村上春樹にハマり、似た本をご存知でしたら教えていただきたいです。

村上春樹って、僕は、正しく文学青年になって、カフェで小説読んで、映画観て音楽聴いて、恋愛もし、そうやって出来上がった自分の内なる文化と経験を、さほどの技巧を凝らすことなくペンにのせている、今どき稀有な小説家だと、僕は思っているんだよね。だから同じ路線を歩んできた僕みたいな人間にとって、若干の嫉妬を感じつつ、共感しやすい。特に初期作品にはモロにハマった。

村上春樹に似た本といえば、直ぐに思いつくのは、村上春樹自身が翻訳をしているレイモンド・カーヴァー。

村上春樹はなんかのインタビューで答えているはずだけど、「群像」の新人賞を取って嬉しかったこととして、これから好きな海外小説家の本を翻訳できるようになったことを挙げていた。これなんかモロに本好きの発想だけど、その中で特に翻訳対象に選んだのがカーヴァー。

ご本人が好んで訳されるぐらいだから、作風も似ているし、訳文は村上さんだからモロ村上春樹風。「頼むから静かにしてくれ」「「愛について語るときに我々の語ること」、それに「大聖堂」っていう短編集を読んでみて。「僕が電話をかけている場所」なんて村上春樹感たっぷりだから。

村上春樹が翻訳を手がけた小説家には、ほかにスコット・フィッツジェラルド、J.D.サリンジャー、トルーマン・カポーティー、それにレイモンド・チャンドラーがいる。ほんと翻訳するのが楽しいんだろうね。さすがにこの辺は大物過ぎて翻訳書のすべてを村上春樹ができるようにはなってはいないけど。

完全にイコールではないけれど、スコット・フィッツジェラルドであれば、読んでみて欲しいのが、「楽園のこちら側」「偉大なるギャツビー」という長編と、「バビロン再訪」を含む短編集。

J.D.サリンジャーであれば、以後ほぼすべての青春小説で、比較され類似性が語られることになる「ライ麦畑でつかまえて」。村上春樹はこれを「キャッチャー　イン　ザ　ライ」のタイトルで訳しているけれど。ほかには「バナナフィッシュにうってつけの日」などを含む「ナインストーリーズ」、それに「フラニーとズーイー」あたり。

村上春樹が翻訳したことで「ああやっぱり」と思ったのが、シェル・シルヴァスタインという作家兼イラストレーター。僕は倉橋由美子が訳した彼の「僕を探しに」「歩道の終わるところ」「屋根裏の明かり」が大好きだったんだけど、村上春樹もぜったい読んでいるよね。彼は「おおきな木」を訳した。絵本と思わず読んでみて。

ティム・オブライエン「世界のすべての7月」「カチアートを追跡して」、それに「本当の戦争の話をしよう」といった短編集やエッセイ、グレイス・ペリー「人生のちょっとした煩い」「さよなら、グッドラック」「中古品の子どもを育てる人々」、ポール・セロー「我が家の武器庫」「モスキートコースト」あたりは、村上春樹が自分で訳したか、これから訳しそうなラインアップ🤣。

日本人作家では村上春樹アドマイヤーと言えそうな作家群がいる。その中では伊坂幸太郎「アヒルと鴨のコインロッカー」、古川日出男「2000年のスロウボート」、大崎善生「別れの後の静かな午後」あたりはモロ。

村上春樹の先駆者的作家としては、上記のような米国の小説家を思わせる作品を書いたオシャレな小説家として片岡義男をあげておきたい。シンプルな恋愛小説が多いけれど、「スローなブギにしてくれ」「彼のオートバイ、彼女の島」「ボビーに首ったけ」「ラジオが泣いた夜」「味噌汁は朝のブルース」あたり。最近は古本屋で探さないと入手不可能だけど。

もう1人サリンジャー繋がりで僕の最愛の作家に1人、庄司薫を挙げておく。「赤頭巾ちゃん、気をつけて」「白鳥の歌なんて聞こえない」。

作風は違うけれど、「100年の孤独」「コレラの時代の愛」のガルシア=マルケスと、「伝奇集」のホルヘ・ルイス・ボルヘスを村上春樹は読んでいて、影響を受けているんじゃないかと僕は睨んでいる。