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金利と政府に追い込まれる銀行

今年の3月に米国で大きな銀行が2行破綻したのを覚えていますか?3月10日にシリコンバレー銀行(米国の歴史上、破綻規模が2位の銀行)が破綻し、その2日後にシグネチャー銀行(米国の歴史上、破綻規模が3位の銀行)が破綻しました。

銀行破綻の歴史において、上位規模の銀行が短期間で連続破綻したのはリーマンショック以来であり、この出来事は米国経済の先行きに大きな不安と懸念をもたらしました。

銀行規模が大きかったため、米財務省は、この2行に対し、預金全額保護並びに特別融資枠を新たに設けて事態を終息させました。

しかし銀行は苦しい局面を抜けられた訳ではありません。今現在、上記の2行を含め5行が今年破綻しています。

どうして多くの銀行が破綻してしまうのでしょうか?

結論を先出しすると、急激な金利上昇と政府による規制が原因です。これにより銀行運営は破綻を余儀なくされてしまうんです。

具体的に解説しますね。

現在、銀行は金利上昇前の融資債権(古い固定金利資産)の収益率が低いのに対し、預金やその他の資金源の金利が高すぎるので多くの支払いが発生しています。

これに加え、金利上昇による債券利回りの上昇により債券価格が下落し、銀行が保有する資産(国債、固定利付債券、ローンなどの価値)が何兆ドルも減少しています。第3・四半期に米国の銀行が保有する債券やローンの含み損再悪化がそれを物語ってますね。

要は、日々の収益の悪化と保有する資産価値の下落によりバランスシートにおける自己資本比率の急激な低下に銀行は悩まされており、体力を失った銀行から破綻している訳です。

銀行も存続をかけて大きく2つの手を打ちます。

1つはFRBによって発表された自己資本拡充を目的とした短期流動性ニーズを支援するための資金調達プログラム(BTFP)の活用ですね。BTFPを利用すれば銀行が保有する国債やMBSなどの信用力の高い債券を担保に最長1年間、5.54%の固定金利で融資をうけることができます。担保となる資産は金利上昇によって下落した時価ではなく当該債券を保有した際の額面で評価され、銀行がFRBから借りられる金額が減ることはありません。

もう1つはクレジット・リンク債(信用リスクを売り手と買い手の双方が負担するクレジットデリバティブを含んだ仕組債)を作って投資家に売る事です。

銀行は自己資本比率の下落を防ぐのが課題なので、自己資本に負担が大きい債権(貸付)が邪魔なわけです。そこで銀行は自己負担が大きい債権(貸付)をパッケージ化して金融商品として投資家に売りつけます。こうすることで銀行は自分の保有する融資権利が抹消され、投資家に一定の利子を払わなければなりませんが、保有債権(貸付)の評価損を消す事ができ、自己資本比率の下落を防ぐ事ができます。この動きは年々増えています。

しかし米国政府がその動きを許しません。

銀行が先の様なリスク移転(モノは違いますが考え方は同じ)を始めたのは今から20年ほど前です。これが火種でリーマンショックの被害は大きくなりました。

リーマンショック以降、リスク移転に関する承認を米銀行規制当局から得るのが難しくなったため、米国ではリスク移転がほとんど利用されなくなりました。

しかし近年、欧州とカナダの規制当局が合成リスク移転の利用に関する明確なガイドラインを定めたことで欧州とカナダの銀行は合成リスク移転を定期的に利用するようになりました。

米国もこの流れに乗ろうと、金融機関が2020年にFRBに資本賦課軽減要請をしましたが拒否されています。

(リスク移転承認要請を個別に審査する事は数年前にガイダンスが確立されているそうです。)

以上のことを踏まえると、高インフレがこのまま続き、金利が高値圏を推移し続けると銀行は資本規制の要件を満たすことができなくなり破綻リスクが高まる事が想定されます。今後、FRBが更なる利上げを行ったり、銀行の資本規制が強化されたりすると、先のリスクは更に高まります。

サービスインフレが落ちない今、金融ショックをもたらすかもしれない他のリスクを知っておく事は重要ですね。

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