開成や麻布等の名門男子校は慶應は受けても早稲田は受けないイメージがありますが、どういった理由によるのでしょうか。

これは単純に「受かりやすい」からだと思います。

質問者さんは「名門男子校」=「東大受験校」と考えられているんだと考えます。開成や麻布の生徒の多くは東大ないし旧帝大の国立、さらには東京医科歯科大学など国立大学の受験を目指しています。僕の知る限り早慶を第一志望にする生徒は多くはありません。

東大を受験する場合、文系でも数Ⅱまで数学があり、理系と共通なので文系には難問です。配点は80点ですがこれが合否のポイントとも言われており、かなり力を入れて勉強する必要があります。国語も古文や漢文でも骨のある問題が出るし、センター試験では理科や今年からは情報も受けなければなりません。東大受験というのは、これらを要領良くこなさないととても間に合わないぐらいなので、滑り止めに合わせた受験勉強なんて出来ません。

その点、慶應義塾の経済には数学があります。ないのは法学部と文学部あたりです。僕の頃には法学部にもあったぐらいです。最近は法学部が難問奇問を出すようになっていますが、経済学部は数学、英語、小論文で、英語の問題が伝統的に良問です。ということで、慶應義塾の経済学部はこうした学校の生徒にとってほぼゼロコストで受験でき、合格もしやすいので、みんなが受験するんです。

僕らの頃は法学部がさらに入りやすかったので、「あほう学部」なんて酷いあだ名がありましたが、現在の法学部は数学がなくなった上、英語なども難問奇問を出し受験テクニックを要するようになったので、私学文系の浪人生有利となったので、敬遠されるようになったと思います。

一方、早稲田大学は昔は数学が文系は政経学部の選択科目ぐらいでしかありませんでした。そして早稲田の文系は伝統的に高校では習わないような、かなり特殊な難問奇問悪問を、大量の受験生を振り落とすために出して来ました。そうなると英語、社会、国語のうち、特に社会と英語で変な引っ掛け問題やこんなもん出すのかよって言うトリビアみたいな問題にも対応しないと合格出来ません。

ですから現役よりより長い時間受験勉強している浪人生が有利ですし、早稲田受験に合わせた勉強もしなくてはなりません。合格し難い上、コストパフォーマンスが悪いんです。

ですから正確に言えば慶應義塾が多いわけではありません。慶應経済が伝統的に多いんです。早稲田も政経であれば多いです。慶應義塾も法学部は今やザ私学文系の3教科で悪問を出して受験生を振り落とすパターンになったので、あまり受けなくなって来ていると思います。

ですからこの問題がない理工学部は早慶どっちも多いですし、医学部志望は当然ですが医学部は慶應にしかありません。

でも確認してみたら、ここ数年の両校の合格者数は開成と麻布ではあんまり変わりませんでしたよ。僕も東大の数学の訓練をしようと思って受験した慶應義塾医学部以外、コストパフォーマンスを考えて慶應経済と早大政経を受験しましたから。

これらの男子進学校の生徒にとって、合格目標は東大を始めとする国立大学であるため、滑り止めの早慶には出来るだけ手間をかけたくない。それで合格出来るところを受験するとそうなるってことです。僕も過去問解いて早大法は「これは早大法向けの受験勉強をする必要がある」と受験しませんでした。

受験にとって、本命校を受験するまでの滑り止め校で落ちて自信を失わず、上げ潮ムードで本命校の受験日を迎えるのって、とても重要なんです。