「ただ値段が高いだけの寿司屋」と「一流寿司屋」の差はどこにあると思いますか。

値段が高ければ、ネタがいいのは当たり前なんですよね。僕が鮨屋を一流であるかどうかを判断する基準は２つあって、ひとつは大将の技術と志しの高さです。それと一流店は客の好みをよく覚えていて、例えばマグロひとつとっても、客の年齢や好みに合わせて握るネタの部位を微調整してきます。これをやられると、僕はさすがだと思ってしまいます。

鮨屋って基本的に大将の胸先三寸ですべて変わって来る「不明朗・不平等」なところがあります。僕はすべての面で最高の待遇をしてもらえる代わり、たぶんちょっとお会計は高くなっている気がします。それが鮨屋というものです。

もうひとつは客層です。鮨屋では客層はとても重要です。並んで注文して食べますからね。気分が悪い客が居ると、味も台無しです。だから一流店は「金を払えば客」とは思いません。一度来て合わない客は「満席」だと言って断ることが多いです。逆に常連客のことは大切にしていて、例え混んでいてもなんとかしてくれようとします。

先日とある予約困難と言われる鮨屋に僕が「よく行く」と回答したら、「一年待ちのはずなのに」という投稿がありましたが、一流の鮨屋って、こういう時のために予約に少し余裕を持たせてあるもんなんです。だから予約が入ります。いっときの客が札束抱えて来るからと言ってぜんぶ受け入れて、本来お店に来て欲しい客が来なくなったら、お店の格が落ちてしまいます。これは大将が金さえ入ればいいと考えるか、一流の鮨屋にしたいと考えるかという、志しの問題にもなります。

何やら下品な客が問題を起こした高級鮨屋があったらしいですが、これは大将の脇が甘かったのかもしれませんね。もちろん不可抗力だった可能性もありますが、僕の知ってる大将は、電話で予約される時、なんか嫌な気がすると、さっさと「満席です、申し訳ありません」と断ってしまうと言っていました。それでも一流店であれば、ひっきりなしに良い客が来ます。とにかく客筋を大切にするのが、一流店だと思います。