質問
「日本を変える」ことができた総理大臣は中曽根さんと安倍さんだけだと仰っていましたが(おそらく直近数十年の話としてでしょうが)、りおぽんさんはこのお二人のどの点をどう評価していらっしゃるのでしょう?
どちらを嫌いなわけでも好きなわけでもなく、後学のためにお伺いしたいです
回答
まず大きいのは「在任期間」です。米国大統領であれば4年間、フランス大統領では5年の任期が保証されます。フランス大統領は2期、つまり10年の在任が可能です。ドイツは政治の不安定化を避けるため、連邦首相があまり頻繁に変わらない制度を敷いています。ここ最近で言えばシュレーダー首相の7年が最短で、メルケル首相に至っては在任期間が16年の長きに及んでいます。ドイツでは「建設的不信任案制度」というものが採用されており、滅多なことでは不信任案は出されず、実際に可決されたのは戦後の西ドイツになって以降、たったの1回だけです。カナダのトルドー首相は現在9年目で、前任のハーバー首相も9年やっています。
対する日本はどうでしょうか。野党はちょっとしたことでもやたらと不信任案を出します。また何かあれば首相の首をコロコロとすげ替えることで、事をおさめようとする政治風土です。ですから首相は目先のことに追われ続けて、長い目で日本の将来を考えることができません。日本の「首相」というのは世界の首脳の中にあって「軽いポスト」なんです。
具体的に言えば、21世紀の日本の首相は、森喜朗さんが1年、小泉純一郎さんが4年、第一次の安倍晋三さんが1年、福田康夫さん、麻生太郎さん、鳩山由紀夫さん、菅直人さん、野田佳彦さんがそれぞれ各1年といった具合です。
日本国民には気が付いていない方も多いですが、「首脳が頻繁に交代する」という点において、日本は先進諸国の中ではイタリアと並んで不安定な国なんです。
どんなに政治的な能力がある方であっても、たった1年ではたいしたことはできません。自分が考えた予算を組んでも、それが執行される時にはもう首相ではないわけですから。また、外交で他国の首脳と会見しても、相手は「どうせ次に会う時には日本の首相は別の人間だ」と考えますから、まともな話をしようとはしません。
外交にあっては「過去の経緯を知っている」ということはとても大きなことです。一時期、ドイツのメルケル首相がG8などで米大統領以上の発言力を持っていた時期もありましたが、これはその在任期間の長さゆえです。シュルツ首相になってから、ドイツの外交力には精彩がありません。
この首相が頻繁に変わる日本にあって、「行政の連続性」を担保してきたのが、キャリア官僚でした。ですから日本の首相は官僚を使わないと、うまく政治ができません。「去年の首相が指示した話」を知っているのは、指示された官僚の方だけですから、事務次官に「こういう話でした」と言われれば、そうだったのかと納得するしかありません。これが「官僚が仕切っている」と言われる日本の行政が生じた最大の要因です。
20世紀においてもこれはあまり変わらず、宇野宗佑さんや羽田攷さんのように在任期間がわずか3ヶ月で、クイズの問題でしか役に立たない首相もいました。自民党が分裂したりして政治が不安定化した1990年代、就任した首相の数は7人になります。ですからバブル崩壊後の日本経済の低迷にも腰を据えた経済政策が取れずにいたずらに時間をムダにしましたし、この時期、日本の国際的な発言力も信用も著しく低下しました。
こうした日本のセミみたいな首相たちの中で、中曽根康弘さんは5年、再登板した安倍晋三さんは8年やっています。中曽根さんは在任は5年ですが、退任後もキングメーカーとして睨みを効かせて院政を敷きました。
その分、自分がやろうと思ったことがやれたわけですし、国際的な発言力も高まりました。長期政権であれば、日本は経済的には今なお大国ですし、中国という存在を除けば、米国と西欧という欧米主体の先進国の構造にあって、唯一のアジアという特異なポジションなので、やれることはあるんです。
最近はまた日本が貧しい国になりつつあるので、対外経済協力が「税金の無駄遣い」とポストされる若い方がツイッターでは少なくないですが、米国もマーシャルプランを端に発する対外経済協力で覇権国家になったわけですし、中国の「一帯一路」戦略もお金ありきです。しかしそれも首相が長期にわたって在任して、国際的な発言力があって初めて意味があります。
この話だけで長くなったので、いったん打ち止めにしますが、中曽根さんであれば、国鉄民営化や電電公社、専売公社民営化などの大仕事をやっています。その裏でやったのは、戦後の日本で巨大権力になっていた労組の弱体化です。国鉄民営化で国鉄の労組だった国労は一気に弱体化、国鉄時代に横行していた「山猫ストライキ」や「遵法闘争」がなくなり、JRになってからは鉄道が定時に走るのが当たり前になっています。
この中曽根首相がやった一連の民営化が大きなインパクトになって起こったのが、官公労働者を中心に組織されていた総評の解体です。総評の中核になっていたのは、公務員を中心にしていた自治労、国鉄職員の国労、教職員の日教組、郵便局員の全逓、それに電電公社職員の全電通といったあたりで、中曽根首相が就任した頃の総評の構成員は450万人ぐらいだったと記憶しています。
労働組合を作るのは別に労働者の権利ですから何も言うことはありませんが、総評は当時、影の権力として猛威をふるっており、左傾化し、反米思想の拠点でした。また闘争の一環として、服務規程違反は当たり前、公務員のサボりも当たり前、公共サービスは劣悪、というのが日本の常態だったと思います。仕事をサボる国鉄職員に怒った乗客が喧嘩をするという、今では信じられないこともけっこうありました。
中曽根首相の民営化はこれを根底から変えてしまいました。不当労働行為かどうか微妙なこともけっこうあったようですが、これでスト権が認められていない公務員が「スト権スト」や「山猫スト」、わざと電車を遅らせて走る「遵法闘争」がなくなって、公務員に「サービス」という意識が生まれました。
この結果、総評は解散に追い込まれて、「連合」になっています。建前は「発展的解消」ですが、その力は総評時代とは比較にならないぐらい弱体化したことに加えて、極端な反米・左翼というポジションも穏健になっています。この総評が最大の支持基盤だった日本社会党も1990年代には解党に追い込まれています。
国鉄時代、国労職員は幹部職員をよく部屋に閉じ込めて吊し上げしたそうですが、それも今は昔の話です。民営化前、11万人いた国労の組合員は1万人もいません。今の若い人には信じられないでしょうが、悪名高き動労千葉のように中核派の影響下にあった国鉄の労働組合もあり、職員の権利とは無関係な成田空港の三里塚闘争に合わせて違法ストを繰り返していました。千葉動労と中核派が連動して起こしたのが、1985年の「国鉄同時多発ゲリラ事件」というもので、首都圏や関西圏の鉄道路線の信号ケーブルを切断したり、変電施設を焼き討ちにしています。浅草橋駅はこの時、放火焼失しています。
このゲリラ事件の実行部隊は中核派でしたが、これだけ的確に鉄道施設の要所を狙うことは、職員の協力なしにはありえず、同日に千葉動労も違法ストをしているので、関与は明らかです。このゲリラ事件で22路線が不通になって、650万人の通勤・通学客に影響が出たと言われています。
しかし国鉄民営化にあたって、こうした職員を事実上、JR新会社では雇用しなかったので、以来、そういう事件も起こらなくなっています。
僕は社会人になって最初にした仕事が、政治部の記者として中曽根康弘首相のぶら下がりをやることです。テレビを見ていると、首相の周りにくっついて、「総理、総理、一言お願いします」とむやみに言っている記者の集団を見たことがあると思いますが、あれです😅。政治部の新米記者が最初にやらされる仕事なんです。みんなで群れていますから、とくダネもとく落ちもない、とりあえずぶら下がって、首相の反応を何か引き出す単純な仕事です。
ただその結果、首相の人となりだけは間近で見ることになります。僕はテレビ局の政治部記者ですから、カメラクルーと一緒に行動することになります。中曽根さんはカメラが回っている時はにこやかで温和そうで穏やかな口調なんですが、カメラがアウトしたとわかった瞬間、むっつりと不機嫌そうになるんですね。これは見ていて笑ってしまうぐらいでした。
とても頭の良い、配慮もできる方ではあったんですが、僕はこの二面性を目の前で何度も見せつけられたので、中曽根首相の「人間性」をあまり尊敬はしていません。ですが、ここまで書いてきた話だけでも、「日本を変えた首相」であることに異論を差し挟む余地はないと思います。
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