三菱重工についてお考えをお聞かせください。

売買の判断はご自分でやっていただきたいというのが僕のスタンスですので、それを了解していただいたものとして、三菱重工株について回答します。

まず5年ぐらいのチャートで見れば、おおむねキレイな右肩上がりで、特に2022年ぐらいから上昇ペースが上がっているのが分かります。この長さで見れば、テクニカル的にも売り時はまだ来ていません。

この三菱重工の株価急騰には、岸田政権で日本の防衛費が増額されることが議論されるようになったことが、大きく影響していると見ています。三菱重工が注目されるとしたら、防衛関連か宇宙・航空関連ですから。僕が三菱重工を買ったのも、これによる業績へのポジティブインパクトを見込んだためでした。

この防衛費増額は、結局2022年末に今後5年間で従来の約2.5倍の43兆円に増額するということが閣議決定されました。これは自衛隊の施設整備や米国からのトマホークなどの購入など、広範な用途に当たられるので、すべてが三菱重工の商機になるわけではありません。ただ極超音速滑空兵器や宇宙領域での作戦能力向上など、三菱重工が絡めそうな話にもたくさん予算が割り当てられました。

かつてないほどの防衛予算の増額でしたので、どれか1つでも受注できれば、三菱重工の業績へのプラスのインパクトが大きいです。僕は特に防衛装備への研究開発費が増額されたのが大きいと見ています。米国などを見れば分かる通り、この手のメーカーは、国の国防費で研究開発が盛んになって、これが民生用でも活かされた歴史があるからです。例えばインターネットが米国防貧の産物と言った具合です。

この予算の編成と執行が続く限り、三菱重工の長期の株価トレンドは順調だと見ています。

一方、目先の国政に目を転じると、防衛費の大幅増額を決定した岸田政権の後継には防衛族の石破茂さんが就任しました。争ったのも自民党保守派の高市早苗さんでしたので、「自民党政権であれば、防衛費の増額スタンスは変わらない」という安心感がありました。

これが立憲民主党の衆院選の選挙公約をみると、安全保障については語られていますが、国防や自衛隊については一言も触れられていません。「次の内閣」でも、現在の「防衛大臣」をわざわざ「安全保障大臣」と言い換えているぐらいです。ついこの間まで、本気で「自衛隊は違憲」とおっしゃっていた方がたくさんいる政党なので、この問題に触れると、党内のコンセンサスが得られないんだと推測しています。

「次の安全保障大臣」に模せられた福山哲郎さんの過去の発言を追うと、「敵国攻撃能力を持つな」「防衛費はある程度増やすべき。といったあたりです。これを読み解くと、現在の自民党政権によるGDP比2%という防衛予算の増額ペースのスロウダウンです。

ですから、もし衆院選の結果、立憲民主党が軸になる政権が誕生したら、三菱重工など防衛関連銘柄には「立民ショック」が起こりえると推測しています。三菱重工など防衛関連銘柄はその意味で極めて政治情勢の影響が大きい銘柄なんです。

このところ順調過ぎるほど上昇してきましたので、このリスクを考慮して衆院選前に全株利確ないし半利しておく戦略は十分ありだと考えます。自民党継続でも、衆院選後はドタバタしそうですし。

自民党政権が続けば、三菱重工株の上昇モードは変わらないでしょう。しかし一直線で上がり続ける株はなく、必ず上下の波を作りながら上昇していくものです。今はけっこう波の上に来ているのかとも思います。

ただ、これらの三菱重工株を取り巻く環境を考察した僕の結論は「今回の波の上は取りに行かない。スルーして、例えいったん下落しても、その下落を跨ぐ」というものでした。ですから現時点で売ることは考えていません。ご参考までに。