東大グレアムです。
9月23日の市場は実質金利とドルインデックスの上昇を背景に、株式・コモディティ・暗号資産(仮想通貨)といった全てのドル建て資産が下落する流れが継続しました。
9月前半の下落はハイテクの割高なバリュエーションを背景とした一時的な調整でしたが、FOMC後の下落は市場がFedの姿勢を金融引き締めであると解釈したからであると考えられます。
主要株価指数
S&P 500(青線)、NASDAQ 100(オレンジ線)、RUSSELL 2000(緑線)の1ヶ月チャートです。
9月23日の市場はS&P 500が-2.37%、NASDAQ 100が-3.16%、RUSSELL 2000が-3.04%と全体的に大暴落しました。
もはやハイテクだけの下落ではありません。
ハイテクは暴落します()
貴金属
金先物(赤線)、銀先物(オレンジ線)、プラチナ先物(緑線)の1ヶ月チャートです。
9月23日の市場は金先物が-2.07%、銀先物が-6.60%、プラチナ先物が-2.88%(執筆時点)と前日に引き続き大暴落しています。
暗号資産(仮想通貨)
ビットコイン(青線)、イーサリアム(オレンジ線)、リップル(緑線)の1ヶ月チャートです。
こちらも大暴落しています。
安全資産()
ドルインデックス
株式市場も貴金属市場も暗号資産(仮想通貨)も大暴落した原因は、以前から指摘している通り、実質金利の上昇を背景としたドルインデックスの上昇です。
ドルインデックスが一気に上昇したのは、歴史的なショートポジションの積み増しが背景にあったことは以前の記事でも説明しました。
実質金利
Daily Treasury Real Yield Curve Rates
実質金利の上昇とフラット化の進行
9月以降の実質金利のイールドカーブを見ると、全体として上方へシフトし、さらにフラット化していることが分かります。
これが意味することは、債券市場は現在の状況を金融引き締めと解釈しているということです。
FOMCの前後で流れが変化
NASDAQ先物のチャート
NASDAQ先物のチャートとその出来高、50日移動平均線です。
チャートを見ると、9月11日(矢印)では50日移動平均線の上で出来高が大きく減少し、その後FOMC直前の9月16日までは上昇しており反発の兆しが見えていました。
しかし、9月17日のFOMCでFedは緩和的な姿勢は示したものの、米国債買い入れのデュレーション長期化等の追加緩和の具体的な手段に乏しいと市場は判断し、以後は再び出来高を伴って下落して50日移動平均線を下にブレイクアウトしました。
元々私は9月初旬から始まった下落が、ハイテクの割高なバリュエーションを背景とした一時的な調整だとしていましたが(Morgan・GSも同様の見解だった)、それは8月の投機的な上昇の背景にあったコールオプションの過熱の収まりによるインプライド・ボラティリティの減少や社債スプレッドとの乖離を根拠としていました。
しかし、その後のFOMCとそれに続くパウエル議長の連日の証言により、全力で金融緩和するというパウエル議長の発言と具体的な金融政策にギャップがあることに市場関係者は気づいたと考えられます。
パウエル議長が金融政策でできることは全てやり切っており、後は財政刺激策が重要だという姿勢であることが分かったので、次々と金融緩和策が提示されるものと思い込んでいた市場関係者は予想を裏切られる形になったと推測されます。
よって、今回の下落はFOMC前後で下落の理由が異なると考えられます。
まとめ
・市場はFOMCとそれ以後のFedの証言から、金融引き締めであると解釈した。
・実質金利のイールドカーブは全体的に上方へシフトしフラット化が進行している。
・ドルインデックスは実質金利の上昇とショートポジションの過大な積み上げを背景としたショート・スクイーズにより急激に反発しており、それが株式・貴金属・暗号資産(仮想通貨)のドル建ての価値を棄損した。
・FOMC前の9月前半の下落はハイテクの割高なバリュエーションを背景とした一時的な調整であったが、FOMC後の下落はFedの金融政策に対する姿勢が発言とはギャップがあり、次々と金融緩和策が提示されると思い込んでいた予想を裏切られたことによるものと推測される。
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