物事に挑むとき、ありったけの自分の全てを出し切る経験をされたことはあったのですか？

土下座はしたことがありませんね。最初は色良い返事がもらえなくても、粘り勝ちすることは、よくありましたが。

僕はあくまで入試や就活では苦労しなかったと言っただけです。血反吐を吐く思いをしたことは何度もありますよ。

例えば僕は40代の頃、とある企業で「経営戦略を練ったり、M&Aのデューデリをやって実務を遂行すること」をメインの仕事にしていました。これは心身ともにけっこうタフな仕事です。

ところがある日、ボスからこうして関係ができた米国企業のシニアバイスプレジデント(SVP)も「兼務してくれ」と言われました。最初は部下がいない「なんちゃってSVP」だろうとたかを括ったんですが、いやいや国際事業担当で部下が300人以上いることがわかりました。しかも僕のアシスタントになる日本人部下が1人もいないということもわかりました。

この時にはほんと「おいおい、正気かよ」と思いましたね。どっちもそこそこ優秀なビジネスパースンが全力でやってどうよという仕事でしょう。それを平行してやれって言うんですから。。。結局、2年ちょっとやりましたが、月に2回ぐらい0泊3日の米国出張が平気で入ったので、ほんと死ぬかと思ったものです。

日本にいても日中は日本の仕事をして、オフィスで仮眠を取ると深夜は米国の部下とテレカンやって指示を出すというスタイルだったので、「こんなのありえん、いつかぜったい労基署に駆け込んでやる」と思いながら働きました。深夜働いていて、倒れて冷たくなって、朝、お掃除のおばさんに発見される未来しか思い浮かびませんでした。まあギブアップを言うのだけは性に合いませんでしたが。

もう一つ、これも兼務で新規事業の長になったところ、「この事業を育成してスピンアウトさせ、IPOさせるところまで持っていってくれ。それがお前の任務だ」とボスに言われました。その時、専従の部下は3人。「はぁ、何を言ってるんだ、この◯◯」と笑っちゃいましたよ。

こんな新規事業、スピンアウトさせるところまで持っていくのだってなかなか大変。IPOっていったい何を言ってるんだ😅。そんなの専従で張り付いてやって、それで成功確率が10数%もあれば良い方でしょう。それを兼務でやる。。。こんなの、ありえんて🤣。もう怒るよりおかしくなってしまいました。「この◯◯、正気じゃない」。

「りおぽんさんは失敗しても逃げ帰れる場所がありますからね」と不満をいう部下を宥めすかしてその気にさせて、決してこの手を抜いて仕事を手抜きでやっていないように見せながら、従来の仕事のパフォーマンスも「落ちた」と言われないようにやっていたら、本当に死ぬかと思いました。その間、ヘッドハント話もあったので、転職すれば少しは楽になるかと思って、心が動いたこともあります。

でも結局、「あの◯◯、いつかぜったいギャフンと言わせてやる」と思って踏みとどまりました。スピンアウトさせることに成功してからは、さすがに経営者の仕事がメインになりましたが、電話一本で呼び出されて本社の事業戦略関連の会議に出席する暮らしは変わらなかったし、何故か他の会社の非常勤まで兼務させられたりしました。「こんなのありえん、それぞれの仕事の給与を本当にぜんぶ合算で出しているんだろうな。それでこれかよ」と思いながら働いていたものです。

だからこの会社が無事にマザーズ上場を果たして、東証の鐘を叩いた時は、感慨もひとしおでしたよ。もっと激しくじゃらんじゃらんと鳴らしてやろうかと思ったぐらいです。