東大グレアムです。
7月23日の市場は、Microsoft決算でのCommercial Cloud成長鈍化に加えて、失業申請の増加と給付金の削減検討によって下落しました。
4半期連続の黒字によるS&P 500指数への組み込み期待から大きく上昇していたテスラは、コロナ禍の中でも好調な販売により期待を達成しましたが、市場のセンチメントに引きずられて下落しました。
Microsoft決算
内容を見た感じでは、少なくとも実績では売上・利益共に予想を上回る好決算だったので、株価が大きく下落したのは正直予想外でした。
下落した要因はCommercial Cloudの伸び率が市場予測よりも鈍化したことですが、RPO(Remaining Performance Obligations、契約はしたがまだ収益になっていないもの)は前年同様に6月実績がジャンプしているのでクラウドの伸び率鈍化は季節要因もあるかと。
コロナで収益が減少した業界や中小企業がIT費用を削減したとの見方がある一方で、大口顧客が継続してくれれば収益は維持できるので、打撃を受けた業界に関しては予測がついていた上に収益上の問題はそれほどでもないような気はします。
寧ろ大口顧客の長期RPOは増加傾向にあるので、将来的にはプラス要因もあると感じました。
株価が大きく下落したのは、そもそもの期待が大きすぎて買われすぎ状態だったのもあるでしょう。
私はホールドですね。
主要3指数
5日チャート
S&P 500(青線)、NASDAQ 100(オレンジ線)、RUSSELL 2000(緑線)です。
NASDAQが大きく下落した一方で、小型株指数であるRUSSELLは堅調です。
年初来チャート
とはいえ年初来リターンではNASDAQ圧勝であり、RUSSELLはまだFOMC前の6月8日の高値を取り戻せていないことを考えると、単に市場の資金が割安株の物色で循環しているだけと捉えることもできるかもしれません。
S&P 500 Map
GAFAM、Nvidia、Netflixといったこれまでのコロナ相場を牽引してきた株が見事に真っ赤ですね。
VIX
5日チャートです。これが再度上昇したことで、パッシブファンドの資金流入は遠のきました。
ドルインデックス
年初来チャートです。3月9日の安値を割り込みました。ドル価値の相対的な下落を示しています。
EUR/USD (ユーロドル)
上方向がドル安となります。
ドルインデックスが年初来最安値を割り込んだ主要因は、構成通貨のウェイトの大半を占める対ユーロでのドルの下落です。
バランスシートの比と為替
青線(左軸)はユーロ圏の中央銀行のバランスシートをFedのバランスシートで割ったもの、つまり通貨供給量の疑似的な比率です。上に行くほど、ユーロ圏のバランスシートの大きさが、アメリカよりも大きいこと(通貨供給量が大きい)ことを示しています。
直近の相対的な上昇は、ドル需要の逼迫が解消されたことに伴うものです。
赤線(右軸)はユーロドルです。
微妙に相関があるようなないような形をしています。通貨供給量が増えるほど通貨の価値が上がるなんてことはないような気はしますが、通貨需要を反映していると考えれば納得がいくかもしれません。
ドル流動性スワップ
Fedのバランスシート縮小はコロナショックによるドル需要の逼迫が解消されつつあることを反映しています。
Overnight Repurchase Agreements(レポ)
レポとは、短期金融市場での資金の貸し借りのことです。
流動性の逼迫に伴ってFedの貸出量が増加していたレポ残高も、市場の落ち着きによって7月以降は0で推移しています。
USD/JPY (ドル円)
参考までに、ドルインデックスで次点のウェイトを占める日本円については、ほとんど横ばい状態です。
日本円の価値もドルと同レベルで下落しているということになりますね。
米長期金利
米長期金利は年初来最安値を割り込みそうです。
金利の下落は通貨需要の後退をもたらすので、ドルの下落にはこの影響もあるでしょう。
金価格と実質金利
金価格(青線、左軸)と実質金利(赤線、右軸)です。
実質金利の下落と合わせて金価格が上昇しています。
まとめ
これまで市場を牽引してきた大手ハイテク株に調整が入り市場のモメンタムが損なわれた一方で、現金ドルの価値も減価しており、逃げ場所は貴金属しかなくなっていることから、金価格は更なる上昇を続けると見込まれます。
Fedのバランスシートの縮小は、金融市場の混乱が落ち着いてきたことを示しているのですが、市場の期待は”もっと金融緩和をしてくれ”というものであり、株価の調整はコロナが一向に収束せず、経済の本格的な再開が期待できない中で金融環境だけ”正常化”しつつあることへの反発を示しているのかもしれません。
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