戦後にGHQによる財閥の解体や資産の没収が行われたと思うのですが、現在も資産継承が出来ているお家は、どのようにこれを乗りきったのでしょうか？

質問

楽しく勉強させていただいています。質問させてください。戦後にGHQによる財閥の解体や資産の没収が行われたと思うのですが、りおぽんさんも含めて現在も資産継承が出来ているお家は、どのようにこれを乗りきったのでしょうか？

回答

僕の親族には母方、父方、妻の実家の3つがありますが、三者三様の凌ぎ方をしたようです。

母方の実家では、曽祖父が三菱財閥の中核である三菱本社の幹部社員だったと聞きます。このため戦前は丸の内に通い、岩崎家が開拓した文京区の土地に広い家を建てるという羽振りの良さでした。しかし戦後間もなく三菱財閥は解体され、日本政府の財産税法や新円切り替えによって生活もままならなくなります。家も空襲で焼けて、戦後の数年はほんと苦しかったようです。

しかし戦後間もなく、曽祖父は三菱財閥に早々に見切りをつけ、祖父ととある商社を起業しました。最初は闇市相手の事業だったと聞きますが、日本政府の財産税法も事業資金は対象外だったのが大きかったようです。僕が生まれた1960年頃、祖父は自分で起こした中堅商社の創業社長としてかなり儲かっていました。焼け野原になっていた自分の土地に日本庭園や池まである家を建て、そこに10人以上の使用人を住まわせて暮らせるようにはなっていました。趣味人だったので芸者遊びや相撲のタニマチにもなっていましたが、有望な若い人を大学に行かせる資金援助などもしていたようです。

父方の実家は戦前、広い農地を持っており、それを小作人に貸して収益をあげることを柱に生活していました。しかし戦後は農地解放でそのほとんどを失いました。しかし戦前から副業として、繊維工場を経営していたり、その他小さな会社をいくつか持っていたりしたんです。これが戦後、大きな躍進材料になりました。特に1950年に勃発した朝鮮戦争で「糸へん景気」が勃発、繊維会社をいくつも経営していた祖父は巨万の富を築いたと聞きます。

この繊維工場はすでに手放していますが、この時期祖父が買った温泉旅館や、起業した旅行代理店業などいくつかの事業が、現在の僕の父方の親族の家業になっています。また地方都市なので、さまざまな婚姻関係を結んで、地方銀行や地方新聞、テレビ局、大病院の院長などに親族が散らばっています。ただ本家には才能ある人がいなかったので、現在は絶賛斜陽中です。

妻の実家は庄屋の家だったので、戦前は村の土地はほぼ自分のもので、曽祖父は読書三昧の地方の文化人をやっていました。東京や関西から気に入った芸術家や作家を招いて寄宿させたり、パトロンの真似ごとをやっていたりしていた記録が残っています。

しかしやはり農地解放でほとんどすべての土地を失います。ただ残っていたのは持っていた山の水利権でした。また村の人たちに長年貸してきた借金の返済額もバカにならない額になっていたようです。義祖父は自分の土地も村の人に貸し、こうして得られる不労収入で、読書三昧、暇つぶしに猟をして一生を過ごしたと聞きます。ただ今も村の人に語り継がれる名村長であり、その地方の農業を振興させた人物として記録に残っています。