質問
2024年03月03日 回答
みずほ産業調査部から、日本の低い労働生産性、人手不足、技能承継問題の解決にCPSの活用を推奨する資料が出ていました。
このCPSについて、りおぽんさんから見た有効性や実現にあたっての課題などあれば教えて頂けないでしょうか。
回答
CPSはそろそろ言葉として旬を過ぎてきた「IoTの進化バージョン」で、「概念の拡張」なんだと僕は理解しています。だからIoTの課題がいろいろ当てはまってしまいます。まずサイバー空間とフィジカル空間を融合させてIoT以上にシステムに依存するわけですから、まず①セキュリティの確保ーーが大きな課題になります。
もはや社内の基本的なシステムで強固なセキュリティを敷いていない企業は珍しいですが、IoT機器が攻撃対象になりやすいってことは常々指摘されてきました。CPSについては「サイバーセキュリティフレームワーク」なるものが提唱されているようですが、ある意味イタチごっこです。CPSが普及すればハッカーにとっては落とす獲物がさらに大きくなるので、狙い甲斐があります。
②CPSをいったい誰が運用するのかーー使える人員がいないことが、IoTが普及しない大きな理由とされてきました。CPSではサイバー空間で仮想の工場を作ってモデリングしたりシミュレーションしたりして工場の最適化を図るわけですが、電機メーカーやコンピュータメーカー、あるいはインフラ系やレジリエント系といった、そういうことができる要員がいそうな企業では有効でしょう。でも、ただでさえIT系の要員が不足してひいひい言っているその他の製造業、特に中小企業にそんな高度なシステムを運用できる人員が確保出来るでしょうか。CPSの運用がフル自動化できない限り、これは大変だと思います。つい僕らはCPSだとかSociety5.0だとかいった言葉を軽々しく使って夢を描いてしまいますが、「そこらのおじさん、おばさん」が運用する可能性を想定していません。
③CPSのキラーアプリケーションは何かがわからないーーある程度大規模な企業であれば、たとえ製品開発の際の試作ラインを仮想化して省コスト、開発スピードを向上させるメリットが、CPSの導入コストを上回るかもしれません。でも、そんな美味しい導入事例が早々あるわけではありません。
例えば農業にCPSを導入すれば、日本の農業は変わると簡単に言う人がいますが、運用人員の確保を含めたCPSの導入に対応できる規模の農家がどこにあるんでしょうか。コンビニに導入して電力消費量を抑えるという事例を聞いたことがありますが、これって導入コストに引き合っているんでしょうか。
CPSを一部の大手電機メーカーや自動車メーカーなど以外に導入させるためのキラーアプリケーションが僕には思い付きません。「導入すべきシステムやサービスがわからない」というのがIoTやDXを推進しない最大の理由だというデータを見たことがあります。CPSでもこの課題はそのまま持ち越しになりそうです。
④ネットワークや通信機器への依存度が上がり過ぎるーーCPSを導入すれば、良質で高速なネットワークやそれを支える通信機器がないとにっちもさっちも行かなくなります。万が一システム障害でもあれば、もろもろが止まってしまうからです。輻輳があっても大変です。だからインターネットにすべてを頼るのはちょっと怖いですが、かといって専用回線をそのために敷く時代でもないです。フェイルセーフやゼロトラストっていう考えのもとにネットワークや通信機器を導入すれば、コストがますますかさんでしまいます。
⑤「超電力依存社会」になりかねないーーこれは以前、電気自動車(EV)の普及における問題点としても指摘しましたが、少なくとも日本では夏場や冬場のピーク時には電力の需給が逼迫しています。EVが普及してCPSなんてものが普及すれば、ますます社会の「電気に対する依存度」が上がります。現在でさえ計画停電がめちゃくちゃ難しくなっているのに、工場の稼働などが電力依存になったら、計画停電なんて出来なくなります。夏場のピーク時の電力供給問題が解消しないと、僕がメーカーの経営者であればCPSの導入を躊躇します。
とまあいろいろ問題出しをしてみましたが、最大の問題はやっぱり「人」だと思います。IoTを導入しない理由を企業に聞いても、AIを導入しない理由を聞いても、常にトップに来るのは「そんなことができる人がいない」ということです。AI導入もそうですが、CPSの導入に際しては、「いったい自分たちの課題が何で、CPSの導入によって何を解決できるのか」ということに知見があって、導入のコストパフォーマンスを見ながら、導入をリードする人が必要です。そしてそれをCPSのシステムに落とし込まないといけません。
これを高いコンサル任せにできる企業はそうはありません。といって電機メーカーやシステムベンダー、SIerの言うとおりにシステムを導入することに、こりている企業は少なくないです。そしていったんCPSを導入すれば、それを運用し続ける必要があります。ただでさえシステム要員が不足しているのに、一般企業、それも中小企業にシステム運用に貼り付ける人員が採用できるでしょうか。
CPSとAIを導入した場合の最終形は、サイバー空間とフィジカル空間を融合させて、その最適化を完全に自動で行うことだと思います。そこまでいけば、おそらくシステムの運用でさえ自動化させるんだと思います。自己修復型のシステムだってアリかもしれません。かなりSFチックですが、実現不可能だとは僕は思いません。ただそこまでの道のりは容易ではないとは思います。
たぶんIoTもDXも株式市場は飽きてきた頃ですから、今後はCPS関連銘柄という言い方をされるかもしれません。たぶん今回のみずほさんのようにCPSの導入を推進すべし、というレポートがこれからも出てくるでしょう。こうして世の中は進歩して来たんですから、僕はそれでいいと思います。ただ現役時代、経営戦略部門でいろんな資料を書き散らかし、また読んで来た身で言えば、あまり過大な未来図は話半分に聞いておいた方がいいです。
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