経済学や社会科学部なら数学できないのに合格させてはいけないのは納得です。

神道学科や仏教学科で学ぶ文系学生がいったいどれぐらいいると思っておっしゃっているんでしょうか。國學院大学の神道文化学部や上智大学の神学部、駒沢大学の仏教学部の学生に対しては物珍しいとは思っても、お前ら数学ができないという人はまずいないと思います。こういう道理に合わない主張をして我説にしがみつくからバカにされるんです。

文系学部といっても数学の必要性には濃度の違いがもちろんあって、理論経済学、現代経営学では必須です。社会学や心理学、商学、理系学科になることも多い文化人類学でも欠かせません。

政治学は近年まで政治哲学や政治史などのウェイトが強く、これが政治学が現代的な学問として遅れているという指摘に繋がってきました。このため政治学でも数学の導入が急速に進んでいる段階で、国際政治学ではゲーム理論が当然のように出てきますし、現代政治学では統計学的手法や各種のモデル化による解析手法を取り入れるようになっています。

ということで大学で学ぶこと自体に数学が比較的不要なのは、法学、文学、外国語学、歴史学あたりということになります。文学部で文学を学ぶ人に「お前ら数学ができない」とは言ったりしません。

また経済学でも経済史やマルクス経済学であれば、数学が比較的不要です。このため受験科目に数学がない早大政経学部経済学科ではごく近年になるまで、今どき珍しいマルクス経済学を学ぶゼミ生がけっこう多いという笑い話がありました。同大学では先端的な理論経済学を学ぶために必要な数学を学ぶ「経済数学」という講義を開講していたんですが、学ぶ学生は少なかったようです。

ですから特に数学ができないのに、何を学んでいるんだろうと不思議に思われるのは、主に経済学部や経営学部の学生に対してということになります。実際問題として僕には大学時代の友人でMARCHクラスの大学で経済学の教授をやっているのが数人いるんですが、はっきりと教えることがないと嘆いています。

僕は大学時代、数理経済学をやったので、その同級生や先輩後輩と言えば、そっち方面の研究者なんです。しかし、そんな話をしても理解できる学生はいませんから、時事的な経済ネタを話しながら、初歩のミクロ経済学や経済政策について講義して1年が終わるそうです。不均衡動学とか二部門成長モデルの先端的な研究をやっている研究者にとっては、つまらないこと夥しいですが、教授ポストは貴重ですし、学者も食っていかなければなりません。この辺の先生方は勉強会のお誘いをかけると、自分の研究が鈍らないようにと、喜んで参加してくれるケースが多いです。

僕と同じ先生に習った先輩に現日銀総裁の植田和男さんがいます。植田さんが東大経済学部教授であった当時はなかなかの人気ゼミでしたが、退官後、共立女子大教授に転じたら、講義がつまらないと学生から言われたとご自身が冗談としておっしゃっています。おそらく講義することがなかったんでしょう。

この手の話は根強くて、僕が学生時代参加していた経済学の研究会ではインカレ研究のお誘いがたくさんありました。しかし研究のレベルを下げたくないという理由で片っ端から断ることになって、残ったのはやはり一橋大と慶應義塾大の経済学部の某ゼミだけでした。今であれば日本女子大の経済学研究サークルの申し出は断らず、手取り足取り教えてあげますが🤣。

以上のような話が文系学科の現状です。ごくわずかな数学ができなくてもいい反証にしがみつくより、高校レベルの数学は理解する方が、自分の可能性が広がることは確かで、これを選民思想だと考えるのは、時代錯誤も甚だしいです。

早い話、株式投資をするのであれば、数学的思考ができるかできないかで、天地の差が出ます。リベラルアーツという考え方があり、これは人間を自由にする諸学問と理解されます。これには数学(算術)が含まれるのが一般的です。数学ができない人間の活躍の場はどんどん狭まってきていますから、選民思想だとかなんだとか言っている前に、数学を武器にした方が手っ取り早いと思います。