケットタイミングを読んで投資した人も一部にはいるようです。
しかし、当てられないリスクを考えた場合、底で仕込むために暴落を待って現金にインベストメントし続けることは機会損失のほうが大きいです。
長期投資をしているのであれば、リスク許容度の範囲で株式を保有し続けたほうが賢明です。

Euro Stoxx50のチャート

QE infinity? The European Central Bank’s emergency stimulus has no real end in sight
ECBも想定以上の金融緩和をすることを発表したので、アメリカ株に遅れて欧州株も大幅に上昇していますね。
無限の量的緩和は草
日銀の”躊躇なく追加緩和”を思い出してしまいました。

私は投資信託で先進国株式を若干積み立てており、欧州株の戻りが遅いことからやっぱりアメリカ1本で良かったか?とか思っていましたが、まあこれでS&P500に対する先進国株のアンダーパフォームは短期的には幾らか改善されるでしょう。
S&P500時価総額とマネーサプライの比率

The Really Big Stock Bull Case Says Fed Stimulus Doesn’t Go Awayより引用
S&P500の時価総額をM2(マネーサプライ、通貨供給量)で割った値は20年間の平均値よりも低く、企業業績の悪化を考慮しないのであれば、株価は割高とは全く言えず、寧ろ割安であることが分かります。
リーマンショック以降、株価の変動要因の9割は流動性であり、企業収益の影響は1割に過ぎません。
つまり、金融経済が肥大化しすぎて、実体経済よりも大きくなっているのです。
アメリカ人の大半は株式を保有しており、仮に株価が暴落すれば、逆資産効果が働いて実体経済に多大な悪影響を及ぼします。
資産効果とは
名目資産の価格及び価値の上昇に伴い、消費や投資、あるいは雇用などが活発化すること。特に株価や土地価格の上昇が、消費や投資の拡大に影響を与えることを指す場合が多い。
反対に、株価や土地価格の下落することで、消費や投資が減少することを逆資産効果と呼ぶ。
資産効果はデフレや金融危機からの脱却において重要な要素の一つとしてみなす場合もある。
(Weblioより引用)
What are the Federal Reserve’s objectives in conducting monetary policy?
本来、Fedの役割は雇用の最大化と物価の安定であって、株価の維持はその役割には入っていません。
しかし、今日のように金融市場が実体経済を凌駕している現状では、Fedの本来の役割を達成するためには株価を安定的に維持(笑)せざるを得ないのです。
よって、株価はどんなに下がっても、名目上はすぐに上がって元に戻ります。
そうなるように中央銀行が金利を下げたり社債を買ったり、日銀のように株を買ったり(笑)して株価を操作するからです。
当たり前ですが、このようなことには大きな副作用が伴います。
通貨価値は下落します(ただし大半は金融市場に流れ込むので消費財の名目価格の高騰は名目資産価格の高騰よりも穏やかです)し、ゾンビ企業が淘汰されずに残り続けることによるリソース配分機能の喪失により、国家の長期的な成長が阻害されます。

給付金で株を買うアメリカ人www

Many Americans used part of their coronavirus stimulus check to trade stocksより引用
さらに、今回は中央銀行の資金供給に加えて財政出動も伴っており、もはやヘリコプターマネーとしか言いようがない状態となっています。
失業給付金の方が庶民の給与よりも高いので、働くのがばかばかしくて仕事に戻りたくないアメリカ人が多いとのことです。
やる前から分かりそうなものですがwww
Awareness is growing that the PPP results in many people “making”more money by not working at their prior job. That seriously increases the labor costs of “re-opening”, making it impossible for many small businesses to “re-open”.
— Jeffrey Gundlach (@TruthGundlach) April 23, 2020
ふざけたことに、給付金の最も多い使い道は株取引です。
他の遊びやギャンブルができなかったので、株取引で楽しんでいたというわけですね。
オンライン証券会社の口座開設数が急増

Young investors pile into stocks, seeing ‘generational-buying moment’ instead of riskより引用
自宅にいて暇だったので、オンラインの口座開設が急増しました。
株アプリのポジションが急増

Young investors pile into stocks, seeing ‘generational-buying moment’ instead of riskより引用
Robinhoodという、ミレニアル世代が好きな株アプリのポジションが、コロナショックによるロックダウン以後に急増していることが分かります。
彼らは基本的に株式の知識や経験はなく、イケている株にノリとテンションで投資をするのがカッコいいと考えているので、NASDAQの新興銘柄が人気でした。

5月の雇用統計の修正
Here’s why the real unemployment rate may be higher than reported
そんな中、投資家の中には、集計結果の解釈の関係で5月の雇用統計の数字が発表よりも悪化することを悲観している人もいるようです。
しかし、そもそもFedの役割は雇用の維持であることから、失業率が悪化すれば金融緩和をする口実ができやすくなります。
(日本はさらに顕著ですが、仮に雇用統計が良くても、財政赤字のために金利を低く押さえつけざるを得ない財政従属の状態にあります。よって、口実といえるでしょう。)
直近の逆の例を挙げると、18年2月に起きたVIXショックは、雇用統計の賃金上昇からFedが経済の過熱を引き締める懸念から長期金利が上昇。それによってVIXが急上昇し、リスクパリティファンドのシステマティックな売りが株安を引き起こしました。
リーマンショック以降、株価の変動要因の9割は流動性であることを考えれば、“過去の”実体経済の数字が若干発表より悪くなったからと言って、必要以上に株価下落の心配をする必要はありません。
賢明なる長期投資家は、ニュースや株価の短期的な動向に一喜一憂せず、自身のリスク許容度の範囲内で株式を保有し続けることが大切です。
それだけで、金融緩和によって実質価値が減少する現金にフルインベストメントしているノンポジマンには圧勝できるのですから。
みんな雇用統計でアゲアゲ!って言ってるけどぶっちゃけ雇用統計よりも金融緩和マネーが流れてることの方がでかいと思う
— 東大バフェット (@utbuffett) June 7, 2020
ポイント
・Fedに続いてECBも想定以上の金融緩和の実施を決定した。
・リーマンショック以降の株式市場の変動要因の9割は流動性であり、企業収益の影響は1割しかない。
・金融経済が実体経済よりはるかに大きくなっている現代では、逆資産効果が起きないように、中央銀行は株価を安定的に維持する役割を実質的に担わされている。
・財政出動で給付金を配った結果、大半は株式投資に使われていることが分かった。こうした個人投資家の動きも株価の上昇にいくらか寄与しているものと考えられる。
・雇用統計は実体経済の過去の数字であり、悪化したからと言って長期投資家がその内容に一喜一憂する必要はない。
・長期投資家は、ニュースや株価の短期的な動向に一喜一憂せず、自身のリスク許容度の範囲内で株式を保有し続けることが大切。

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いつも勉強になります。
少し補足していくと、FRBはレポ市場に大量の資金供給を行いました。FFレートも急激に下げたので、今までのP/E 15基準では安すぎ、P/E 20近辺までは株価の正当性が出たということでしょうね。
P/E 20でも株式益回りが5%であれば、米ドルの年間減価率は2%のためFFレートが0近辺に張り付いている今、価値の保存という観点で割と大真面目に株を買ってると思います。
(株式益回り=EPS(一株当たり利益)÷株価×100 = 1 ÷ PER × 100 [PERが20なら5%])
日銀については、M2・M3で見ると、実はそんなに資金供給をしているようには見えません。
https://www.nippon-num.com/economy/money-stock.html
記事のある通り、日銀はETF買いで大量に金融市場に資金を直接供給していますね。
ではEUはどうか?というと、ドイツ連銀の国債購入はドイツ憲法に違憲との判決を下しています。
> 今回のドイツ憲法裁判所の判決は、ECBの金融政策運営ばかりかEUの司法制度や一体性を脅かしかねない。今後3カ月以内に国債購入策が物価安定目標を達成するうえで不適切でないことをECBが証明しない限り、ドイツ憲法裁判所はドイツ連邦銀行(連銀)に国債購入の停止を命令する。ドイツの国内機関であるドイツ連銀はその決定に拘束される。
(https://toyokeizai.net/articles/-/350191 より)
EUは一枚岩じゃないんですよね。大体いつも暴走気味のドイツを周りが抑える、という感じになっているように見えます。
(乱暴に言うと経済状態的にはドイツマルクのEU圏内への固定相場制というのがユーロ)
EU圏内の株式市場はこの状況があるので手が出しにくいですね。
ありがとうございます、勉強になります。
ユーロはおっしゃる通りEU域内の固定相場かつ、ドイツにとっては安すぎ、ドイツ以外の特に南欧諸国にとっては高すぎる対外レートなので、いびつな構造が加盟国間の財政の課題や格差に繋がっています。例えばイタリアのGDPはリーマンショック前の水準を回復できておらず、株価もリーマンショック以降、2度と上がっていません。
私はEUの経済見通しと株価に関しては非常に悲観的です。
EUの国々はアメリカの前に衰退した覇権国家達であり、EUを維持する限りは構造的な課題が解決できない認識なので、それらが再び近いうちに覇権を握るとは考えていません。
今のところ、アメリカの次の覇権国家は中国以外を想定していません。いつになるかは分かりませんが。
では何故EUを含む先進国株や全世界株を投資信託で買っていたかといえば、単純にアメリカ一辺倒になることに対するヘッジですね。
実質的にアメリカ以外に投資している割合は5%程度なので、アンダーパフォームすることがほぼ分かっていたとしても許容圏内との考えです。
なるほど。勉強になります。
僕自身はヘッジのために先進国株式を買うことはありますが、中国株は今のところ買う予定はないです。
中華圏の様子を見る限り、月間1000元程度の収入しかない国民が半分以上いると思われるからです。
雑に言うと、(規模は全然違いますが)日本の平安時代のような経済状態・経済システムになっているため現在の状態では投資環境としてはあまり魅力的ではなさそうです。
インドも問題があると言えますが、まだ希望がありそうです。
インドは北部はドンパチしています。
インドで通訳をしていた知り合いによると、南部のバンガロールは一大ハイテク産業が集まる地区になっており非常に活気があるそうです。
(インド株式は外国人が直接買うことができないのでインデックスに頼るしかないですが)
いつもコメントありがとうございます。
勉強になります。
インドも格差とポピュリズムと財政赤字が問題で、宗教に起因するものも多いので、それらが解決しないと投資対象としてみるのは難しそうです。外資を嫌う国民性もありますし。
30年前にインドは30年後に世界一の経済大国になると言われており、今も変わらず同じことを言われているあたり、宗教やそれに起因する社会構造的問題はそんなに簡単には解決しないのかなあと考えています。
中国は沿岸部だけ見れば強いですが、全体としてみるとおっしゃる通りで格差が大きすぎますね。
インドとの違いは、リーダーである習近平が有能であることと、宗教的な課題がインドに比べれば少ないこととかですかね。
あと、ヨーロッパの歴史を見ると、パクリは国家の発展には寄与するとは考えています。
それが人道的に正しいかそうでないかはさておきですが。
面白い記事をありがとうございます!
1つ思ったのですが、不景気では金融市場から金が引き上げられて、世の中に金が回りインフレになり、好景気では金融市場に金がいって企業が価格競争を始めてデフレになるなんて構図に今後なったりしないでしょうか?いずれにしろ、現金の価値が下がりっぱなしなので投資した方が良いと思っていますが!
可能性としてはあるかもしれません。
・スタグフレーション
・ほとんどの人が実感できない程度の”好景気”とデフレ
財政赤字と金融経済の肥大化によって金融引き締めをした場合の逆資産効果の影響が大きくなりすぎることから、今後Fedは金融緩和一辺倒になる可能性があると考えています。
共和党も民主党も左右ポピュリズムで不人気政策の財政均衡については主張しなくなりました。
その場合、リソース配分機能の消失から潜在成長率が低下し、日本のように実体経済の好景気と不景気の波の振幅が小さくなる可能性があります。
リソース配分機能の消失と競争力の低下は顧客が求めていない商品を世の中に溢れさせることになるため、モノが売れず賃金が上がらずデフレ傾向になります。