安井金比羅宮が話題になって気になってます。｜東大ぱふぇっとの米国株投資ブログ

質問

りおぽんさん、こんにちは

安井金比羅宮が話題になって気になり調べました。安井金比羅宮は、日本三大怨霊のひとつである祟徳天皇が祀られていて、その祟徳天皇は、自身が妻と離れ離れにならざるを得なかったことから、今後の男女がそのようにならないように悪いエニシを断ち切って良縁を結んでくれる、というのをみました。

怨霊であることとギャップがあり、どういう経緯で安井金比羅宮のように良縁を結ばれるようになったのか不思議です。鳥が不憫だと歌ったり、鳥になって好きな人のところに行きたいと歌ったり、四国の守り神的な位置になったりしたところに意味がありそうなのですが、事故的なもので悪いエニシを切るというのもやや不可解。りおぽんさんのご教示が聞ければ嬉しいです。

回答

崇徳天皇は保元の乱の結果、讃岐に配流されて、失意のうちに46歳で亡くなっています。配流後の京都のさまざまな文書では崇徳院あるいは讃岐院と書かれており、そういう扱いでした。その死後しばらくの間は特段の扱いではなかったんですが、疫病の流行などさまざまな不穏な出来事や関係者の死亡が相次いだので、これは崇徳院の祟りではないかという話になり、朝廷は慌てて讃岐に使者を送って、崇徳院の魂を慰めようとしています。

日本には「御霊信仰」というものがあり、恨みを抱いて非業の死を遂げた人が天災や疫病、社会不安などを引き起こしたとされると、それを「御霊」として扱って、その祟る魂を鎮めて災いを逃れようとする独特の信仰があります。祟り神としてのスーパーパワーを転じて、なんらかの神として祀るものです。やはり配流先で非業の死を遂げた菅原道真も崇徳院と並んで「日本三大怨霊」とされますが、それが「天満宮」の「天神さま」として学問の神さまとして崇められるようになったのが顕著な事例です。

三大怨霊のもう1人である平将門は神田明神に合祀され、この「明神さま」は江戸の総鎮守とされ、なぜか今では「商売繁盛の神さま」として崇められています。「将門の首塚」と言われるものは東京・大手町にあるんですが、その祟りを恐れて、大手町再開発ではこの首塚を避けるように妙な形で建っているオフィスビルもあり、将門塚保存会には三菱地所や三井物産、三菱東京UFJ銀行など近隣の名だたる大企業が名を連ねて、その整備に資金を出しています。祟り神を恐れる御霊信仰は、これほどまでに日本人の心の奥底に染み付いているわけです。

保元の乱に崇徳天皇が踏み切った背景には、鳥羽法皇が可愛がっていた崇徳天皇の異母弟を天皇(のちの近衛天皇)に据えたかったため、崇徳天皇に譲位を強いたことが遺恨となったためであり、崇徳院から怨みをかったと思う理由は十分にありました。崇徳院も配流地の讃岐で、「この怨みを晴らすため、妖怪に生まれ変わって怨霊になって祟ってやる」と祈願し、爪を伸ばし髪を伸ばして、生前から悪鬼のような姿になったとも言われています。このため、朝廷は配流地にあった金刀金毘羅宮、いわゆる讃岐の金毘羅さんに合祀することで、その祟りを鎮めようとしています。その縁もあり、京都の安井の金毘羅さんにも合祀されたのだと思われます。

こうして祟り神になった崇徳院ですが、死の1年前、讃岐の金毘羅さんに参籠して、「一切の欲を断とう」と祈願したという伝説が残っています。このため、崇徳院は菅原道真が学問の神さまになったのと同じく、江戸時代ぐらいから「断ち物」、すなわち何かを切る神さまとして信仰されるようになりました。悪縁を断つということで「縁切りの神さま」というわけです。

この「悪縁を切る」という信仰が、だんだん転じて「良縁を結ぶ」という両面性を持つようになりました。悪縁を切るんだから、その後には良縁を結んでくれるだろうという理屈だと思います。また「縁切り祈願」のうちに、恋しい人が付き合っている相手と縁が切れて自分に振り向いてくれるように、という女性の願掛けがあったことも影響していると考えられます。

こうして崇徳院を合祀した安井の金毘羅さんは、縁切りの神さまであると同時に、良縁を結んでくれる神さまになったわけです。なお、安井の金毘羅さんにあって縁切り良縁祈願のために穴を潜る「縁切り縁結び碑」が境内に設置されたのは第二次世界大戦後のことらしく、これがきっかけになって、「安井の金毘羅さんは縁切りと良縁を結ぶ神社」という評判が高まったそうです。