成績の事で父親に怒られたりはしませんでしたよね？

怒られはしませんでしたが、褒められたこともないです。僕は本当は京大文学部、あるいは東大でも文Ⅲに進みたかったんですが、それでは学費は出さんと言われました。僕が大学生になって直ぐ高額なアルバイトを探したのは、父にこれ以上介入させないためでもあったんです。

父は早大ラブの人間だったので、早大政経を受験し、東大に落ちたら早大政経に進むのが条件でした。父の思い通りにはなりたくないという気持ちが僕の受験勉強を頑張る原動力でもありました。僕は慶應経済も受けたんですが、父が受験料を出すことをよしとしなかったので、受験料は自分で出しました。こういう経緯があるので、僕は東大に落ちたら慶應経済に進むつもりでしたが、父が授業料を払ってくれる可能性はないので、伯父に学費の工面を相談しました。早大を蹴って東大に進んだのが心の底では気に食わなかったらしく、酔うとよく絡まれましたよ。心底鬱陶しかったです。

開成中学受験も、僕が父の転勤にはもう付いて行きたくないと言い続けたので、父が渋々出した条件です。別に開成中学を勧めたわけではなく、中学受験が良いと思ったわけでもなく、祖父母の家に下宿して通える、父の知っていたそこそこの進学校だったからです。受験先の変更も併願受験も一切認めん、開成中学に落ちたら父の転勤について行くというのが条件です。だから、この時も僕は必死に頑張りましたよ。落ちることは僕の中ではありえなかったです。

開成中学に合格したからといって、家で特に祝福されたわけではないです。心配性の母はむしろ親から離れることを心配しました。父には「青白いガリ勉になったら許さんからな」と言われたのを記憶しています。晴れて祖父母の家で下宿することが決まった時は、「これで奴隷解放だ」と清々したものです。そんな父親も世の中にはいるんですよ。