ヤマハは外国人のピアニストにも一流メーカーとして認知されていると思いますか。

思います。俗にスタインウェイ、ベーゼンドルファー、ベヒシュタインを世界3大ピアノと呼びます。4大というとブリュートナーがこれに加わります。でも、世界の一流コンサートホールに設置されているグランドピアノを考えても、大きなコンクールで外国人出場者が自分の意思で選ぶピアノを考えても、現在での実力やピアニストたちの支持を考えた上での3大ピアノは、スタインウェイ、ベーゼンドルファー、そしてヤマハだと僕は思います。過去の名ピアニストたちが愛してきたという「歴史」に欠けますが。ベヒシュタインは歴史があるとても良いピアノで、繊細で色彩感があるのに温もりがある音色なので、中欧の名コンサートホールでは設置されているところを比較的見かけますが、世界的な広がりには欠けます。

スタインウェイがちょっと抜け出ていて、残る2つがこれに続く感じ。世界の一流ピアニストにも、クラシック、ジャズに限らず、ヤマハピアノの支持者がいます。歴史に残る名ピアニストではグレン・グールドやスヴャストラフ・リヒテルなんかがヤマハピアノ愛好者でした。このリストはこれから増えるでしょう。

明るくて元気で、高音域の伸びが良いのが、ヤマハピアノの特徴です。あと、タッチが軽い。その点でスタインウェイに比較的近く、ベーゼンやベヒなど欧州勢と音色がわかれます。木材の質にこだわる欧州勢に対し、スタインウェイやヤマハは比較的金属を多用しているせいでしょうか。

欠点はやや低音域が弱くて、金属的なカンカンと音が聞こえてしまう場合があることかな。弾き込むとその特性が出やすいので、わりと調音調律を要求します。音の深みや透明感でスタインウェイに少し劣るから、この辺でもう一皮むけたいところです。このあたりでヤマハピアノの支持がスタインウェイに敵いません。ただヤマハのピアノってどんどん改良が進んでいるんですよね。

ヤマハピアノの最大の利点は製品としてのピアノの質が安定していて信頼性が高く、企業として大きいのでサポート体制が整っていることでしょう。ヤマハはピアニストを育てる、サポートするという意識も強いので、それがピアニストの支持につながっているかと。3大ピアノに比べるとはるかに安価で入手しやすいので、ヤマハのピアノに慣れている、馴染んでいるというピアニストも増えてきました。ジャズの世界での支持が特に厚いヤマハピアノですが、クラシックの世界でも、自宅のピアノはヤマハという人が案外多いです。

なお、世界3大ピアノであることに異論がないであろうベーゼンドルファーは、ヤマハ傘下になりました。ご存知だと思いますが。