質問
2024年01月08日 回答
四半期報告書の提出を第三・第四四半期を廃止するというのを新聞で見ました。決算前後で投機筋に荒らされるのを防いだり、会社側の負担を減らすのが目的かもしれませんが、情報が会社から発されない期間が長くなる不安要素も感じます。
個人投資家としては都度各会社の経営状況を追う姿勢は変わらないと思いますが、りおぽんさんが特に対処を変えようと考えていることはありますか?
回答
たぶん誤解されていると思います。「四半期報告書」は廃止されますが、「四半期決算短信」は開示が義務付けられます。僕みたいなマニア🤣はともかく、一般的な個人投資家で「四半期報告書」を見ていた人は少なかったのではないでしょうか? そして代わりに「半期報告書」が設けられましたし。
証券取引所に提出され開示されるのが「四半期決算短信」です。これは可能な限りスピーディに発表されます。東証の決まりでは決算日から提出は「45日以内が適当で30日以内が望ましい」というルールだったと思います。四半期業績や通期の業績見通しなどが載っていて、株価に大きく影響します。
ただしこの四半期決算短信には監査法人の監査(レビュー)は必ずしも必要ではありません。だから監査意見は載っていません。掲載内容についての法的な決まりもありません。ただ上場している取引所が開示規則を設けているので、それに従うだけです。この四半期決算短信は実は金融商品取引法(金商法)上はこれまで作成は任意だったんですが、証券取引所の上場ルールで決まっていたので、上場会社は必ず作成してきました。しかし今回の金商法改正で、作成が法律上も義務付けられています。
一方、「四半期報告書」は金商法の決まりで財務省財務局に提出される「法定開示書類」でした。決算日から45日以内に作成して監査法人のレビューを受け、無限定適正などの監査意見をつけて財務局長あてに提出する義務がありました。単純に言うと有価証券報告書の四半期版です。
有報ほどではありませんが、情報量は決算短信に比べるとはるかに詳細で、様式も厳密に決まっているので、必要な情報を必ず公開しなければなりません。例えば国内の上場企業であれば「開示府令の第4号の3様式」というものに合わせて四半期報告書を作るんです。監査を受けている分、情報の信頼性も高いです。万が一間違いが見つかれば、「訂正報告書」というものを出す必要があります。
法定開示書類ですから、ウソを書けば「四半期報告書の虚偽記載」になります。うっかりミスならたいていは財務局とかから怒られるだけで、訂正報告書を出せば済みますが、悪質だと「5年以下の懲役」と「5億円以下の罰金」という両罰規定がありました。
上場会社側としては、四半期決算を締めてから決算短信や四半期報告書の作成に入りますが、四半期報告書はこうした点から開示まで時間がかかります。万が一間違いがあったら大変なので慎重に作らなければならないからです。なお、四半期報告書も上場している取引所に「写し」を提出することが法律で決まっていました。
そこで証券取引所及び上場会社は四半期の決算速報として、四半期報告書より先に決算短信を証券取引所を通じて開示してきました。東証上場企業であれば、東証の適時開示情報閲覧サービス「TDnet」で公表されていたのがこれです。東証とかはできるだけ早く出せという方針だったので、これまでタイミングとしては、四半期報告書に対する監査法人のオーケーがほぼ出たら、即座に作成して開示してきたところが多いんじゃないかな。
この四半期決算短信はだいたい①四半期業績結果、②通期見通し、変更の有無、③四半期の貸借対照表、④四半期のBSとPL、⑤当該四半期のその企業を取り巻く事業環境とその今後の見通し、⑥これらに必要な定性的な情報ーーの6ポイントを押さえて開示するのが一般的だったと思います。
正直、ツイッターを見てたら決算短信の①②をチェックするだけの人がほとんどなので、一般的な個人投資家に今回の法改正の影響は低いと思います。特に重要なのは、決算短信には②、つまり「将来予測情報」の掲載が推奨されるけれど、法定開示書類である四半期報告書ではそんな不確かな情報は載せられないことです。
どんな風にやってきたか例を挙げます。僕が経営していた某東証マザーズ上場企業を例に取ると、決算を締めたら、先ずは四半期決算短信の適時開示を目指しての作業が始まります。マザーズクラスの企業に財務や経理の社員なんてそんなにいませんから、両方を並行して作成するのはムリなんです。
財務情報を監査法人の公認会計士と詰めて、経営会議を開いて四半期決算や通期の予想を了承したり、僕が事業環境の現況や今後の見通しを書いたりします。とにかく四半期決算短信は急ぎます。マザーズクラスの企業では「IRに積極的」というのもアピールポイントですからね。どんなに遅くても30日以内には四半期決算の発表日を設定しました。財務情報なんかで公認会計士の先生から「これで大丈夫でしょう」というコメントをもらうと最終版を作って、財務担当役員がTDnet で開示してもらい、それが済むと自社サイトのIR情報で同じものを公開しました。
これが終わると、監査法人と積み残しになっている項目のすり合わせをしながら、「四半期報告書」の作成作業が始まります。決算内容なんかについては決算短信の段階で終わっているので、多いのはそれ以外の部分の監査法人との微妙な意見の相違の意見交換です。この頃になるとみんな疲弊していて、公認会計士側の責任者と財務担当役員、経営管理担当役員、それに僕に4者会議が午前2時に設定されることもありました。
「四半期報告書」は間違ってはいけないけれど、提出期限に遅れると大ごとになるという面倒な書類なので、決算発表が済んでから最終版を作る作業を1週間くらいかけて慎重にまとめ、それに監査法人から「無限定適正」のお墨付きが付き、これを財務担当役員が関東財務局に持って行ったという報告を聞くとホッとしたものです。正直言って年4回、四半期決算短信と四半期報告書を作成する作業をやるのはキツかったです。
今回の金商法改正で今後ありうる変化としては、大きいのは①決算短信がより詳細化すること、です。四半期報告書が廃止される代わり、四半期決算短信ではこれまで決まっていなかった「キャッシュフローに関する注記」と「セグメント情報の注記」を開示することが定められました。また投資家のニーズに対応する「自発的開示」も求められています。
この辺についてはいずれ証券取引所が一定の指針を出すと僕は予想しています。ただ、あんまり詳細にして四半期決算短信の作成に時間がかかるようになると本末転倒ですから、この塩梅が難しいでしょう。意外と当初は上場企業の財務部門の負荷はむしろ大きくなるかもしれません。
次いで②四半期決算短信は監査法人のレビューを受けないところが増えていく、です。これは義務ではないですからね。ただレビューの有無を開示することは義務付けられたので、大企業は当初、他社がどうするか見ながら、決算短信レビューを受けるかどうか判断すると思います。
ただ監査報酬というものがバカ高いんです。四半期報告書が出来てから必ず年4回レビューを受けるようになった結果、年間監査報酬はどんどん上がって、大企業は10億円を超えるところが少なくありません。三菱UFJあたりだと50億円を超えます。また対応する監査法人側の作業負担が通年化したので、どこも手不足になって、監査報酬の時間単価が上がったり、それでも人手がいなくて新期上場企業は大手監査法人に監査を断られ、あんまり上場企業の監査経験がない監査法人に監査を依頼するということも起きていました。
東証グロースクラスでもBig4クラスの監査法人に頼めば、年間の監査報酬は会社法監査と任意監査を合わせて数千万円は払っているんじゃないかな。中でもトーマツはやたら高いんだけど🤣。監査報酬の金額は有価証券報告書に記載されていますが、このクラスの企業にとっては、損益に与えるインパクトはぜんぜん無視できません。僕自身が監査法人のボスに「高いからもうちょっとまけてくれないか」と直接交渉したこともあります。すると相手は「監査法人を変えたらいかがですか?」とか言い出すんだよな🤣。
四半期決算短信レビューを受けなくても、四半期の財務内容のレビューを受けるところがほとんどでしょうから、当初は監査報酬がそう大きく下がるとは思いませんが、上場会社の経営者は四半期報告書のレビューがなくなった分の値引きは求めると思います。僕ならぜったいやります🤣。これで財務担当役員が板挟みになるんだけど。。。
監査法人のレビューを受けない四半期決算短信の信頼性の問題ですが、これは新設された「半期報告書」が信頼性を保証する担保になるんじゃないかな。これは従来の第2四半期の四半期報告書と同程度か、あるいはそれより詳細なものになる予定です。第1四半期の決算短信でウソをついておいて、第2四半期の半期報告書で辻褄を合わせるのは大変だから、ふつうの会社はぜったいやりません。ふつうではない会社はやるかもしれませんが、そういう会社は四半期報告書があろうと、ズルズルの監査法人を選んでやってきたから、変わりないんじゃないでしょうか。
たぶんみんなが読む項目の多い四半期決算短信が充実するので、今回の金商法改正はおおむね投資家にとっては良い、現実に即した法改正だと思いますよ。後は実際の運用に注目してください。でも、分厚くなった四半期決算短信をみんな読まなくなったりして🤣。みんな、四半期決算短信に書いてあることを質問してくるんじゃないぞ😂。
初心者向けに書き始めたつもりだったけど、いろいろ思うところがあったので、それを書いたらあまり初心者向けにならなかったよ、ごめんね🙇。
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