東大の過去問は、何年分ぐらい解かれましたか？

正確には覚えていませんが、7年分とか10年分はやりましたね。「過去の問題を解くこと」自体には意味がないんですよ。でも東大の入試問題って毎年スタイルがあんまり変わらないんです。例えば国語なら①哲学や社会科学の難解な長文、②古文、③漢文、④エッセイなんかの柔らかい長文ーーこの順に4つの大問が出題されます。これが「東大国語」と俗に言われるもので、スタイルだけは、僕の娘が受験した時もまったく変わっていませんでした。

ふつうにやっていると、④まで到達できなくなります。だから自分がどれぐらい時間がかかるのか、どれぐらいのペースでやれば全問解けるのか、あるいは全問解くことができないならどの大問を捨てるか、判断しなくてはなりません。これを試験本番に瞬時にやるのはムリです。また東大国語の記述問題は文字数制限がタイトにできているなど癖がいろいろあります。

「問題は違うけれど癖はおんなじ」なので、これを解くコツをつかんでいないと、試験本番で失敗するんですね。国語が苦手な人なら、最後の④柔らかい長文を最初にやって、ついで①最初の硬い長文をやる。これをできる限りやって、②古文か③漢文のどちらかを捨てるのが常套手段です。最初から捨てる気でいれば、漢文を受験勉強しない手もあります。国語は文理共通ですから、理系だと最初から②古文と③漢文を捨てる、つまり古文と漢文を受験勉強しない人も少なからずいます。それで何割ぐらい点数が取れるにのか、その判断を過去問でするんです。

英語はやたら長い長文が出てふつうに読んでいたら到底時間がなくなるとか、数学はどの分野から出やすいとか、世界史や日本史はは高校によってはそこまで行かずに終わってしまう現代史や、あんまり力点が置かれない経済史や文化史の問題がけっこう出るといった、各教科ごとに癖がたくさんあります。これがわかっているのとわかっていないとでは、受験勉強をする上で大きな差が出てきます。

もし過去問ではなく、これらと同等の問題が出題できて練習させてくれているなら、過去問を解かなくてもいいかもしれません。でももし上記のことすらわからず、「過去問を解く必要がない」と言っているなら、その塾講師は東大受験のど素人です。

ちなみに開成高校でやる校内模試は、出題傾向や配点、時間、問題の分量、採点方法まで、東大の受験問題のスタイルを踏襲していました。これを繰り返しやって、肌感をつかむんですね。この肌感をつかむために過去問をやってみるんです。ですから、過去問をやるときは、漫然とではなく、ぜったい時間通りにやってください。でないと本当に意味がありません。

僕は過去、「東大は要領で合格できる」と何度か回答してきましたが、これは以上のようなコツをつかんでいると、圧倒的に有利になるからです。東大の国語や英語をこのコツを知らずにやると、たぶん最後まで行かずにタイムアップすると思います。世界史や日本史は見たいことがない問題が出て、パニックに陥るでしょう。数学では空間図形みたいに、よく出やすい分野がいくつかあります。数学では数式を暗記しておくことはほとんど役に立ちません。点が取りやすい計算問題がまず出ないなど、東大数学は一橋や京大と比べても異質です。

漫然と受験勉強らしいことをして、東大に合格するのはけっこう大変です。他の大学の受験と同じやり方で勉強をしていたら、合格するのはすごく難しいです。受験勉強なんて合格すること以上の意味はありませんから、要領よくやって合格してください。その要領やコツをつかむために過去問が使えるんです。