受験とは違うタイプの勉強にはどのように取り組んできましたか？

「プログラミング」は「言語」ですから、学習メソッドは語学学習の応用が効きます。ただ通常の語学は「文章を書いたり、会話したり」するという目標が明確ですが、プログラミングはこれが明確ではありません。ですから「この言語を覚えて、何をするのか」という目標設定が非常に重要になります。これが学習のモチベーションアップにも繋がります。

語学学習のやり方で以前、「使わないと覚えない」と回答したと思いますが、プログラミングも同じなので、覚えたら、それで単純でもいいので、何か組んでみることも大切です。どういうプログラムを組むか考え、コーディングしてコンパイルすると、まずたいていバグが出ます。このデバッグをやっているうちに、プログラミングが上達します。本を読んでそれをど暗記しようというのは、語学学習同様、上達しにくいです。「目標設定」と「実際に組む」の2つです。

そして語学同様、プログラム言語にも、言語によって勘所が異なりますのでCならCの、Python ならPythonなりに勘所は何かを考えて、それを早めに把握することです。プログラミング学習で難しいのは、独学になりやすいことですが、せめてわからないところが聞ける人を作るといいでしょう。僕はIT企業の経営者だった時、はるかに若いエンジニアでしたが、優秀だったので、わからないことがあると彼をメンターにして教わりました。彼はブツクサ言いながら、何でも教えてくれて、ちょっとした抜け技的なテクニックやキレイな書き方まで教えてくれたものです。使えるものは使ったほうがいいでしょう。

「文章の上達法」の基本は「まねること」です。過去の名文家の誰の文章をまねたいのか決めるのが、第一歩です。三島由紀夫なら三島由紀夫といった具合です。ちなみに僕の文章の基本にあるのは志賀直哉です。簡潔でわかりやすいのが、彼の文章の特徴です。これを基本に、いろんな文章家の文章の書き方をまねしました。現在では、村上春樹風に書けとか谷崎潤一郎風に書けと言われたら、書き分けられるようになりました。

一般的に入手しやすいところでは、芥川龍之介あたりをまねてみてはいかがでしょうか。それと新聞記者は、文章としての味わいは乏しいですが、限られた紙面という制約上、1文字もムダにしない文章を書きますので、ビジネス文書を上達したいのなら、これをまねるのも手です。一般的に大学教授は文章が下手なので、これはまねない方がいいでしょう。

中高の先生も下手な方が多いです。ただ僕が中学1ー2年で教わった現代国語の先生が、芥川賞の万年候補だった作家でもあったので、この先生に徹底的にしごかれたのが、今の僕の文章の原点です。やっぱりいろんな作家の文章を分析して、まねるトレーニングをやらされました。

文章をまねる時は、ただ漫然と文章を書き写すのではなく、なぜそう書いたのか、一字一句揺るがせにせず考える習慣をつけるのがいいです。文章は「書けば終わり」ではありません。読み手が存在します。文章の上手な人はぜったい「この文章ならどう読まれるか」あるいは「この文章を相手にどう読ませたいのか」を考えて書きます。だから書き手になったり、読み手になったりして、なぜまねたい文章家の文章がそうなっているのか、考えてください。

例えばPCでみんなが文章を書くようになった結果、「自分では書けない漢字を多用する人」が増えました。僕の文章はそういう方よりずっとひらがなが多いと思いますが、これは明確に意識してやっています。物書きの世界ではこれを「ひらくかどうか」と言って、ぜったいに意識する部分です。ひらき過ぎると文章が幼稚に見えますが、漢字を使い過ぎると文章が硬く見えます。読み手を考えて、適度にひらくのがポイントです。

このような見どころが文章家の文章には何十とあるので、それを気にしながら読むと面白いし、文章も上達します。

卒論などの研究論文を書くのは、僕にとって「勉強」ではなく「学問」であって、「研究」でした。これは勉強とはまったく異なるメソッドで、時間をかけ、試行錯誤を繰り返しながら、時間をかけて取り組みました。いつも楽しい作業でしたから、勉強ではないです。