パナソニックや資生堂と言った企業が構造改革することを発表しております。所感はいかがでしょうか。

日立製作所が大赤字を出して構造改革を始めたのが2009年。抱えている問題は同根なのに、なまじ経営体質が強固だったので、16年遅れをとってしまいました。パナソニックの先日の資料に目を通しましたが、5年は遅れているという印象を受けました。

構造改革ということですが、不採算事業にどこまでメスを入れらるのかにも疑問があります。僕はこういう時、職業病で歴代社長の出身母体をチェックしてしまうんですが、僕が大昔、何度か取材した中村邦夫さんはプラズマTVを推し進めて大赤字を出したことで知られるように、テレビ事業出身。次いで就任した大坪文雄さんはDVDやBluRayで奔走した光ディスクとオーディオの出身。

9年社長を務めた津賀和宏さんはマルチメディア出身、後任で現在はパナソニックHDの社長を務める楠見雄規さんはテレビ事業出身。その楠見さんが後任に引き上げた品田正弘さんもテレビ事業出身です。

もし楠見さんにソリューションだ、AIサーバだ、電子デバイスだというご見識がおありなら、テレビ事業出身の自分の後任に同じテレビ事業出身者を選ぶなんていう、社内派閥抗争の論理を持ち込まなかったんじゃないですか。

このようにパナソニックはテレビとマルチメディアが保守本流ですから、今回それを見直しの俎上にしたのは画期的ですが、自分たちの身を切るような改革ができるのか信用しきれません。

ツートップがテレビ事業出身ですから、トップに生成AIやサーバ、データセンター、ソリューションといったことにもさしたる知見はないと見ています。そういうところからパナソニックの構造改革はスタートします。

日本の家電最後の1社になってしまったので、「街のでんきやさん」もパナソニックが支え続けざるを得ません。パナソニックが家電事業を縮小すると、彼らの多くは廃業せざるを得ません。テレビ事業出身の社長にはそれが痛いほどわかってしまいます。本当に構造改革できるんでしょうか？