DICが川村記念美術館を休館にする件についてどう思われますか？

しょうがないんじゃない。僕はいつかこうなるとは予想していた。

まずDICっていう企業は、昔は印刷関係のインキで圧倒的な企業だった。「DIC持って来て」と言えば、「大日本インキの色見本」を指しているぐらい使われていた。しかし出版業はDTP化しさらには雑誌がネット媒体化しつつある。DICはもう会社が生き残るので精一杯で、美術館なんてもの支える余裕がないと思っていた。

次いで立地。千葉県佐倉市にあるんだけど、質問した君は行ったことがあるのかな。敷地は広いんだけど、立地が悪過ぎる。佐倉市って言えば京成電鉄か総武快速線なんだけど佐倉駅からだと無料送迎バスで30分かかる。もう一つ東京駅からダイレクトバスがあるけど1時間以上かかる。佐倉駅からタクシーで往復すると約1万円。その上周囲には他に観光資源が何にもない。こんな運営システムでうまくいくと思うかい。ありえないよ。

3番目がコレクション。川村記念美術館って何の美術館だと思う。目玉はレンブラントなのかな。でも印象派もあるし、シュルレアリスムもある。でも実態はアメリカ現代美術のコレクションが圧倒的に多い。日本人はフェルメールとかダヴィンチ、あるいは印象派の有名どころだと、じーちゃんばーちゃん、若いのわけがわかんないの、とにかく死ぬほど行列を作ってぎゅうぎゅうで観に来る。

テレビで騒ぐと死ぬほど来るから、世田谷区の岡本にあった「静嘉堂文庫」が丸の内の明治安田生命ビルに移って「静嘉堂文庫美術館」として開館したから「めでたいからちょっくら挨拶して行くか」と思って入ったらビックリしたよ。もうわけがわからない日頃美術館に来たこともなさそうな連中が血相変えて「耀変天目はどこだ」ってマナーもルールもなくおしくらまんじゅうやっていたんだぜ。もうこんなところにゃいられないと思ってさっさと退散したよ。「稲葉天目」なんてこれまでも定期的に公開していたんだぜ。目を血走らせて美術館に来るなよ🤣。

伊藤若冲もそう。昔は足を止める人もいなかった若冲が、いきなりブームになった。以来、「若冲展」と名が付けばじーちゃんばーちゃんジャージを着たどう見ても美術館に来る層ではない奴らが長蛇の列を作って、入場すると分かるわきゃないのに長時間動かないでふんふんと言う顔で眺めている。もう若冲観るよりお前のアホ面見飽きたよって感じ。

でも知ってる？米国のジョー・プライスコレクションを出光美術館が買ったわけで、そのお披露目を去年やった。こりゃー混むかな、でも一応チケット予約だけ入れてみるかと思って入れたらすんなり取れた。行ったらたいして混んでいなくて若冲がのーーんびり観られた。それで気が付いたよ。展示会のタイトルが「江戸絵画の華展」だったからわかんなかったんだね。出光やるじゃんと思った。これは耀変天目など数々の国宝級の名品を一堂に会させたさすがトーハクって展示会が「茶の湯展」だったんでたいして混んでいなかったのでも経験したけど。

テレビでやったヤツは目を血ばらせたヤツらが殺到する。でも六本木の星条旗通りにある「国立新美術館」に行ったことある？

六本木や乃木坂から徒歩圏内。でもよっぽどの人気の画家の展示会でもない限り、館内はキャッチボールができるんじゃないかと思うぐらい空いている。あそこは3Fにポール・ボキューズがあって、B1Fにミュージアムショップとカフェテリアがある。先日行った時は「CLAMP展」だったから展示会には若い人がいっぱい来ていたけれど、これがモダンアートだとだいたい見た目がもう美大生ってわかるのばっかで、ミュージアムショップなんて1時間居ても僕ら以外のお客さんが1-2グループってことも珍しくないんだよ。それが日本のアートシーンの現状なのに、佐倉市に1時間以上かけて観に行く人がどれぐらいいると思う？先が見えないよ。

日本人は「閉館する」っていうと、いきなり惜しがって押しかけるけど、佐倉市まで君は何度行っている？僕は観たい展示会があっても、事実上東京を大横断して成田空港に行くのに等しいから断念した。観光地にあるとかなんかよっぽど条件が良くなきゃ無理だって。群馬県渋川市に引っ込んだ「原美術館ARC」も大丈夫なのかなぁ。。。