東大ぱふぇっとです。
米国では相変わらずインフレがやばいですね。。
S&P500も年初来で20%弱下げてて回復の兆しなし。
止まらぬインフレ、追いかける金利、景気後退懸念、、、
いったい、いつ相場は上向くのか。。
こんなお先真っ暗な時は歴史に学びましょう。
実は今の状況、ある年代に非常に酷似しています!
それが1970年代前半です。
この時代も、拡張財政・金融緩和によって生み出されたインフレマグマに、石油ショックが追い打ちをかけ、最大12%のインフレを記録しました。
今回は、この時代に何があったか、株価はどこまで下げたか、どのタイミングでボトムアウトしたかを見ていき、今の相場感に役立てましょう。
数字で確認する1970年代前半
1970年代前半の状況を把握するために、まずは以下の数字を眺めましょう。
CPI (%) |
FFレート (%) |
S&P500 (前年比%) |
実質GDP (前年比%) |
PER (倍) |
|
1970 | 5.7 | 7.17 | 3.9 | 0.2 | 18.12 |
1971 | 4.4 | 4.67 | 14.6 | 3.4 | 18.01 |
1972 | 3.2 | 4.44 | 18.9 | 5.3 | 18.09 |
1973 | 6.2 | 8.74 | (14.8) | 5.8 | 11.68 |
1974 | 11.0 | 10.51 | (26.4) | (0.5) | 8.3 |
1975 | 9.1 | 5.82 | 37.2 | (0.2) | 11.82 |
1976 | 5.8 | 5.05 | 23.6 | 5.3 | 10.41 |
出典:公開情報を基に筆者にて作成
まず注目はCPI。
1974年の年間CPI上昇率は11%です。
後述しますがこの時もいくつかの要因が相まって、インフレが猛威を振るっていました。
次に金利(FFレート)。
猛威を振るうインフレを退治しようと、今と同じようにこの時も大幅な利上げが行われました。
74年末には10.51%に。。高すぎる。。
ちなみに1974年のピーク時には12.9%まで上がってます。。
次に株価。
急速なインフレと急速な利上げの状況下、73年には-14.8%、74年には-26.4%と2年続けて暴落。。
やはり、インフレと利上げの末路は暴落。。
しかも2年連続マイナスって。一般人はメンタル持たないんじゃないかな。。
実質GDP成長率をみても、ちゃっかり74年と75年はリセッション入りしてます。
そんなこんなで、1970年代は「株式の死」とも言われた年代になりました。
インフレの原因
1970年代前半、なぜここまでインフレは猛威をふるったのでしょうか?
これには大きく2つの原因があります。
一つは拡張的な財政政策と金融政策です。
1971年、当時のニクソン大統領は翌年に控えた大統領選での再選を目指し、巨額の財政政策を打ち出しました。
大幅な減税に加え、最も話題をさらったのが「金とドルの交換停止」です。
当時の世界は米ドルを基軸とした固定為替相場制でした。
「1オンス35米ドル」と「金兌換」によって米ドルと各国通貨の交換比率を一定に保つことによって自由貿易を発展させる仕組みだったのです。
これをブレトンウッズ体制と呼びます。
ところが経済のグローバル化が進むにつれ、この為替レートでは各国間の貿易にひずみが生じてきました。
次第にブレトンウッズ体制の維持が困難になってきたのです。
そこへ、ニクソン大統領はこれをやめると宣言したのです。
これが世にいうニクソンショックです。
これにより米国は”金(ゴールド)”の在庫に関係なく、通貨供給量を増やせるようになりました。
ニクソン大統領はこのような状況を作り出した上で、当時のアーサー・バーンズFRB議長に働きかけ、経済成長のための金融緩和を迫り、バーンズFRB議長もこれに応じたのです。
拡張的な財政政策と金融政策のダブルエンジンで、経済は大きく成長しました。
1972年は5.2%の経済成長を達成し、ニクソン大統領も見事に再選を果たしました。
しかし、良いことばかりではありません。
このような中、インフレのマグマはふつふつとたまっていたのです。
絶好調な経済の中、徐々にインフレの兆しが見えてきたのが1973年2月頃。
それまで、前月対比0.2%のマイルドなインフレだったのが、1973年2月に急に前月対比で0.7%のインフレとなり、それが続きました。
そしてそんな中、2つ目の要因であるオイルショックが起こったのです。
1973年10月6日に第四次中東戦争が勃発し、これを受け10月16日に一部のOPEC加盟産油国が、原油価格を70%引き上げることを発表したのです。
当時の米国は、多くの原油を中東に依存しており、これが国内のインフレに追い打ちをかけました。
そんなこんなで、インフレは更に進み、1974年12月のピーク時には前年対比12.3%という驚異的な数字を記録しました。
当然のことながら、インフレ退治のためにFRBは猛烈な利上げを行いました。
それが以下の図です。
このように、1973年初頭から急ピッチで利上げを行い、株価の下落、景気後退を顧みずにインフレ退治を優先させました。
しかしインフレはなかなか止まらず、ピークアウトまでに約1年10カ月ほども要してしまったのです。
インフレというのは、簡単に退治できるものではないということがよくわかります。
株価はどこでボトムをつけたか
さて、このような状況下、株価はどのように動いたのでしょうか?
当時のS&P500のチャートは以下です。
拡張的な財政・金融政策の下、絶好調な経済を背景に1973年1月のピークには120ドルをつけました。
そしてインフレ懸念が浮上したころから徐々に下げ始め、オイルショックを機に暴落。
高インフレと高金利の中、1974年10月~12月のボトムの時に62ドルをつけました。。
高値からおよそ50%も下落したのです。。恐ろしい。。
激しいかのように思える昨今の下落より、当時の下落はずっと大きかった。。。
では、当時の株価は何をきっかけにボトムアウトしたのでしょうか?
それはやはり、インフレのピークアウトでした。
インフレのピークは74年12月なので、株価のボトムとほぼ一致します。
74年は途中から既にリセッション入りしていたので、金利は一足先に74年7月にピークをつけました。
こういうことを考えても、やはりインフレのピークアウトを確認して投資家は重い腰を上げていったのだと思います。
1970年代の状況を今に重ねてみる
1970年代の整理をしてみましょう。
- 1971年~72年に拡張的な財政・金融政策実施
- 景気は絶好調
- 1973年2月頃からインフレが目立ち始め、止まらない
- 同年10月、オイルショックがインフレに追い打ちをかける
- 1974年7月には金利が12.9%、12月にインフレが12.3%のピークをつける
- 株価は1973年1月の高値から1974年9月~12月のボトムまで約50%下落
- インフレのピークアウトを機に株価が上昇に転じる
こんな感じでしょうか。
インフレが気になり始めてからピークアウトまでの期間は1年10カ月。
追い打ちをかけたオイルショックからインフレピークアウトまでの期間は1年2カ月。
それでは現状はどうでしょうか?
- 2020年~21年はコロナショックを契機に、拡張的な財政・金融政策を実施
- 景気は絶好調
- 2021年4月頃からインフレが目立ち始め、止まらない
- 2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻で原油価格高騰、インフレに追い打ちをかける
- 同年3月、FRBによる利上げ開始
仮に、インフレの兆しからピークアウトまでと、原油価格高騰からピークアウト迄が、1970年代と全く同じだとすると、今回のインフレのピークアウトは2023年2月頃~4月頃と予想できそうです。
但し、当時と現在で大きく異なるのはFRBの利上げタイミング。
1973年はインフレが気になり始めてすぐに、急ピッチな利上げが行われました。
ところが今回は、インフレが気になり始めてからもなおゼロ金利を1年程継続し、ようやく急ピッチの利上げを始めました。
そういう意味では、1970年代は利上げ開始からインフレピークアウト迄、1年10カ月程かかったので、それを考慮すると今回は2024年初頭までインフレがピークアウトしない可能性すらあります。。
暗黒の時代はまだまだ続くかも。
まとめ
- 1970年代は、拡張的な財政・金融政策によりインフレマグマがたまっていたところへオイルショック発生。インフレが猛威を振るった。ピークは12.3%に。
- インフレ退治のために金利もピーク時は12.9%に。これにより、株価は直近高値から約50%下落、74~75年は二年連続で景気後退に。
- 1970年代前半と酷似する現在、当時の状況を考えれば、インフレピークアウトには後1~2年程かかる可能性も。
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