質問
なぜ投資家は本来交易条件に直結するはずの実質実効レートで為替を議論しないのでしょうか?
回答
実質実効レートを考慮しても、こと投資に関してはあんまり意味がないからだと思います。実質実効レートは変動相場制に入った1973年から上昇基調になって、1995年にピークを迎え、以後、低下を続けてアベノミクス以降下げ足を速め、現在は1973年並みに下がっています。日経平均の動きとの相関性はぜんぜんありません。
実質実効レートは国際的な「円の実力」を示す値です。その時の財政政策や金融政策、経済環境、貿易損益などで決まってきます。影響を与えるのは、企業の海外に対する「購買力」です。
2013年ごろから急ピッチで実効為替レートは下げていますが、これは異次元の金融緩和をして海外との金利差が大きくなったこと、財政赤字が拡大するのを承知で財政出動を拡大したこと、貿易黒字がどんどん減ってついには赤字になったことの影響が大きいと思います。貿易赤字は日本企業が生産拠点をどんどん海外に移したことが大きいでしょう。
もし2013年にアベノミクスで異次元の金融緩和も大掛かりな財政出動もしなかったら、実効為替レートは今より高くなっていて、企業の対外的な購買力は今より高くなっていたかもしれません。
でも今頃も日経平均は1万円台をウロウロしていて、景気は最悪で、雇用環境も悪かったと、僕は思います。そして実効為替レートの低下分、企業の購買力は下がっていますが、別の要因でその低下を補っていると、僕は考えます。
目下はアベノミクスというかなり特殊な経済政策のツケを払っているところですが、あれで日本経済が浮揚したこと、日経平均が上昇したことは否定できません。かつての輸出主導の経済構造や産業構造が変化した「結果」でもあるので、実効実質レート自体が下落すること自体はそれほど悲観することではないと思います。
実効実質レートを上げることを主眼にするなら、打つ手はいくらも考えつきますが、どの手も国民の痛みをともなうんですよね。
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