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イスラエルと周辺諸国の武力攻撃のしあいは今45歳の私が生きている間に解決しそうでしょうか。

質問

イスラエルと周辺諸国の武力攻撃のしあいは今45歳の私が生きている間に解決しそうでしょうか。
どちらが悪いというものでもないと何かで見ましたが、相場とか関係なくニュースを見るたびに、またか・・・と悲しい気持ちになります。

回答

残念ながらムリでしょう。限られた面積の土地に、アラブとユダヤという相容れない人々が住んでいるわけです。その上厄介なことにイスラム教とユダヤ教という、現在でも信仰が生きている宗教の聖地がどっちもエルサレムにあります。

信仰が生きている宗教というのは、命を賭けても戦わなければなりません。イスラエル&ユダヤ教はここで譲れば「約束の地」を失います。この約束の地はヘブライ語聖書で神がユダヤの民に与えた土地です。つまりこれを失うことは、自分たちの住む土地と信仰する宗教を同時に失うことを意味します。ですから米国をはじめとする世界各地のユダヤ人が、あらゆる手を使ってイスラエルを支援するわけです。

一方のアラブ&イスラム教にとっては「もともとパレスチナ人たちが住んでいたところに、ユダヤ人が強制的に入ってきたんじゃないのか?」という気持ちがあります。ただこれだけなら譲る余地はまだあったんですが、イスラム教徒が一生の間に巡礼すべき聖地の3つのうちの1つがエルサレムにあるので、譲れなくなってしまいました。

残る2つの聖地がサウジアラビアにあることもあって、中東アラブ諸国の盟主はサウジなんですが、他のことはともかく聖地という宗教に関わることで譲歩してしまうと、サウジが盟主として滑り落ちるどころか、サウジアラビア王国という国やサウード王家さえ崩壊しかねません。少しでも譲ればイスラム過激派に狙われるのは自分たちですから、まったく譲れない状況です。

このように揉めることになった原因は、第一次世界大戦時に、英国が取った「3枚舌外交」です。英国はドイツと戦うため、3つの協定や宣言を1915-17年という、わずか3年のうちに結びました。

ひとつ目は1915年の「フサイン=マクマホン協定」というもので、植民地だった英国領土だったアラブ地域、トランスヨルダンなどの独立を認める代わり、戦争に協力しろというものです。当然、アラブ人たちは「わーい」と喜んで頑張ります。

ふたつ目は1916年に英国とフランス、ロシアが秘密裏に結んだ「サイクス・ピコ協定」というもので、先述の裏でオスマン帝国の領土分割を取り決めたものです。秘密協定でしたが、ロシア革命が起こった結果、バレてしまいました。しかしここまでなら英国の背信というだけで済みました。

問題を決定的にややこしくしてしまったのが、1917年11月、当時の英国外相だったアーサー・バルフォアが、戦争を戦う軍資金欲しさに、当時の英国にあったユダヤ人コミュニティのリーダーであり、超の付く大金持ちだったウォルター・ロスチャイルドに送った書簡です。通称「バルフォア宣言」というこの書簡では、ユダヤ人たちが戦費で協力すれば、約束の地であるシオンにユダヤ人たちの国を建国することを認めるという内容でした。

ロスチャイルドはあの金融財閥のロスチャイルド家です。もちろん「わーい」と喜んで、お金をたくさん拠出しました。欧州大陸や米国にもユダヤ系財閥はありましたから、彼らもこぞって協力しました。

「バルフォア宣言」を受けてユダヤ人たちがパレスチナに入植し始めます。その結果、英国委任統治領のパレスチナではユダヤ人たちとパレスチナ人たちが揉めるようになりました。1929年にはすでにユダヤ教の聖地、エルサレムの「嘆きの壁」を中心に、ユダヤ人たちとアラブ人たちが武力衝突する「嘆きの壁事件」が発生しています。1936年には「アラブ反乱」が起きて、さらに泥沼化しました。

慌てた英国はピール委員会などを作って収拾に乗り出すんですが、この頃にはもうアラブ人もユダヤ人も統治国である英国の言うことなどまったく信用せず、失敗に終わっています。この頃には英国は当事者能力を失っていました。

第二次世界大戦後、パレスチナが独立宣言をする側から、ユダヤ人たちがさらにどんどん入植して、イスラエルを建国するという大混乱が起きました。英国としてはかつての3枚舌外交は文面をよく読めば矛盾していない、ギリギリセーフという認識だったとも言われますが、こんなもん大丈夫なわけがありません。

ユダヤ人たちがパレスチナ人たちを追い払って、イスラエル建国を宣言した1947年の翌年である1948年にはもう「第一次中東戦争」が勃発しています。

以上のような経緯ですから、お互いに言い分があって譲れません。「仲良く領土を分けたらいいのに」なんていう他人事は通用しません。日本だって小さな島も北方領土も「譲る」なんて言ったら袋叩きでしょう。ましてや自分たちの住む場所から聖地までがかかっています。

パレスチナにあるアラブ人たちのテロ組織は、アラブ語を正確に訳せば「パレスチナ イスラミック ジハード運動」と言います。この「ジハード」の本来の意味は「宗教のために尽くす、戦う」ということです。「大ジハード」は自分の心の中の悪や欲望と戦うことで、「小ジハード」が異教徒と戦うことです。テロ行為をどう評価するかは別にして、パレスチナ問題はアラブ人たちにとっては、外部の異教徒の不正義に対するジハード(聖戦)になっているわけです。

一方のユダヤ人では、約束の地であるシオンに建国して、ユダヤ人の文化を復興しようという民族主義運動を「シオニズム」と言います。イスラエルに住むユダヤ人の8割近くはこのシオニズム運動の支持者であるシオニストだと言われています。

歴史をたどればもっと古くから両者の軋轢の歴史があります。

こんな戦い、我々が生きているうちどころか、あと500年経ってもやっているかもしれません。バルフォア宣言からでももう100年経ってます。

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