東大グレアムです。
市場の考察は久しぶりですが、おおむね2週間前の予想通りとなりました。
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ヘッドラインは大統領選やコロナウイルスとワクチンの状況に終始していた一方で、実際の株式市場は先物やオプション、金利スワップといったデリバティブによって支配されていたといえます。
主要株価指数
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S&P 500(青線)、NASDAQ 100(オレンジ線)、RUSSELL 2000(緑線)の1ヶ月チャートです。
過去1か月間の各指数の変動率はS&P 500が+2.09%、NASDAQ 100が+3.17%、RUSSELL 2000が+5.48%と小型株の上昇の勢いが強かったです。
10月16日ではS&P 500が+0.01%、NASDAQ 100が-0.39%、RUSSELL 2000が-0.31%と、現物の取引時間内の変動は大きかったものの、日単位ではあまり変動はありませんでした。
9月以降は長期実質金利の継続的な低下傾向がストップし、労働市場を除く各種経済指標の回復が見られたことから、小型株が優勢となっています。
S&P 500 Map
10月16日
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10月12日~16日の1週間
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10月16日単体で見るとヘルスケアセクターが強い以外はまちまちでしたが、1週間を通してみるとGAFAMが強かったです。
先物のポジショニング
S&P 500
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CFTC S&P 500 speculative net positions
NASDAQ 100
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CFTC Nasdaq 100 speculative net positions
先物のポジショニングには大きな変化がありました。
S&P 500のネットロングポジションが削られた一方で、リーマンショック以降の歴史的な水準まで積みあがっていたNASDAQ 100のネットショートポジションは全てショートカバーされ、ネットロングに転じています。
忘れてはならないのはショートした先物はロールオーバーしない限りは買い戻さなければならず、大統領選の混乱を狙ったものだとすればこの水準のショートポジションを延々とロールオーバーすることは考えられないので、期近の満期日である12月18日までにはポジションを解消するだろうと見込まれることです。
とすれば、年内に大きな買い圧力が発生することが想定されるので、ハイテク株はボラティリティが高く乱高下する不安定な状態が継続するものの、後から振り返ってみれば大きく上昇していた、という展開になる可能性が高いです。
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NASDAQ 100の上昇は事前に予想していましたが、かなり早く実現した格好となります。
10月12日のNASDAQ 100とIV
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Nasdaq vs. Nasdaq Volatility Index
10月12日はNASDAQ 100が大きな上昇を見せましたが、それと同時にIV(インプライド・ボラティリティ)が上昇しました。
NASDAQ 100のプットコールレシオ
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これは8月と同様、コールオプションの過熱によるものです。
実際、NASDAQ 100のプットコールレシオを確認すると、10月12日には0.12と、9月の相場崩壊を引き起こした8月28日の0.15より低くなっていました。
ナスダック100の時価総額上位を占める個別株のコールオプションも大量に買われており、これも引き金となっています。
10月12日のNASDAQ 100の急激な上昇を引き起こした要因はナスダック100の先物のショートスクイーズと同指数及び構成上位銘柄のコールオプションの積み上げです。
スペキュレーターがコールオプションを積み上げることにより、ヘッジャーがデルタヘッジとして原資産を買い上げるという正のフィードバックループを見越してコールオプションを買うという戦略がコロナショック以降にロビンフッターの間で広まったことにより、NASDAQはここ最近ずっとボラティリティが高い状態が続いています。
ここら辺の話はZeroHedgeが詳しいですので、気になる方は過去の記事を読んでみると良いかもしれません。
ボラティリティ・スキュー
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NASDAQ 100先物のショートポジションの積み上げと並んで買い時である根拠としていたボラティリティ・スキューですが、10月1日を底として上昇を続けています。
現在コロナショックのボトム付近にあり、近くボラティリティ・スキューがボトムをつけるだろうと想定されるので、絶好の買い時が到来する可能性があります。
10月第1週にNASDAQやハイテクを仕込めた人は短期間で大きなリターンを得られたと思います。
実質金利
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Daily Treasury Real Yield Curve Rates
10月以降の実質金利を見ると、10月7日までは長期側の上昇がみられましたが、その後反転し、10月16日時点ではどの年限もほぼ10月1日の水準から変化していません。
ドルインデックス
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大型ハイテク株を筆頭とするインプライド・エクイティ・デュレーションの長い株式が長期側の実質金利の変化に敏感に反応するのに対して、ドルインデックスは長期ではなく短期の実質金利に応じて動くことに注意する必要があります。
10月以降の5年限の実質金利は下落した後に元の値に戻っています。それに対応する形で、ドルインデックスも下落した後に10月1日の水準まで戻っています。
ヘッジファンドのドルのネットポジション
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U.S. Dollar Exposure of Currency Hedge Funds
以前にドルのショートポジションが歴史的な水準まで積みあがっていることを指摘しましたが、ヘッジファンドは徐々にショートカバーしているようです。
米国の政治と株式市場の関連性における真実
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足元、米国の大統領選挙が、株式市場に与える影響について注目が集まっています。
しかし、過去を振り返ると、実際には、政策と株式市場の長期的なパフォーマンスには、ほとんど関連性がありませんでした。なぜなら、株式市場のリターンは、主に企業の収益力と経済成長で決まるからです。
本レポートでは、「投資家は大統領選挙に過度に振り回されるべきではない」というメッセージを込め、過去の株価や経済指標などを用いて、“誰が選ばれても変わらない真実”について説明します。
誰が選ばれても変わらない真実~米国大統領選挙が株式市場に与える影響の考察~
ブログ開設当初からずっと言っていることですが、政治情勢は中長期的な株価にはほとんど影響を与えないので、長期投資家がニュースのヘッドラインに踊らされるのは馬鹿げており、企業分析やマクロ経済分析をやっていたほうがパフォーマンスが上がると思います。
今回も投機筋は大統領選挙での政治的混乱を狙ってナスダックをショートしているようですが、安易なストーリーであり”大多数が儲かるポジションなど存在しない”ことを考えれば、彼らの期待外れに終わる公算が大きいと考えます。
予想通りになってしまいましたね。
彼らのほとんどは9月後半の50日移動平均線付近でショートを入れていたことから、利益が出た投資家はほとんどいなかったものと推測されます。
以下は単なる私のトレード記録なので読み飛ばしていただいて構いませんが、私はNASDAQ先物のショートポジションの積み上げとボラティリティ・スキューの底入れ、その他オプション市場の動向を考慮して、10月1日以降にショートスクイーズ狙いでNASDAQ先物のロングを開始しました。
プットコールレシオの低下、テクニカル指標、株式オプションのコントラクトが10月16日で切れること、10月16日にLiborを参照していた金利スワップがSOFRに切り替わること等を考慮して以後下落トレンドに転換する可能性が高いと考え、10月13日にNASDAQ先物のポジションを全て解消しました。
結果的には、妥当な理由に基づいて取引できた良いトレードであったと思います。
まとめ
・9月以降は長期実質金利の継続的な低下傾向がストップし、労働市場を除く各種経済指標の回復が見られたことから、小型株が優勢となった。
・S&P 500のネットロングポジションが削られた一方で、リーマンショック以降の歴史的な水準まで積みあがっていたNASDAQ 100のネットショートポジションはカバーされ、ネットロングに転じた。
・先物のショートスクイーズとコールオプションの積み上げによってNASDAQ 100は急激に上昇した。
・大型ハイテク株を筆頭とするインプライド・エクイティ・デュレーションの長い株式が長期側の実質金利の変化に敏感に反応するのに対して、ドルインデックスは長期ではなく短期の実質金利に応じて動く。
・市場のリターンは主に企業の収益力と経済成長で決まるため、政策と株式市場の長期的なパフォーマンスにはほとんど関連性がない。
以後の株式市場は、短期的にはNASDAQ 100先物のネットショートポジションがカバーされ終わったことで、これまでのような急激な上昇は期待できず、政治的なヘッドラインに踊らされる可能性が高いです。
また、決算シーズンが本格化します。決算内容次第では、高いバリュエーションが修正される可能性があるので、注意したほうがよいでしょう。大型ハイテク株の決算は市場の方向性を決定づけると思います。
大統領選挙後は追加財政支援策による財政赤字により、インフレが加速するリスクが高いので、リスクヘッジとして事前にコモディティをポートフォリオに組み入れたほうが安定すると思います(すでに農作物の先物市場はインフレのシナリオを織り込み始めています)。
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