ウクライナ戦争が終わるか停戦したらウラン暴落きますか？

ウランのスポット価格は昨年末から倍近く上昇し、現在CMEのウラン先物は80ドルを超えたんですが、理由がハッキリしないんですよね。ウクライナ戦争のためだとよく言われますが、ロシアもウクライナもウラン生産量がそれほど多いわけではありません。世界最大の圧倒的なウラン産出国であるカザフスタンのウランは確かにロシアで多く製錬されていると聞きますが、ウクライナ戦争による制裁でウランは対象外です。カザフスタンが原因なら、むしろ去年1月のカザフスタン紛争でもっと価格が急騰しないと辻褄が合わないです。

ウクライナ戦争で天然ガス供給がネックになったことから、欧州諸国が原子力発電を見直したからだという説明もありますが、今後の原子力発電所建設への投資を打ち出した段階ですから、実需が増えたわけではないと思います。日本を含めて原発再稼働の動きがあるのも確かですが、その影響は軽微です。

フィナンシャルタイムズはニジェール紛争が大きな原因ではないかと分析していましたが、ニジェールの生産量は世界生産量の4%に過ぎないですから、これが主要因とは考えにくいですね。違うと思います。

そもそも原子力発電所で使うウランはほとんどが長期契約でスポット需要は少ないんです。ウラン市場にしめるスポット市場の割合は、15%程度しかありません。そうでないと、原子力発電発電所の発電の価格が安定しませんからね。ウランのスポット価格急騰は原子力業界の人なら周知のことだと思いますが、表立ってあまり騒がれていないのはこのためです。

ということをすべて考慮すると、僕はウランのスポット価格急騰は、投資ファンドの投機的な思惑買いによるものだと思っています。ウクライナ戦争があるからウラン価格が上がるだろう、新規原発建設の機運が出てきたからウラン価格が今後上昇するだろうと見て動いたわけですね。実際、ウクライナ戦争が起こった後、今後面白そうなコモディティ商品として、ウランを挙げていたレポートをいくつか読んだことがあります。

ウランのスポット市場は過去にもファンドの投機的な思惑で乱高下してきた経緯があります。2021年に急上昇した時は、カナダの「スプロット・フィジカル・ウラニウム・トラスト」というファンドが大量にウランを買い占めたのが原因だと言われています。今回の本尊がどこなのかわかりませんが、いくつかのファンドなどが積極的にスポット買いをした可能性が高いというのが私見です。ウランのスポット市場はそんなに大きくありませんから、操作がしやすいです。

ウクライナ戦争が終結すれば、思惑の一つが消えるわけですから、ウラン価格は当然下がると思います。数十%という規模で下落するでしょう。ただ、ここ福島原発事故以来、世界の原子力発電所の運転状況は厳しかったですから、各国のウラン鉱山開発意欲も低かったです。欧州や中国がこれから原子力発電所の新たな建設を進めます。もし需要が増えても供給が増えないのであれば、ウラン価格は上昇します。これはスポット価格だけでなく長期契約の価格にも影響が出るでしょう。ただ主要生産国であるオーストラリアやカナダではウラン鉱山を開発する新たな動きが昨年あたりから出ているそうなので、ウランの長期価格の動向はそれ次第になると思います。