質問
あくまで単純な興味から聞くのですが、現代において新たな国を作ることは可能でしょうか?
バイオショックというゲームの中に登場する「ラプチャー」と呼ばれる都市に感化されての質問です。
その特徴を簡単にまとめると、宗教や他国の政府による干渉を避けるために海中に作られた都市であり、そこで技術者は自由な研究と科学の発展を追求できる場所です。
水中都市はともかく、この「国を作る」という発想に、興味が湧きました。
実際に建国しようとすると、
①現在存在する国から島なり、国土の一部なりを買い取る(アメリカがロシアからアラスカを買ったような感じでしょうか。その辺りの時代・政治背景なんかもできれば知りたいです)
②国民を移住させる
(タックスヘイブンのような経済メリットや、治安維持に関わらない規制を全面撤廃することによる法的メリットで企業や国民を誘致)
③主権を宣言して、他国に認めてもらう
の3段階で達成されると考えているですが、一番のネックになるのは③でしょうか?
租税回避や、人権問題に発展しかねない②に反感を抱く諸国から、主権を認めてもらえない気がします。
りおぽんさんはこの思考実験について、どう思われますか?教えていただけると嬉しいです。
回答
面白いお題ですね。思考実験として僕も回答してみます。課題は「国家承認」です。結論を言えば「きわめて困難」です。
国際法上の通念として、国家には「国家要件」というものがあります。①明確な領域(領土のことです)、②永続的な住民、③政府ーーの3つです。これで主権国家としての主権が発生するんですが、その上のハードルとして、実際上は他国から「国家として承認されること」があります。これには大きく分けて2つの学説があります。
一つは「創設的効果説」と呼ばれるもので、「国家は承認されて初めて国家として国際法上の主体になりえる」というものです。わかりやすい学説ですが、欠点は現実上は「1国が承認されたからと言って、実際には国家として扱われていない」という問題があります。
良い例として「北キプロス・トルコ共和国」という”国”があります。キプロス島のギリシャ系住民とトルコ系住民が争った結果、事実上トルコ軍の手によって創設されました。実効支配しておりトルコ系を中心にした住民もいます。大統領だっています。国家要件は揃っているんですが、国家承認しているのは今だトルコ1国です。EUが独立国家として認めて国際社会への参画を促そうとしたこともあるんですが、諸般の事情でこの話は決裂しています。
現状で北キプロスを主権国家とは認めないのが通例で、もちろん日本で売っている世界地図も載っていません。僕はこの北キプロスにカジノで遊ぶためトルコから渡航したことがあるんですが、おかげで北キプロスへの入出国の形跡がパスポートに残っている間はギリシャに入国できなくなってしまいました。その代わりトルコで北キプロスが掲載されている珍しいトルコ語の世界地図をゲットしてきましたが。
もう一つの学説は「宣言的効果説」と呼ばれるもので、「国家は国家の3要件を満たした段階で国際法上の主体として存在する。他国からの承認はそれを確認するものである」というものです。こちらの方が現在では通説で、これであれば北キプロスは国家ということになるんですが、実際にはそう認める国はトルコだけです。国家には「国際法上の義務と権利の主体たり得るか」という判断が付きまとうんですが、これが現在の北キプロスではありません。国際法上では「未承認国家であっても政治的自立の権利は保有している」という部分では異論がないんですが、未承認国家を国家として認めるかという問題になると、両学説はうまく説明できていません。
例えば、著作権に関するベルヌ条約に関して、日本の最高裁は北朝鮮映画については著作権を認めない判断を下しています。ベルヌ条約があるからと言って、未承認国家である北朝鮮には日本から見て国際法上の権利義務の主体たり得ず、よってベルヌ条約における義務を当然のように負うものではない、というものでした。文部科学省も外務省もこの判断に沿っており、PCTでも最高裁は同様の判断をしています。「朝鮮民主主義共和国」は過去のさまざまな経緯や中国、ロシア、英国、ドイツなど主要国が国家承認をしていることで、日本の世界地図にも載っているようですが、これはある意味で異例なことです。なお日本のほか米国やフランスは国家承認していません。
もうひとつのややこしい事例として、中華民国(台湾)があります。台湾は明らかに国家要件は満たしています。ただ現在、台湾を「中華民国」として国家承認しているのは、ニカラグアやグアテマラなど13カ国とヴァチカン教皇庁に留まります。日本も中華人民共和国を「1つの中国」としたため、中華民国の国家承認を取り消しています。その後、日本や米国は中華民国を「国家」ではなく、「地域」として取り扱うようになっています。日本の最近の世界地図の多くは「台湾」になっていると思います。台湾については中華民国が実効支配しているので政治的主体として扱うけれど、国家としては扱わない、という立場です。台湾省については中華人民共和国が領有権を主張しています。
関連する事例としては「東トルキスタン共和国」があります。ここは現在、領土を専有できておらず亡命政府を名乗っていますが、一つの未承認国家の事例です。東トルキスタンと言ってどこだかお分かりになったら、地理のプロです。日本では一般的に「新疆ウイグル自治区」の名称で知られていて、国家承認はされていません。
何カ国に国家承認されれば国際社会で「国家」あるいはそれに準ずる扱いになるかという線引きは曖昧で、バチカン市国は国連でもオブザーバー参加して投票権以外を有しています。現在181カ国が国家承認しています。パレスチナ国も現在145ヵ国が国家承認して国連にもオブザーバー参加しているんですが、米国が承認していないこともあって、日本など他のG7諸国は国家承認していません。日本では一般的に「パレスチナ自治区」という名称で知られています。
だいぶ硬い話になってしまいましたが、米国がロシアからアラスカを買えるといったおおらかな時代ではもうなくなっています。そもそもこの「アメリカ合衆国」自体が、コロンブスらによって「発見」された土地で、先住民インディアンから土地を買ったり、メイフラワー号に乗ってやってきたピューリタンたちが虐殺したりしながら、西に追いやっていき、最後の最後は英国兵と移住民の民兵が衝突した結果、独立戦争になり、1787年に13州がフィラデルフィアで憲法制定会議をやって国家要件を満たして「新たに作られた国」です。
実はこの問題は現在でも米国でくすぶっており、米国内には500を超える「インディアン居留地(Indian Reservation)があります。米国ではこれを「Nation」と呼ぶこともあり、広範な自治権も認められています。例えばかつて米国ではネヴァダ州とニュージャージー州以外ではカジノが禁止されていました。しかしこのインディアン居留地では自治権として認められたので、「インディアンカジノ」と言わるるものが成立、非常に豊かになった居留地もあります。
さて「イロコイ連邦」と「ラコタ共和国」という”国”をご存じでしょうか?いやぁ、地理マニアの回答になってきましたね。
これらはいずれも米国内で先住民族である”国”です。イロコイ連邦はニューヨーク州のオンタリオ湖南岸を中心に先住民族インディアンのモホーク族など6部族が集まっています。このため「シックスネーションズ」という愛称もあります。もちろん米国をはじめどの国も国家承認しておらず、主権性も喪失しているんですが、このイロコイ連邦ではFBIの捜査権が及ばないと言われるほど、自治性が高いです。
このイロコイ連邦には約12万人の「住民」がいて、母系社会なので「グランドマザー」がいます。そのグランドマザーに選ばれた男性50人が「首長」として政治をつかさどります。立法権、通貨発行権、課税権、免許発行権、外交締結権、交戦権なども有しており、主権性がないことと、領土を専有していないことから、国家にはなりません。米国は先住権を認めてここを国家承認してしまったら、他のインディアン居留地が大変なことになるので、それだけはできないと思うんですが、もしやと思って僕は楽しみにしています。
もう一つのラコタ共和国は、先住民族インディアンのラコタ諸部族が2007年に米国からの「独立宣言」をしています。ラコタ族は日本では「スー族」という名称のほうで有名ですが、この共和国はネブラスカ州やサウスダコタ州など5州に広範な”領土”を持っていると主張しています。米国民は米国籍を捨てることでラコタ共和国の国籍が得られ、先住民インディアンの多い国に外交団なんかも派遣しています。もちろん米国はまったくこれらを認めていません。たぶんこれらを国家承認してしまったら、米国内に何百という先住民族インディアンの部族国家が誕生してしまうと思います。
質問のご趣旨であろう、もし誰かが「新しい土地」を発見して、そこに住民を送り込んで領有権を主張し、憲法でも作って政府を立ち上げたら新しい国家ができるかどうか、という問題なんですが、21世紀の衛星測位システムで地理が確定してしまう時代に、このフロンディアになる「新しい土地」がそもそもありません。
僕もかつてどっかの南の島や島が多すぎてアバウトな地図しか作れていないフィリッピンあたりの島を買い取って、王様になって移り住んで、政府を作って独立宣言でもしちゃったら面白いだろうなぁと、平凡社の世界地図帳を見ながら夢想したことがあります。
しかしかつては欧州諸国の植民地が多かった大洋州の島国も島嶼国として次々に独立、一大勢力になっています。とてもそんなアバウトな話が認められるご時世ではありません。
「今となってはもう無理」ということを決定的にしたのは、排他的経済水域と海底資源です。排他的水域(EEZ)は小さな島でも保有していれば、その周囲約370km内が排他的経済水域として設定可能で水産資源や鉱物資源に主権的権利を有する、という国際海洋法条約です。「領海」が約22kmですから、大幅な権利の拡張でした。領海ではないので、船の航行や飛行機の上空飛行は妨げられませんが、この条約によって、ちっぽけな島でも経済的な価値が生まれました。日本も沖の鳥島が消失しそうなので、コンクリートで固めて島の侵食を防ぎ、この排他的経済水域を必死に守ろうとしているtいるところでっす。
そしてこの排他的経済水域に絡んで大きなテーマになっているのが海底資源です。南沙諸島(スプラトリー諸島)と呼ばれる、島と言うか岩礁のようなものがあります。戦前は日本が領有しており、新南群島という名称で知られていました。
かつてはほとんど価値がないものでしたが、この排他的経済水域が認められた結果、経済的な価値が生じた上、石油や天然ガスが埋蔵されていることが判明したため、現在では中国、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイの6ヶ国が入り乱れて領有権を主張しているところです。本当にこの海洋資源が採掘できるようになったら、紛争や戦争も起きかねない状況ですから、とても一般人が行って独立国家に出来るような状況ではありません。
以上のように、地球上には一般人が見つけられる新しい土地がなく、小さな島を例え買い取って個人所有しても、島を領有している経済的な価値が極めて高いので、その島を領土として保有している国家が、領有権は手放さない、それで今やもう無理とお答えしたわけです。
昔はグリーンランドも大きそうなので、ちょっとぐらい分けてもらってもいいんじゃないと僕も思ったものですが、もはやそんなおおらかな時代ではないんです。
もし一般人が今後、新しい国家を樹立できるとしたら、それはたぶん「宇宙の星」で住めるところを発見した時か、それこそ海底に都市を作って、それを独立国家にした時です。しかし後者は排他的経済水域の外に作らなければならないので、非常に難しいです。
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