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国内で「貧乏旅行」をしたいです。

質問

国内で「貧乏旅行」をしたいです。

家族や留学でヨーロッパを中心に海外に行くことは多いですが、国内は祖父母が亡くなったこともあり、コロナ禍以降 年1回の京都以外、東京からほぼ出ていません。

京都は寺社仏閣を中心に自然を求めて観光しますが、もっと海や河、山など、自然を感じる場所に行きたいです。四国がいいかなと思っています。

免許を持っているのでレンタカーも検討できますが、あえて費用を抑えた旅行をしたいです。
普段は新幹線で移動しますが、青春18きっぷみたいな電車旅をしてみたいです。

この場合、りおぽんさんでしたらどんな旅をすると思いますか?

回答

正直に言うと、僕が大学生の頃は日本国内を鉄道で貧乏旅行する楽しみがあった。「青春18きっぷ」はまだ販売されていなかったけれど、国鉄は全国津々浦々にローカル線があったし、長距離を走る鈍行列車もあった。

以前、ポストしたことがあるけれど、東京から金沢に行く時、よく使ったのが、東京駅を夜11時30分に出発する大垣行きの各駅停車の通称「大垣夜行」に乗る手。これが当時、関西方面に行くための一番安い手段だから、僕が中高生の頃にこれを使い始めた時は、僕ら学生以外、お金のない小劇団の人や学生運動関係者なんかとよく乗り合わせた。7時間以上一緒なので、その間に学生運動について議論したり、劇団の女優さんと仲良くなったりした。浜松駅に真夜中に停車して駅弁売りの人が出るので、買って一緒に食べた。

朝7時頃に大垣駅に着くので、東海道線を乗り継いで、米原発長岡行きの午前10時33分発の523列車に乗る。これが14系客車なんか使っていて、良い味出していたんだよね。1両にお客さんが1人ぐらいしか乗っていない。福井駅で何十分も停まるので、途中下車して街にお散歩に行く。当時はあんまりうるさくなかったから、高校生がカップ酒飲みながら、小鯛の笹寿司なんかつまんで、のんびりと客車の旅を楽しむ。金沢駅に着くのが確か午後4時半頃だったから、東京から17時間かけて金沢に行くんだけど、これが当時の僕の金沢行きの「最短ルート」だった。ちなみにこのまま乗って長岡まで行けば確か到着は午後11時台だったはず。

寝台列車もたくさん走っていた。高校生の頃、僕がいつどこにいるのかわからないことで怒った伯母さんに、金沢駅まで同行されて、切符とお弁当を買われて上野行きの寝台急行「能登」に、ちゃんと乗るかまで見張られて、乗せられたことがある。これはつまらない旅になるなぁと思っていたら、なんと大雪で信越本線で長時間、動けなくなってしまう。やったね、と思ったね。たまたまB寝台で乗り合わせたのが女子大生3人組なんで、仲良くなって、トランプなんかして動くのを待った。3人が心細がるから、鉄道に詳しい僕がカレチさん(専務車掌)のところに行って、状況を聞いて来たりした。

みんなお腹が減ったから、僕が伯母さんから持たされたたくさんのお土産を取り出してみんなに分けて食べた。予定より8時間ぐらい遅れて上野駅に着いた頃にはお姉さんたちがみんな僕を頼りにするようになっていたので、上野駅に到着して、僕がみんなの荷物を下ろしてあげていたら、泣き出しちゃうお姉さんもいたぐらい。連絡先を交換し合って別れたので、そのうちの1人とお付き合いした。

でもね、こういう経験はもう残念ながら出来ないんだよ。駅のベンチで寝ていたら、心配した駅長さんが駅長室で寝かせてくれて、温かいお茶を飲ませてもらったことなんてよくあったけれど、そんな旅はもう出来ない。全国に新幹線網が張り巡らされ、在来線はどんどん分断されて第三セクターに移管された。上野発青森行きのようにアホみたいな長距離を走る各駅停車もないし、寝台特急は絶滅危惧種になっている。駅弁もどんどん個性がなくなっているし、列車はどんどん現代化されている。クロスシートの列車が減って、ロングシートがどんどん増えたから、乗り合わせた人と会話する機会も減っている。

昔は五能線なんて、もう何語を話しているのかと思うような津軽弁のおばあちゃんや学生さんぐらいしか乗っていなくて、そんなおばあちゃんにりんごを押し付けられるようにもらった。只見線を途中下車して鄙びた温泉宿に泊まりながら数日かけて走破するのも楽しかった。でも最近は五能線も只見線も外国人を含めて観光客がやたら増えた。只見線は全線再開からまだ乗りに行っていないので、行きたいんだけれど、もしあんまり変わっていたらと思うと怖いので、躊躇している。北海道のローカル線は国鉄時代の三分の一に減ったんじゃないか。

まあその中ではあなたが言う通り、四国は比較的、昔の姿をとどめている方だと思う。言っては悪いけれど、一部地域を除くと、観光地としては栄えていないからね。ただ四国を貧乏旅行する上で課題になるのは、安くて良い宿の確保になると思う。観光地化が進んでいない分、そういう宿が少ないからね。

僕の感覚では、お金があっても1円でも節約しようとするのは「節約旅行」であって、「貧乏旅行」じゃない。貧乏だけど、いろいろ旅に出たいから一生懸命に工夫するのが「貧乏旅行」。気分的なものだけど、僕には明確な線引きがある。大学時代、パリの安ホテルで1ヶ月滞在したのなんてのが、典型的な貧乏旅行。そういう意味で、国内は便利になり過ぎて、貧乏旅行がしにくくなった。

あくまでも僕の勘だけど、釧路から根室を回ってオホーツク海側を北上して稚内を目指したりすると、まだ貧乏旅行が楽しめそうな気がする。逆に札幌から増毛、留萌、手塩と北上して稚内を目指す。途中で天売島や焼尻島、あるいは利尻島や礼文島といった島に渡る旅をする。この辺を精一杯旅するには、かなり知恵を絞らないといけないから、今も貧乏旅行ができる余地がある。もう鉄道を使っての貧乏旅行はしにくいので、バスなどの鉄道以外の公共交通機関を使わないと行けない場所に行くことに「貧乏旅行」を楽しむヒントがある気がする。

僕に対する質問だけど、貧乏旅行というのは、若い人だけができる「特権」なんだよ。僕の歳ではもう耐えられない。そしてここまで触れた来たように、僕は古き良き貧乏旅行をいっぱいして来た。それに比べると、たとえ今僕が20代になったとしても、かつてほど楽しい貧乏旅行を計画できない。良いことだけど、すべてが便利になったからね。

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