東大ぱふぇっとです。
ツイッターで以下の質問を受けました。
物凄い初歩的な事なのかもしれませんが、株価、原油、金、債券の値段がどう連動しているのか、又その際値段の変動する順番について教えて頂きたいです。
以前に株式以外のディフェンシブ資産について述べました。金や債券と金利の関係について説明しているので、まだ読んでいなかったら読んでみてください。
![](https://selfinvest.net/wp-content/uploads/2020/03/盾-1-320x180.png)
原油
![](https://selfinvest.net/wp-content/uploads/2020/08/石油.png)
グラフは原油価格とS&P500です。以下のグラフのオレンジの線はすべてS&P500です。
原油価格は実体経済の動きと基本的には一致します。実体経済が活性化すると原油の需要は上昇するため、景気が良いときは原油価格は高く、景気が悪いときは原油価格が低くなります。
株価は実体経済の先行指標であるため、株価が下落した後、原油価格が下落するという構図がITバブル、リーマンショックでは見られました。
原油価格と株価の関係は単純なものではありません。その時々の産油国の協議状況といった政治的要因に加えて、リーマンショック後の価格変動にはアメリカのシェールオイル企業の台頭やその採掘コストの低下といった技術的要因も大きく関係しています。
一方でコロナショックでは株価と原油価格は同調しており、株価と同時期に下落しています。
今回はOPECプラスの協議決裂とコロナショックが重なったこともありますが、原油や他のコモディティが金融商品化され、機関投資家の資産に組み込まれたより、株価との連動性が高まったことも要因の一つです。
現在は原油価格がOPECプラス決裂とコロナショックの半分以下にまで下がっていますが、現在の価格がアメリカのシェールオイル企業の損益分岐点を下回っていることから、30ドル/バレルを下回る価格水準が長くは続かないだろうと予測されます。
株価が実体経済の先行指標であることを考えると、株価が先に回復した後、原油価格が追随する形になるのではないかと考えています。
金(ゴールド)
![](https://selfinvest.net/wp-content/uploads/2020/08/gold.png)
ディフェンシブ資産の記事で述べましたが、金は実質金利との連動が大きいです。一般的には安全資産と見なされていますが、実際には実質金利が上がると金価格は下落することに気を付けましょう。
今回のコロナショックでは原油と同様に、金融商品化されて機関投資家の資産に組み込まれていたため、株式と同時に売られて現金化されたという側面もあります。
今回もリーマンショック同様、主に債務返済のための現金需要逼迫に対してFedの大幅な資金供給がありました。現金需要の逼迫が解消された後は通貨価値が大幅に下落することが想定されます。よって現金価値と逆相関である金価格は一時的に下落した後にオーバーシュートする可能性が高いと考えています(リーマンショック後、株価よりも金価格が大幅な上昇をしていることに注意)。
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債券
![](https://selfinvest.net/wp-content/uploads/2020/08/国債.png)
グラフはアメリカ10年国債です。
一般的にリスクオフ時には安全資産と見なされている債券は上昇します。この点では株式と逆相関と言えます。しかし、金融引き締め時は株式も債券も両方下がり、逆に金融緩和では両方上がるのであまり逆相関に期待し過ぎないほうが良いです。
最近は債券の利回りが下がりすぎて、債券価格の上昇余地がなくなっていることもマイナスポイントです。今回のコロナショックでは先の原油や金と同様、株とセットで金融商品化され、リスクオフで現金化され暴落しました。安全資産と考えていた人は金と同様、はしごを外された格好になったかもしれません。
現金需要の逼迫が解消された後は、Fedの債券購入もあり、再度債券価格は上昇すると見込まれます。しかし先ほど述べたように通貨価値が急落(=インフレ)することが想定されます。債券はインフレに対して現金と並んで最も弱い資産の1つであるため、中期目線での保有はお勧めしません。
各資産のまとめ
3つの資産とも、近年は金融商品として組み入れられたことにより株式との順相関が強まっています。リスクパリティ戦略※を取る機関投資家が増加していることも寄与しています。一般的に安全資産と考えられている金や債券が常に安全ではないことに気を付けましょう。
※リスクパリティ戦略について
リスクパリティ(Risk Parity)とは、ポートフォリオに占める各資産のリスクの割合が均等になるように分散して保有することで、リスクを低減させる運用手法を指します。欧米の年金マネーなど海外機関投資家の間では幅広く活用されている方法で、株式や債券、コモディティなど異なる資産の保有リスクを揃えるため、各市場のボラティリティ(かい離率)の動きに合わせて、それぞれの組み入れ比率をその都度変更、調整します。
現在、世界でこうしたリスクパリティ戦略を採用する資金は巨額に上り、過去の世界同時株安の呼び水になるなど、マーケットへの影響力がかなり大きくなっているといわれています。(出典:SMBC日興証券)
リスクパリティファンドは、各資産のボラティリティが急激に高くなると、一斉に資産を手放して現金化するため、今回のコロナショックでは全資産クラスが暴落する結果となったわけですね。
各資産の連動する順番
Fed(アメリカの中央銀行)の動きや実体経済のその時の状況に影響されますので、一概には言えませんが、景気後退時にはどの資産も下落します。順番でいえば株式が先に反応したのち、原油→債券≒金に波及します。しかし先のリスクパリティの話もあるのでほぼ同時と考えたほうが良いでしょう。
ポイント
・原油・金・債券は金融商品化され機関投資家のポートフォリオに組み込まれたため、各アセットクラスの価格連動性が高まった。
・リスクオフ時の価格変動はリスクパリティ戦略を取る機関投資家の動きに注意する必要がある。
・コロナショック後はFedの大幅な金融緩和により通貨価値が下落するリスクが大きい。
・通貨価値の下落に強い安全資産はゴールド。逆に債券は通貨価値の下落に弱い。
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