高市さんの政策のどの辺りが「短期的には景気がいいだろうけれど、日本の将来に禍根を残すだろう」と思われましたか？

あくまでもこれは僕の個人的な評価ですよ。高市早苗さんは「みんなの耳に聴こえは良いけれど、とてもできないこと、無茶な政策をいっぱいおっしゃっている」というのが僕の評価です。

まず高市さんは「プライマリーバランスなんて考えるのはやめて、積極財政でどんどん成長投資、危機管理投資をする」と主張されていらしゃいました。その上で

①海外に依存しない食糧自給率の引き上げ
②資源安全保障としての日本海底に眠る海底資源の積極的な開発投資、次世代核融合炉やフュージョンエネルギー戦略への開発投資を推進する、
③南海トラフや首都直下に備えた事前防災と事後防災への投資、全国900万戸の空き家の買い取り
④サイバーセキュリティ強化に対する投資
⑤健康医療安全保障のための海外に依存しない医療技術や医薬品への開発投資、国民皆歯科検診の実施
⑥全個体電池、ロボット、超伝導、宇宙技術、量子技術、6G、AI、自動運転などなどへの積極的な成長投資をおこなう

以上を経済戦略の骨子とされていました。一つ一つを見ていただければわかる通り、いずれも魅力的なお話です。こうやってプライマリーバランスを放棄して財政支出をどんどん増やせば、短期的には景気が刺激されて株価も上昇すると僕も思います。

しかし容易に考えつくのは、「じゃあなんでこれまでの首相は、この政策をやらなかったのか？」です。それは実現が極めて困難で、そんなことをやるお金が今の日本政府にはないからです。言っては失礼ですが、国家予算の枠、限界ということを無視して、実現可能性を考慮しなくて良いのであれば、僕でも高市さんのこの経済政策は、一晩かければ鉛筆舐め舐め、容易にまとめられます。

お財布に1万円しか入っていなくて、借金を100万円抱えている人が、クレジットカードで利用限度を超えるお買い物をいっぱいすると主張すれば、「そりゃ無茶だから、やめた方がいいんじゃない」と考えるのが、ふつうの感覚だと思います。だっていずれは多重債務者になって自己破産でもするのがオチだからです。この政策を本当に実施すれば、日本発のソブリン危機が起きて、逆に国民生活をみんなで必死に切り詰める結果にでもなりそうです。

他にも高市さんの政策には、「全世代への安心感」という社会保障政策案があって、その中身には「シニア世代の年金の手取りが減らないよう、年金への課税を見直す」「働く世代の働く意欲を阻害しない社会保障制度設計への変更」「働く人の賃金アップと企業の事業投資強化」「公的年金と生活保護費の逆転現象の解消」「介護や育児をしながら働く人へに向けた家事支援サービスの利用推進のための利用費用の一部控除」なんていう魅力的なお話がズラズラと並んでいます。

確かにお年寄りの年金受給者層の手取りが増えて、働く層の負担も減るんであれば、そりゃ魅力的ですし、世の中に誰一人文句を言う方は出ません。お給料が増えて、企業がいっぱい事業投資もできるようになれば、みんなハッピーです。

でも「じゃあこれまでの首相はなんでこの政策をやらなかったのか？」なんですよ。そりゃとうてい実現不可能だからです。そこでこれまでの政権は、みんな頭を抱えてきたわけじゃないですか。

高市さんの公約には、この「できたらいいよね」「誰一人文句ないよね」「でもじゃあなんでこれまで誰もやらなかったの？」「だって無理なんだもん」という政策がズラズラと並んでいるわけです。

お財布の中を無視して、実現可能性を一切考慮しなければ、それはみんなに歓迎されるみんなハッピーな公約をいくらでも打ち出せます。だから高市さんは株クラのアホたちに大歓迎されるわけです。ほんとお財布の中身を無視して良くて、実現可能性もまったく考慮しなくていい、という条件で良いのであれば、一晩あればこのぐらいの政策公約であれば僕でもまとめられます。

でもそれは政治家としてあまりに無責任というものだと、僕なんかは思ってしまうわけですよ。

こうやってみんなに薔薇色の政策公約をたくさん掲げて政権を取って，あれこれ生煮えの政治を3年間やって日本を引っ掻き回し、日本に今も残る大きな禍根を残した政権として、僕は直ぐに思い付く政権があります。それは10年ちょっと前の民主党政権です。

高市早苗さんはこの保守版になるんじゃないのかと不安なのが、僕の個人的な高市評価です。