総理になるべき人がなれず、なるべきでない人がなってきた

僕がお付き合いがあった政治家の中で、特にこの人には総理になってほしい、なったらきっと良い総理になれると思っていたのは、リクルート事件に連座した藤波孝生さんです。中曽根派のプリンスと言われて将来を嘱望され、神様というあだ名があった人格者、政策通でもありましたし、俳人として知られる文化人でもありました。「控えめに　生くる幸せ　根深汁」という句は、謙虚な人柄だった彼の性格を良く表しています。中曽根政権では官房長官を務めたので、当時はお世話になりました。首相官邸詰めで、中曽根嫌い・藤波好きという記者はけっこう多かったです。

リクルート事件の前、安倍派(当時は福田派)の某大物代議士と、「将来、日本を背負って立つべき政治家は誰か？」という話をしたことがありますが、その時に彼が挙げたのも、自派閥の若手ではなく藤波さんでした。国民的な人気や知名度は低かったですが、玄人筋の評価はとても高かったです。「藤波が立ったら俺が支える」と公言していた他派閥の若手有力政治家も何人かいました。僕の記憶が正しければ、竹下派の小渕恵三さん、安倍派の森喜朗さんあたりがそんなことを言っていましたね。中曽根派の体質が嫌いで袂を分かった河野洋平さんも、藤波さんだけは別扱いだったし、野党政治家にもファンがいました。あの石原慎太郎さんでさえ、藤波さんのことは褒めていたぐらいです。

なんでスジの悪いお金をもらってしまったんでしょうかね。中曽根康弘さんを庇ったという説もあります。失意の中、70代で病没しています。藤波さんとは彼が政界を引退してからも、個人的なお手紙でのやり取りがありましたが、そこには政治の怖さに対する思いとともに、国や国民を思う気持ちが切々とつづられていました。これは今も大切に保存してあります。

「なるべきではなかった人」は、その方が多いので、割愛します😅。