ジョブズのようなビジョナリータイプはどのように冷静に経営判断をしているのでしょうか？

なんか勘違いされているようですが、ビジョナリーというのは先を見通す力があるということで、他人の立場を思い測る想像力があるということではないですよ。ジョブズは必要とあれば大規模なリストラも辞さない冷静冷酷な経営者でしたよ。Appleに復帰した際、実際に大規模なリストラをやったので、社内では一時、リストラされることを「steveされる」と言っていたと聞きます。

同社復帰では不採算事業をバッサリ切ったほか、Macのコミュニティでは悪魔同然の扱いだったビル・ゲイツと和解してその資金援助を引き出して再建資金に当てたほか、Mac互換機メーカーへのライセンス供与をいきなりやめて締め出すと言ったビジネス上の裏切りに近い経営判断までしています。そして利益率の高いビジネスに特化した結果、今のApple があります。

今でこそ伝説のビジョナリー扱いのジョブズだけど、1980-90年代は「めちゃくちゃ闘争心旺盛な独裁者」という評判がシリコンバレーあたりでは響き渡っていたものです。「嫌な奴」という評価の方が多かったと思いますが、これは敏腕経営者なら付きものです。優しい人物だったら、ジョン・スカリーと社内闘争を繰り広げた時に、経営会議でApple の役員全員がスカリー支持に回り、取締役会もジョブズ追放に賛成したりしなかったと思いますよ。