
質問
現代において哲学の役割ってどういうものがあるんでしょうか。
なんというか、倫理政経選択の理系の目には、有益で客観的な部分を経済学だとか政治学に取られて、内輪のノリみたいな言葉遊びだけが残っているように見えてしまいます。
宗教や御伽話と同じで、心の安寧を保ったり、あれこれ語り合って楽しむためのものと割り切っていいものなのでしょうか。変な質問ですみません。
回答
経済学においても政治学においても、ある種の価値判断を迫られることがあります。これは社会科学に限らず、自然科学や医学においてもそうです。
例えば「何が正しいのか」という議論があります。理論経済学の基本は「最大多数の最大幸福」で「各人が自由に自分の経済的利益を追求する中で、社会全体の経済的利益が最大になる状態」が「良いことである」という価値判断が行われています。極論を言えば、「99人が1000万円儲かり、1人が0円」の状態と「90人が500万円、10人が400万円」の状態であれば、前者の方が利益に適うという(正義に適う)価値判断を行なっているのが、理論経済学です。
ではこれは本当に正しいと言えるのか?この答えは理論経済学自体では論じることが出来ません。
こうした諸科学の基盤となって、「人間とは何か」に始まり、「生きること」「幸福とは何か」などなどの諸問題を論じ、検討を加えるのが「哲学」の役割です。
理論経済学者たちが抱えていたこの問題には、政治哲学者ジョン・ロールズが「A theory of Justice」を著し、新しい「正義」を提示しました。
また社会選択理論に「ケネス・アローの不可能性定理」というものがあります。簡単に言えば「人々が3つ以上の選択肢を自由に選んで選択(投票)できる場合、正しい結果(社会的公正に適う結果)は決して得られない」という定理です。
このアローの不可能性定理の最も有名な適用事例が「選挙のパラドックス(コンドルセの定理)」で、「多数決をとっていくと誰も望まなかった結果になる」というものです。簡単に言えば「民主主義においてみんなが望む候補者が選ばれる投票方式は存在しない」ということになり、まことにディストピアな結論が導かれます。
コンドルセは数学者、アローは理論経済学者であり、この理論に破綻はありません。
以前この件について質問された時、「ケネス・アローの世界観に立つ限り、その社会選択理論にはディストピアしか見えない」とお答えしました。アローの世界観とは経済学者ですから「功利主義」です。功利主義が正義である限り、このパラドックスから抜け出すことはできず、経済学にはこれを論じる機能がありません。
このパラドックスの超克について僕は「人間の利他性に賭けるアマルティア・センの社会選択理論に希望を託すしかない」という趣旨のお答えをしました。センも経済学者ではありますが、それまでの経済学者とは明らかに一線をかくす。何が違うのかと言えば、その世界観であり、それは哲学の問題でもあるとも言えます。
理論経済学は長らく貧しい人には優しくない学問でした。しかし近年、厚生経済学において理論経済学は批判的に検討され、「福祉」という概念が強く取り入れられるようになっています。センの厚生経済学を説明するのは簡単ではありませんが、一言で言えば「共感、関わり、利他性」です。いずれも従来の経済学が置き忘れてきたものでした。
この「厚生経済学」、名前こそ経済学ですが、本質的にはアリストテレス以来論じられて来た社会的規範を検討する学問で、この根底にあるのは人間観すなわち哲学です。
大きな医学の問題として「安楽死」があります。法的整備といった制度的な議論もありますが、本質的なのは「人の命を救う医師が他人の命を絶ってもいいのか」、そして「人は生きる努力を辞めて、死ぬことを望んでもいいのか」という議論です。
これは医学の問題ですが医学で論じられる問題ではありません。これを論じ検討を加えるための基盤になるのが哲学です。
ツイッターで安楽死を論じる方々の主張の多くが極論であったり、あるいはいかにも軽いのは、「人間」「命」という問題を論じる哲学の素養を欠くためだと見ることもできます。
哲学が基本にあり、倫理学などがその上層にあって、政治学や経済学などが最上層部にあります。
多くの場合、欧米では中高生レベルで哲学は必修科目であり、哲学を学んだことのないエリートはいないと言っても過言ではありません。人間の議論は最後の最後、己が哲学のぶつかり合いになります。マトモに哲学を学んだ経験がなく、自分の中できちんとした哲学を確立できていない日本のエリートが、国際社会で往々にして議論に弱く、マトモに相手にされない、という事情はこの辺に起因していると思います。
日本は実学ばかり優先して、基礎になる学問に弱い。国際社会における日本人エリートの弱点は、①哲学の素養を欠く、②論理的議論の仕方の素養を欠く(修辞学)、③音楽や芸術に関する素養を欠く(教養)ーーだと僕は見ています。昨今の国際社会対応の人材育成を謳う大学で、これらの教育を重視するリベラルアーツ教育が取り入れられているのもそのためでしょう。伝統的に実学優先だった早大でさえ、国際教養学部ではリベラルアーツを取り入れています。
誤解がないように言い添えておくと、哲学は西洋哲学ではなく、東洋哲学でも良いんです。和魂洋才の和魂の本質は、僕は「国学」であると考えており、この国学の本質は「日本人固有の精神性、思想、道(なすべきこと)」を研究する学問でした。和魂をベースに西洋の学問を取り入れた戦前の人々には、国際社会に出て行っても臆することなく渡り合う人がいました。
哲学(の素養)に欠ける人間は、最後の最後、世界では人間力で負けます。
僕は4月から教授として復職します。大学から期待されているのは政策提言を行うことであり、極めて実学的です。しかし政策提言の大前提には「人々が幸福な状態とはどういう状態か」という価値判断があります。これなくしては答えが導けません。当然、僕の哲学の素養が試されることになります。
相場予測noteを無料お試しできるキャンペーン!
- 相場当てまくりの相場予測noteを無料で読める!
- 秘密の爆益銘柄を無料でチェックできる!
- 紙書籍が郵送されてくる!
- 総額1万円相当を無料でプレゼント!
超豪華な特別キャンペーンをIG証券様が実現してくれました!

- 私の相場予測を無料で読める!
- 総額1万円相当のプレゼントを無料でゲットできる!

IG証券でしか取り扱っていない投資対象が山ほど存在するため、私のように幅広い投資対象へ投資するなら必須の口座ですね!私自身もIG証券を利用しています!
秘密の爆益銘柄がヤバい!
30倍超えの銘柄もある!

ブログの記事は全て無料で読めますが、相場予測noteに関しては有料記事となっています。
予言書とか言われちゃうレベル!?
驚異の的中率!爆益銘柄の公開!
別格すぎる相場予測を公開中!