上流階級と呼ばれる人達はその上流階級を維持するために何か普通の人がしないような大変な事もしているのでしょうか？

子女教育には、非常に注意を払う傾向があります。これにはお金を惜しみませんね。それもいわゆる国語算数理科社会以外を含めてです。

僕の祖母が生半可にこの手の層に憧れたので、僕は小学生の頃までにピアノ、チェロ、テニス、乗馬、スキー、水泳、将棋、囲碁、そしてマナーを、先生に付いたりクラブに通ったりして習うことになりました。この合間に地元サッカークラブに所属してレギュラーになり、市の野球大会でエースの4番で優勝したんですから、我ながらなかなかのものです。

僕の父は僕の教育にお金をかけることに不熱心で、公立小中高を出て、自分の出身校である早大に合格すれば十分と考えていました。だから僕の開成中学の入学金を払ってくれたのも祖母でした。英会話教師を付けてくれたのも祖母です。初孫である僕の教育には、ほんとお金を惜しまなかったです。

まあ僕の話はさておき、ボーディングスクールってご存知でしょうか。いわゆる寄宿学校のことですが、特にエリート教育をするところが、そう呼ばれる傾向があります。

この最も有名なボーディングスクールの一つに、スイスの「Institut Le Rosey(アンスティテュイ・ルロゼ)」があります。全寮制の男女共学で、日本で言うと小学生から高校生ぐらいの年齢の生徒が学んでいます。学校があるのは本物の14世紀かなんかの古城だそうです。共通語はフランス語と英語と聞きますが、生徒自身は世界中から集まってきます。常時数十ヶ国ぐらいの生徒がいて、少数ですが日本人もいます。ただやっぱり本物の王侯貴族だとか超の付く大金持ちの師弟が大半です。スイスのプライベートバンクが本物の優良顧客にするのが、このルロゼみたいな学校への入学手続きの手伝いです。ただ入試倍率は10倍以上で、両親の面接もあるそうです。

ルロゼは勉強も相当厳しくて、卒業生の多くはオックスブリッジやハーバードなどのアイビーリーグに進みますが、やるのは勉学だけではありません。冬季になると学校そのものを数ヶ月、グシュタードというスイスの最高級リゾートにあるキャンパスに移して、スキーをみっちりしごきます。欧州の上流階級では、冬の社交はスキーリゾートで行われるからです。

もう笑ってしまったのが、生徒たちの音楽鑑賞のため、ベルリンフィルを招いて演奏会をやらせたと聞いた時です。そんな感じで、常に超一流に触れさせます。授業は先生1人に対して数人の少人数教育で、学費は食費や寮費込みで年間2000万円ぐらいと聞きます。米国の私立有名経営大学院にも勝る、世界で一番お金がかかる学校と言われます。これが本物の「上流階級」の育成の現場です。

このルロゼの在校生は「ロゼアン」、卒業生は「アンセアン」と呼ばれます。僕にはこのアンセアンの友人が数人いるんですが、ものすごい不文律があります。それは「アンセアンからコンタクトがあった場合、年齢が違おうと、資産や社会的な地位が違おうと、もちろん一度も面識がなくても、絶対一度は会ってあげて、話を聞いてあげる」というものです。

会うのはただのおっさんおばさんではありませんよ。世界中の本物の王侯貴族やジェットセッターのような超の付くお金持ちです。例えばアンセアンが起業しようとした時、そういう人が無条件でみんな会って話を聞いてくれるとしたら、どれだけ心強いでしょう。僕の友人のアンセアンのフランス人は、南仏の古城に家があり、元貴族でフランスの某企業のオーナーをやっています。彼がいるとフランスやイタリアで相当無理が効くんですが、アンセアンなら、その彼の支援を受けられるのかもしれないわけです。

こうやってアンセアンのようなものが、密かに上流階級というものを代々維持するために機能するんですね。祖母が知っていたら、僕を行かせたがっただろうなぁ🤣。