東大グレアムです。
半導体製造王手Intelは7月23日の2020年Q2決算は、売上・利益ともにアナリストの予想を上回る増収増益となったものの、7nmプロセスのチップのリリースが半年遅れることに加えて、予想を下回る3Qガイダンスを発表しました。
その結果、株価は一時18%を超えて暴落し、$49.50まで下落しました。終値は16%下落した$50.59でした。
Intel決算内容
・2020年2Qの売上、利益はデータセンターの好調とコロナ需要によって増収増益。
・7nmプロセスのチップは歩留まりが社内目標から1年遅れとなっており、リリースは半年遅れる。改善は2023年までずれ込む見通し。
・予想を下回る3Qガイダンスを発表。
・TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)への委託生産を拡大する。
Intelがもはや世界最先端の半導体製造技術を持つ会社でなくなったことを示唆しています。
主要3指数

1ヶ月チャートです。
S&P 500(青線)、NASDAQ 100(オレンジ線)、RUSSELL 2000(緑線)です。
最近のNASDAQはCHINEXTと連動しているように思われるので、そちらも見てみましょう。
NASDAQとCHINEXT

NQ(NASDAQ先物、青線)と中国版NASDAQであるCHINEXT(赤線)です。
CHINEXTは7月24日に6%を超える暴落となりました。
NASDAQはCHINEXTのバブルが崩壊した7月13日以降は不調です。
S&P 500 Map

真っ赤なIntelと緑のAMDが対照的です。
GAFAMではAmazonだけがプラスとなりました。
Intel vs AMD

7月24日の株価は、Intelは-16.24%と暴落した一方で、CPUの競合であるAMDは+16.50%と暴騰しました。
TSMC
AMDのチップはTSMCで生産されており、Qualcomn、NvidiaもTSMCをMainFabとしています。
IntelがTSMCに製造委託することは、アメリカの主要半導体製造企業がほぼ全てTSMCを使うということを意味します。

これを受けて、TSMCは+9.69%と暴騰しました。
Appleとの別れ
Appleも6月22日の基調講演で、MacのプロセッサをIntelから自社製のApple Siliconに切り替えると発表していました。Apple SiliconはTSMCに製造委託する予定です。
この一件もIntelの凋落を示していると言えるでしょう。
Intelの黄金時代Wintel
Wintel(ウィンテル)とは、米マイクロソフト製のWindowsオペレーティングシステムと、米インテル製のCPUやチップセットを搭載したコンピュータのことを指す通称です。
両社のOS・CPUが搭載されたパソコンが大きなシェアを獲得し蜜月状態であることから、この体制を批判的に表現する際に用いられていました。
インテルとマイクロソフトは1980年代の初期x86アーキテクチャとMS-DOSから協力関係にあり、Windowsの成功により30年以上にわたって両社でパソコン市場、ひいてはIT業界において強大な影響力を持つに至りました。(Wikipediaより引用)
このような時代があったことを考えると、最近のインテルの凋落は悲しいものがあります。
SOX(Philadelphia Semiconductor Sector、フィラデルフィア半導体株指数)

Intelの大幅下落を受けて、フィラデルフィア半導体指数も下落しました。AMDやNvidia、TSMCが上昇したこともあり、指数全体としてはそれほど大きな下落とはなっていません。
ドットコムバブルは繰り返すか

IntelとMicrosoftの決算での下落は、ドットコムバブル崩壊を想起させるものですが、今回は何がコロナバブルを崩壊させるのでしょうか?
ドットコムバブルは、ハイテク企業の創業者が自社株を高値で売り抜けたことが崩壊の契機となりました。
Forbesによると、アリババのジャック・マーやテンセントのポニー・マーを始めとした中国の大手ハイテク企業の創業者が、自社株が高値圏にある間に売り抜けた可能性があるとのことです。
中国のCHINEXTの暴落は、中央銀行のバブルを抑制するための引き締め姿勢に加えて、こうした動きも関係しているかもしれません。
参考:金価格

ハイテク株からの資金流出と実質金利の低下により、逃避先である金価格のスポットレートは1,900ドル/オンスを超えました。
まとめ
今回のIntelの決算は、同社が世界最先端の半導体製造技術を持つ会社でなくなり、TSMCとAMDに敗北したことを象徴するものとなった可能性があります。
ドットコムバブルを振り返ると、ハイテク企業の創業者が自社株を高値で売り抜けたことが崩壊の契機となりました。今回も中国のハイテク企業で同様の事例が起きた可能性があり、注意する必要があります。
MicrosoftとIntelという、アメリカのIT・半導体を代表する2社の決算で株価指数が大きく下落したことは、マーケットのセンチメントにかなりの悪影響を及ぼしたと考えてよいでしょう。
どのような素晴らしい企業であっても、その優位性が永遠に持続することはありません。
個別株投資をする場合は、自身の保有株を適切にチェックし、それに”惚れ込む”ことがないようにすることが大切だと言えるでしょう。

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INTELは数ヶ月前のジムケラー退職からなんか危ない感じはしてましたが何というか予想以上の荒れ方ですね。
自分はPS5にも入るZENのテクノロジーへの期待で数年前からAMDかなりの割合で持ってましたけど今回は急に伸びて短期的には嬉しい反面こっちはこっちで嫌な感じですね。最も仮にINTELを持っていたと思うとゾッとしない話ですが。
AMDはすごい伸びですね。
おめでとうございます。
TeslaもAMDも株式投資を始めた当初から注目はしていたものの、私は買えなかったですね。
テクノロジーの技術トレンドの勉強もしていきたいと考えています。
勉強になります。
PC向けのアークテクチャーのx86、そしてその64bit版のx86_64アーキテクチャーのCPUの市場はより性能が良いCPUが少なくともコンシューマー向けの市場を食い荒らすという歴史です。
今よく使われているx86_64アーキテクチャーの別名はamd64と言われる通り、AMDが立ち上げた命令セットです。
サーバー向け製品はXeonとAMDのThreadripperとの戦いになりそうですね。
ただ、Intelはサーバー向け製品の牙城はまだ崩されないとは思います。
近年のサーバーやクラウドでは、CPUのOS仮想化に対応する命令セットを用いて潤沢なリソースをユーザーに切り売りしています。
ここで問題になるのが、Intel CPUの仮想化命令セットはVT-x/VT-dであるのに対して、AMD CPUの仮想化命令セットはAMD-Vというバイナリレベルで全く互換性のないものが実装されています。
クラウドやサーバーで仮想マシンを動かすのに、どちらのCPUにも対応したものがないとAMDの性能の良いCPUは宝の持ち腐れになってしまいますね。
幸いなことに、大抵の仮想化製品はVT-x/VT-d、AMD-Vのどちらの命令セットにも対応しているようで、コンシューマー向けでは乗り換えは容易です。
Intelの苦境は続きそうですね。
いつも勉強になります。
Q2実績でデータセンター向けに対してコンシューマー向けの売上・利益の不調が気になりましたが、規格上の参入障壁があるのですね。
価格ドットコムのCPUランキングでも上位をAMDが占めており、私も買い替えるPCはAMDのCPUにしようかと思っていますが、Intelがコンシューマー向けで存在感を失っていくのは諸行無常を感じます。