
質問
2025年01月07日 回答
あくまでここ1-2年の話ですけど国内非上場スタートアップのレイターはVCの先取り条項の存在もあり明らかに高値が付けられてて上場するとダウンラウンドが普通の市場環境になってると思うのですが、ここで金集めして投資する意味はあるんでしょうか?
回答
昨今のベンチャーがIPOしてダウンラウンドになりがちなのは、VCの先取り条項云々よりも、①味噌もクソもIPOしていること、②日本のVCの担当者の目が節穴でキチンとした株式価値が評価できないこと、③全般的に日本のグロース市場から資金抜けしていることーーの3点が挙げられると思います。
もともとIPOに至れるベンチャーはごく一握りですし、その中でIPOが成功する企業も一握りです。それを見極めなければならないので、未公開株投資もIPO株への投資ももともとハイリスクなんです。そしてこの見極める力は極めて個人差が大きい。理屈だけでなくアートが影響する世界だと言ってもいいかもしれません。
僕がVCに関わった歴史は古く、1990年代の終わりでした。日本ではまだVC(ベンチャーキャピタル)という言葉さえ一般的ではありませんでした。東証マザーズが出来て一気にベンチャー企業が脚光を浴びるんですが、ドットコムバブルの崩壊で直ぐに萎びてしまいます。
この時点で僕のミッションになったのは、非上場企業への投資専門会社(今で言うVC)のアーリーステージへの投資判断を行なって、エグジット比率を少し(期待されたのは4-5%アップでした)上昇させることでした。当時のVCは大手証券会社のリタイア組ばかりで、いわば専門家集団。今のような大卒したての新人はいません。それでもその会社のベンチャー投資のイグジット率は11-12%でした。僕がカバーしたのはIT(テクノロジー企業)と半導体企業でしたが、同僚たちの分析を「ど素人か?」と考えていたものです。
2年ほどの米国赴任後、その投資企業グループのトップから依頼されたのは、まさに今回の話の焦点であるミドルステージの企業の資金調達支援でした。当時はまだ日本にVCがさほどなかったので、出資を募る主な対象は機関投資家と金融機関でした。僕は当時まったく別の仕事をメインにやっていたんですが、「他に人がいない」という理由で無理矢理駆り出されました。そしてその企業の取締役に就任しました。
そこで僕がやった仕事は、ミドルステージの企業を調査分析して経営トップのヒアリングも行う。その上でその企業のエグジット成功確率を割り出し、M&Aを含めたイグジット時の予想リターンを算出する。これを元にレポートを作成、機関投資家や金融機関の担当者を招いた説明会を行い、そこでベンチャー企業のCEOやCFOとともに僕がプレゼンテーションを行なって、出資を募る。
僕はニューヨークに赴任してシリコンバレーなどでも類似のビジネスをやってきたんですが、その経験からすれば、当時の日本のこのビジネスにおいて、資金調達を誘う側の専門性は低く、一方、資金調達に応じる側の機関投資家や金融機関の担当者も、右も左もわからないど素人ばかりでした。プレゼンテーション終了後に行うQ&Aセッションでの質問のレベルの低さに辟易したものです。
当時、僕がやったこの仕事を同レベルでできた日本人は、片手で数えられるほどでした。おかげで僕は年俸1億円以上の好条件でこの企業にフルコミットしないか誘われるんですが、他にやりたかった仕事があったので、断っています。
以上のように、僕の未公開株投資との関わりは20年を優に超えます。現在でも続けており、今回台湾に来ている主たる目的は、台湾の未公開企業のトップとお会いして、出資判断をすることでした。
その目から言わせると、日本のベンチャーキャピタルはこの20年で社員の学歴だけは上がりましたが、分析力もイグジット率の計算能力もイグジット後の価値算定能力もさほど上がってはいません。ですからたいして価値もない企業を緩い上場基準でIPOさせれば、ダウンラウンドになる企業が続出するのは当たり前です。
しかしすべての企業がダウンラウンドするわけではありません。玉石混交ですから、投資者は玉を見極める眼力が要求される。ですから先の回答で僕は散々、この投資信託のパフォーマンスはファンドマネージャーの川合さんの手腕次第とお答えしたわけです。
これは余談ですが、本当のミドルステージ以降対応のVC(投資アドバイス会社)は、必要があればその企業の中に入って経営指導もします。僕は数人規模で始めた自分のベンチャー企業を1社IPOまで持っていきましたが、それ以外にもこの仕事で社外取締役などとして関わり、IPOまで持って行ったのが4社あります。それ以外でもエグジットとしてIPOではなくM&Aを選ばせた企業もありました。
その経験からすると、日本のベンチャーキャピタルのスキルはさほど高くはありません。これを出し抜いて大儲けするチャンスはまだまだたくさんあります。詳細な数字はお答えしませんが、これだけベンチャーキャピタルが乱立している中で、僕のベンチャー投資のリターンは大幅なプラスで推移しています。
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