質問
最近、高1の息子とよく進路の話をしています。そこでぜひ経済学を実際に学ばれており、経営学を教えていた経験もある立場からのご意見伺いたいのですが、経営学ではなく経済学を学ぶことには、どのような実用的な意義があると思いますか?
回答
えーと、経済学と経営学は、「経済活動を扱っている」という部分は共通していますが、それ以外は別の学問だと思った方が手っ取り早いです。そこのところを先ず理解してください。
「経営学」は、経済活動の一主体である「企業」の経営について研究する学問です。大きく分けて「経営管理(マネジメント)」、「企業会計(アカウンティング)」、「マーケティング」、それに企業を主体にした「金融(ファイナンス)」の4分野からなっています。ちなみに僕が大学で教えていたのは、経営管理とマーケティングにまたがる「経営戦略論」というものです。
現実のビジネスや企業を研究対象にする経営学はとても「実用的な学問」です。しかし、すべて「企業」という単位で見るので、経済活動の大きな動きは研究対象になりません。例えば「景気動向を予測する」ことも「政府の財政支出を見る」ことも経営学ではやりません。経済活動の主体には「政府」「企業」「家計」の3つの主体があるんですが、経営学はこのうちの「企業」に的を絞って、その最適化を研究するわけです。
一方、経済学はこのすべてを対象にします。経済学といっても「マルクス経済学」とかいろいろあるんですが、現在は「近代経済学(非マルクス経済学)」がほぼ主流で、これには大きく分けて「ミクロ経済学」「マクロ経済学」があります。ミクロは個人などの経済主体に着目して、資源配分の効率化や意思決定の最適化といったものを研究しますが、マクロは国家レベルの経済に着目して、その集計結果である物価やGDPの変化を見て、経済成長や景気変動などを研究します。
ここで経済学が「実用的ではない」と言われがちになる理由が発生します。経営学は研究対象が明快で扱う単位が小さいですから直接扱うこともできます。しかし、経済学は研究対象があまりに複雑なので、直接扱うのが難しいから、かりそめの「モデル」を作って、それを扱うからです。現在はこのモデルを作って数式的に扱う「理論経済学」がメインです。
近代経済学のそもそも第一歩が「人間は自己の利益を最大化することを唯一の行動基準とする」というホモエコノミクス(経済人)の仮定です。人間はこの基準に沿って合理的に行動する仮定ですが、現実はもちろんそうではありませんから、ズレが往々にして発生します。ここで経済学は「なんだ、予想が外れるじゃん。役に立たない」と言われてしまいます。
もう一つ、それより大きな、経済学が「実用的ではない」と言われる理由は、経済学部の学生のほとんどが、現在の高度に発達した理論経済学を学ぶ資質がなく、経済学部で過ごす4年間を「なんのこっちゃ」で終えてしまうからだと思います。
経済学はなぜか今も文系科目ですが、理論経済学はある程度の数学的な知識がないとわかりません。最低でもある程度の線形代数、微積分や微分方程式、それに行列などがわからないと、理論経済学はわかりません。高校の数IIぐらいで挫折した人が理論経済学をやるのは、ほぼ不可能です。
最初から数学だらけのミクロ経済学に対して、マクロ経済学は最初はあまり数学が出てこないので、これでマクロに逃げる人もいますが、マクロもマクロ動学とか「実際に使えるレベル」で習得しようとすると、ミクロ経済学以上に複雑な数学、動学最適化問題とか非線形代数がわからないと、一歩も前に進めなくなるでしょう。でもこのレベルまでいかないと、経済学はそのまま使うことができません。つまり実用的ではないんです。
しかし文系科目の経済学部で数学を受験科目にすると、受験生が集まらないという事情があって、受験科目に数学を入れていないところが多いんですね。私立は特にその傾向が強く、僕は慶應義塾大学の経済学部は良く頑張っていると思います。逆にもう一方の私学の雄である早大政経学部経済学科は、数学は社会との選択科目だから、数学を回避することが出来ます。
ここでちょっとだけ暴論を言わせてください。
現在の経済学部に数学ができない人が進学すると、よほど専攻分野を経済史などに絞らないと時間のムダになるから、やめた方が良いです。現在もやたら経済学部がありますが、行って意味がある経済学部は、東大、京大、一橋、大阪、神戸など一部の国立大学の経済学部と慶應の経済学部ぐらいです。数学が受験科目にない私立の経済学部は、線形代数や微積分の基礎を教えるところから始めますから、やめておきましょう。
こうした大学で教えている教授陣の方は、すでに学生にあきらめがついているから、授業に対するモチベーションはかなり低いです。「こんなことを言ってもぜったいわかんないよな」と思いながら講義するほど、つまらないことはありません。ただ、経済学者の就職先として、経済学部が減ると困るんですが。
大学レベルの経済学がわかっていないと困るのは、経済官庁のキャリアや政策決定者、金融機関の営業ではない人、シンクタンクなどそんなに多くはないですから、経済学部はもっと絞って、経営学部や商学部を増やした方が現実的です。その代わり、高校で政経を必須にするとか。大学は高校レベルの政経を学ぶところではないんだよなぁ。でも、実際には多くの私立の経済学部はそうなっています。
だから、もしお子さんが、先に挙げた就職先を考えているなら、受験勉強を頑張って、そこそこのレベルの経済学部に進むことをお勧めします。ちなみに400人もいない東大経済学部は、就職市場にあって永遠の売り手市場です。僕は理論経済学でも特に数学とモデルを多用する数理経済学というものを専攻しましたが、こんなもん本気でやっている大学生は、東大、京大、一橋大などのごくごくわずかの学生ですから、引く手数多です。
東大で数理経済学をやっているようなアホは、ほとんどが大学院に進んで研究者を目指すか、日銀や当時あった経済企画庁に行ってエコノミストを目指し、残りが経済官庁に行ったので、一般的な民間企業に就職しようと考えるアホの中のアホは、もはや絶滅危惧種なんです。でも、銀行もエコノミストは要るし、デリバティブみたいな複雑な金融派生商品を扱う人間として経済も数学もわかる存在は貴重です。僕の時は当時の都銀、今のメガバンクあたりは、就活ではなく、銀行側の採活でした。一度会って欲しいとお願いされて会いに行けば、1時間ぐらい雑談して、飲みに連れて行かれて帰ってくるだけで内々定が出たものです。
では、経済学という学問自体の実用性ですが、こうしてあるレベルで理論経済学を学んでおくと、経済予測であるとか、金融政策や財政政策などの経済に関わる政策立案などに役立ちます。僕は現在、相場を予測するにあたって、経済学の手法を多用しています。経済学の個別分野には、貿易論とか交通経済学とか都市経済学、地域経済学などいろいろあるので、その分野で意思決定者になるには役に立つと思います。
もしそうした分野に就かなかったとしても、「経済学的思考法」、つまりモデルを頭の中で構築して数学的にアプローチする習慣は、実社会でも役に立つはずです。
でも本当に今の理論経済学は理数学科ですから、数学が嫌いや苦手なら、やめておいた方が良いです。数学のない私立の経済学部に進んでも、もう1回、高校の数IIあたりからやり直すだけです。これでついて来られなかったら、4年間遊んで暮らすか、数学が要らないマルクス経済学や経済史など、ごくごく狭まった分野を専攻するしかなくなります。それで「経済学は実用的ではない」と言われても困るんですよね。。。。
以下、余談。これを書いていて思い出したけれど、大学時代、仲間うちでやっていた経済学の研究会に、女子大の同種サークルから「一緒に勉強させてくれませんか?」っていう申し出がけっこうあったんだよな。「研究の邪魔になる」って理由でぜんぶ断ったけど、たぶん彼女たちの目的は共同研究なんかじゃなかったんだよね。惜しいことをしたもんだ🤣。一橋大の某ゼミとはやったけれど、全員男だったんだもん😓。野郎ばっかりの東大と一橋で共同研究して何が面白かったんだろう。若気の至りだわ。。。
相場予測noteを無料お試しできるキャンペーン!
- 相場当てまくりの相場予測noteを無料で読める!
- 秘密の爆益銘柄を無料でチェックできる!
- 紙書籍が郵送されてくる!
- 総額1万円相当を無料でプレゼント!
超豪華な特別キャンペーンをIG証券様が実現してくれました!
- 私の相場予測を無料で読める!
- 総額1万円相当のプレゼントを無料でゲットできる!
IG証券でしか取り扱っていない投資対象が山ほど存在するため、私のように幅広い投資対象へ投資するなら必須の口座ですね!私自身もIG証券を利用しています!
秘密の爆益銘柄も公開中!
ブログの記事は全て無料で読めますが、相場予測noteに関しては有料記事となっています。
予言書とか言われちゃうレベル!?
驚異の的中率!爆益銘柄の公開!
別格すぎる相場予測を公開中!