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思考法

投資家としての成功と人間性について

東大グレアムです。

マイクロソフトはオンラインニュースポータルMSN.comでの役割を削減し、AIを利用したアルゴリズムフィードに移行したため、Microsoft Azureクラウド部門でも仕事が削減されたとのことです。

Microsoft is reportedly making more job cuts at MSN in favor of an AI-driven system of selecting news stories

また同社は先月末、進行中のコロナウイルスの大流行の中で、小売店を閉鎖し、関連する税引前資産減損費用4億5000万ドルを計上すると発表していました。

Microsoft trims jobs as it enters new fiscal year

例えばアメリカで失業率が増加したというマクロなニュースを目にしたとき、あなたはどのように考えるでしょうか?

私はぱっと以下のように考えてしまいます。

Fedは雇用の最大化と物価の安定をDual Mandateとしているのだから、実体経済を救うために金利の引き下げやバランスシートの拡大を行うでしょう。

また、政府の財政パッケージを引き出す口実になり、財政赤字が増大するでしょう。

そういった政策は金融市場にはプラス材料です。

さらに、雇用の流動性の高さは、EUや日本などの労働組合の力が強く、雇用の流動性が低い社会主義国家と異なり、資本主義国家であるアメリカを継続的な成長に導いてきました。構造改革は投資家の将来的なリターンにはプラスとなります。

冒頭の例のように、イノベーションはしばしば”雇用調整”を生むものです。

歴史を振り返れば、失業率がピークを付けた時が株の買い時であり、失業率が下がりきった時が株の売り時でした。

 

米国の失業率と株価の関係を徹底解剖~失業率に見る景気の行方より引用

現在に目を向けると、コロナウイルスにより実体経済が悪化し、失業率の急激な増加が見られます。

中央銀行も政府も金融緩和・バラマキ方向に動くしかありません。マネーの大半は金融市場に流れ込み、株価は上がるでしょう。資産を持つものと持たざる者の格差がさらに拡大すると見込まれます。

このような思考の中には、実際に”雇用調整”を受ける人々の視点は入ってはいません

もちろん、私もそうした人々に対して無頓着であるわけではないのですが、まず第一に考えるのが”数字”ベースの”マクロな影響”と将来予測なのです。

しかし数字の向こう側には実際に人間がいるということを忘れてはなりません

以下の記事を読んで、私もハッとさせられました。

新型コロナウイルス危機の中、株式投資家の間に広がる冷血な理論を見つけるのは造作もないことだ。最新のロジックは失業が増える中で企業業績が受け得る恩恵に重点を置いている。

経済が本格的な回復局面に達すれば、人員削減が企業業績の迅速な戻りにつながるとの見方は、一段と広く浸透しつつある

・・・

こうした理屈は職を失った多くの米国人の苦しみに無頓着なように聞こえるかもしれないものの、前回リセッション(景気後退)後は11年にわたる強気相場になるなど、前例がある。人間性の抹殺はすでに昨今の株価上昇で避けられない話であり、ウイルスが経済を低迷させている間でさえ急上昇しているアセットライトでアルゴリズム的に最適化された巨大企業中心に回っているのである。

・・・

マーケットフィールド・アセット・マネジメントのマイケル・シャウル最高経営責任者(CEO)は「人間として世界について考えることと、経済的意味合いと市場に対する意味合いについて考えることとは、切り離す必要がある」と指摘し、この2つを融合させたいという人がウォール街で素晴らしい仕事を成し遂げることは恐らくないだろうと語った。

冷血な株式市場の理論-強気相場と失業の関係、費用減で利益増の発想より引用

↓原文はこちら

There’s a Bull Case on Stocks Tied to Rising Jobless Ranks

 

このように、投資家としての成功と人間性というものは、相反するものなのかもしれません。

しかし、私はあくまで経済学者や投資家は、“ cool head but warm heart ”でなければならないと思うのです。

かの著名な経済学者、 J.M. ケインズの師であり、近代経済学の祖と言われるアルフレッド・マーシャル( 1842-1924 )は、ロンドンの貧民街を歩き、その悲惨な状況に触れ、そのような貧困にいる人々のためにこそ、経済学を深めようと決意したと言われる。そしてそのことを、 43 歳でケンブリッジ大学の政治経済学教授に就任する際の演説で述べた。「冷静な頭脳と温かい心( cool head but warm heart )を持ち、周囲の社会的苦難と格闘するためにすすんで持てる最良の力を傾けようとする・(中略)・そのような人材の数が増えるよう最善を尽くしたい」と。

以来、マーシャルのこの名言「 cool head but warm heart 」は、経済学を修める者すべてに求められる資質として定着している。またこの名言は、経済学の範囲を超えて、人間社会に関わる様々な学問領域でたびたび引用されるようになった。インターネットで調べると、ある大学の経済学部長の演説だけでなく、理工系の大学の学長までもこの言葉を引用している。

労働問題研究者の資質より引用

相場ばかり見ていると、ニュースを見ても株価への影響ばかり考えてしまうこともあるかもしれません。

しかし、投資家である前に人間であるのですから、私たちもこうした視点を忘れないようにしたいものです。

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東大グレアム
東大ぱふぇっとの大学時代の親友。主に経済的側面からの短期・中期動向や投資スタイルを解説する。類まれなる頭脳と研究能力で東大ぱふぇっとを支える最強のブレーン。という設定()
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