ビットコインがアメリカの準備資産になる、 価格が一億になるのも見えてくる、そんなことありえるのでしょうか。

「インサイドマネー」「アウトサイドマネー」という言葉をご存知でしょうか。

「アウトサイドマネー(外部貨幣)」とは政府が発行する貨幣のことで、日本国内で言えば日本銀行券と政府発行の硬貨がこれにあたります。日銀の当座預金も中央銀行貨幣の一つです。

一方、「インサイドマネー(内部貨幣)」とは民間銀行が発行する貨幣のことで、民間銀行にとっては負債になる銀行預金や、債券、手形、小切手などがそれに当たります。50万円の預金をされた銀行が150万円貸し出せば、「信用創造」です。

両者の決定的な違いが「決済完了性」です。内部貨幣、つまり銀行間の入金したり、引き落としたりは、日本銀行券や日銀当座預金などの外部貨幣によって、その可能性が消失して、初めて完了します。内部貨幣の決済性は、外部貨幣による内部貨幣の決済機能によって、初めて成立するわけです。

いきなり「貨幣論」の話を初めてしまいましたが大丈夫でしょうか😅。もうここから先はちょっと説明を端折りますが、決済システムの一般均衡理論として「フリーマンモデル」というものがあります。このモデルでは、貨幣による債券の決済が集中すると、一時的な流動性の不足が発生します。この時に中央銀行が債券市場に介入することで、名目利子率の一時的な急上昇が回避されて、経済的な厚生が担保されるという理論です。

一国内の金融システムであれば、インサイドマネーとアウトサイドマネーの仕組みは簡単ですが、国際金融となるとこれが複雑になります。ブレトンウッズ体制では、1オンスの金は35ドルと交換できる金本位制でした。ここでは信用創造もなく、アウトサイドマネー的でした。

しかし1971年に米国が金とドルとの交換をやめて金本位制が崩壊したことで、事情が激変しました。例えば米国が米国債を大量に発行して信用を創造して、それを中国が大量に米国債を保有すれば、それはインサイドマネー的です。「ブレトンウッズ後」の世界の通貨システムは、米ドルを基軸通貨とするインサイドマネー的なシステムによって、維持されてきたと言えます(このあたり、経済学の専門家からするとだいぶまるめた説明ですが、これ以上厳密に説明すると、わかる方が激減してしまいます)。

こうやって維持されて来た国際通貨システムですが、フリーマンモデルの帰結をご存知の方はもうわかっている通りの問題を抱え始めてしまいました。現在、中国は1兆1000億ドル強の米国債を保有しています。その限りにおいて、米国債は世界の金融システムにおいてインサイドマネーです。これは途中の話を省くと、中国が米国のインフレ率をコントロールできるという話になります。これは米国に受け入れられる話ではありません。

そこで米国がどこかでポスト「ブレトンウッズ後」、いわゆる「ブレトンウッズ3」と言われる世界金融システムに移行するのではないか、という推測が出てくるわけです。

「金本位制」が崩壊した最大の要因は、「金の生産量が限られること」でした。金とドルをある決まった交換率で交換する決まりを定める以上、米ドルの発行量は金の生産量によって縛られます。つまり経済成長が金に縛られるわけです。

しかしインサイドマネーに依存する現行の体制には問題が見えてきた。そこで生産量の縛りがなくてアウトサイドマネーとして機能するもの、つまりビットコインを利用した「ビットコイン本位制」とも言える通貨システムを米国は今後目指すのではないのか、という言説です。

これにはいろんな問題点が簡単に指摘できますし、まだ何人かのエコノミストが私論かつ試論として言っているだけで、米政府になんらかの動きがあるわけではまったくありません。ただ米国が本気で中国やBRICS諸国と一戦交える気になったら、現在のインサイドマネーである米国債に依存する国際通貨システムでは戦えません。ビットコインかどうかはともかく、その場合は「ブレトンウッズ3」を目指すことは十分あり得ると思います。

ただビットコイン本位制に例えなった場合でも、現在は何らの裏付けもないビットコインが米ドルと紐付くという話であって、ビットコインの信頼性がグッと増して保有する人も流通量も激増しますが、ビットコインが1億になるわけではないです。