株価が急上昇した時に株価が連れ上げするケースとしないケースを分けるものって何だと思いますか？

質問

2024年03月01日　回答

A社の株を大量に保有しているB社があって、A社の株価が急上昇した時にB社の株価が連れ上げするケースとしないケースを分けるものって何だと思いますか？
例えば、テレビ東京の株価は東京エレクトロンと強い相関がありますが、京成とOLCや、北興化学と野村マイクロは連動してませんよね。

回答

ある銘柄の保有している含み益が、株価と相関したりしなかったりする点については、定説がありませんが、僕はいくつかの仮説を立てています。

一つ目は「会計表現仮説」とでもいうものです。

京成電鉄→オリエンタルランドの場合、京成の持ち株比率は22.15%で、持分法適用会社です。つまり保有するOLC株はB/S上はすべて取得原価で評価されているんだと思います。京成の持つ膨大な含み益はB/S上では時価評価されていません。つまり会計では表現されていないんです。

もちろん一部でも売却すれば政策保有株の売却による特別利益として計上されます。つまり会計で表現される。でも京成ってこの手を使ったことがありましたっけ？僕は詳しく調べていないんですが、どうも投資家は今のところ「京成がOLC株を売って特別利益を計上する」ことさえ期待していないという気がします。京成はOLC株を「ただ持っているだけ」だから、京成株とOLC株は相関しないんじゃないかと。

例えば京成が持ち株比率を減らして持分法から外してB/Sで時価評価して含み益を表現すれば、一気に純資産も総資産も膨らんで、とんでもないことになるでしょう。そうすれば相関度はぜったい高くなると予想します。

これは半分以上冗談ですが、もし「投資有価証券」ではなく「売買目的有価証券」に仕訳するっていう荒技が会計的に許されれば、京成の決算ではOLC株のとんでもない含み益が一気に反映されて、もう笑っちゃうような決算になると思います。ただこれを1回やってしまうと京成の決算はOLC株の含み益の増減のインパクトがデカすぎるので、OLC株の上下に完全に相関することになるかわり、京成株の投資家はもう京成の鉄道事業や不動産事業の状況なんてどうでもよくなるので、京成電鉄の経営陣はぜったいやらないと思いますが。

まあこれは極端にしても、B/SでOLC株の価値を時価で表現してしまうと、鉄道事業が「副業」と言われかねないので、やりたがらないんだと推測しています。

一方の東京エレクトロン株ですが、相関しているのはテレビ東京ではなく、TBS HDです。もともと東京放送(現・TBS)の100%子会社として1963年に設立された東京エレクトロンですが、TBSは「本業とのシナジーがない」という理由でこれを順次売却して特別利益を計上してきました。つまりTBSの場合、「会計上反映させてきた実績がある」んです。当然、投資家もその含み益がいつか会計に反映されるものと期待して見ます。それゆえ、TBS HDの株価は東京エレクトロンの株価に相関しやすくなります。

TBS HDはどの政策保有目的有価証券を売ったのかは明らかにしていませんが、その持ち株比率を見る限り、2023年3月期には東京エレクトロン株を売っているし、昨年11月にも「投資有価証券1銘柄の売却による特別利益300億円」を計上していますが、これは額から言って東京エレクトロン株であるのは間違いないと思います。つまり会計的に反映させているんです。

さらに皮肉なのは、TBSが東京エレクトロン株を順次売却してきた結果、持ち株比率上、もはや東京エレクトロンはもはやTBSの子会社でも持分法適用会社でもない、ただの政策保有目的の投資有価証券として会計上で時価でB/Sで見ることができるようになっています。

先日発表されたTBS HDの第3四半期報告書を読んで苦笑してしまったんですが、業績見通しが冴えない同社にあって、総資産も純資産も1年で2800億円ほど増えていました。理由は「投資有価証券の含み益の増加」だそうですから、東京エレクトロン株のインパクトがめちゃくちゃデカいと思います。年間売上高が3700億円、経常利益が350億円ほどの会社で、保有有価証券の含み益が2800億円増えたってB/Sで表現されているんですから、それは株価が相関すると思います。

大昔のテレビ局はお金を持っていた上におおらかだったので、こうした政策保有目的による有価証券がたくさんあります。何年か前に試算してみたことがあるんですが、昔も貧乏だったテレビ東京を除く在京キー局4社の総資産に占める政策保有目的の投資有価証券の割合は30-50%に達していました。一番多かったのは、もちろん東京エレクトロンを持つTBS HDで、総資産の半分ほどでした。その後も売却を続けているのでどうなっているのかわかりませんが、東京エレクトロンの株価が爆上がりしているから、さして変わらないのかもしれません。誰か試算してみて欲しいです。

それにしても、ほんと昔のテレビ局はおおらかでした。だから本業とはまったく無関係な、しかも社員でもなんでもない日商の営業マンが立ち上げた半導体ベンチャーに全額出資するなんていう無茶苦茶が罷り通ったんでしょうね🤣。他にもこういった政策保有株がテレビ局にはけっこうあるので、落日のテレビ局がまだ食っていけるわけですが。

今のTBS HDだったら東京エレクトロンから入る配当収入でさえバカにできないはずです。もう無茶苦茶を通したいにしえの技術局長にお礼を言うしかないでしょう。あまりに無理筋な話なので、今の若い人はなんでTBS HDが東京エレクトロン株なんて持っているのか、説明されてもよくわからないと思います。でもTBS HDの保有する東京エレクトロン株ももうだいぶ減ってきました。

一つ目の仮説だけで長くなったから、残りの仮説は後日、気が向いたら開陳することにします。あくまでも「仮説」だから、すべて説明できるわけじゃないです。ただの思考実験です。