来月京都へ行くのですが、12月でおすすめの和菓子、行くべき菓子司、りおぽんさんが愛してやまないお店や和菓子を教えてください。

難しい注文だなぁ。人それぞれだから、僕が京都に行ったら行くところをツラツラと挙げていきますね。

まず百万遍の近くにある「緑寿庵清水」という金平糖屋さん。ここの金平糖はとても綺麗で可愛いので、とりあえず買って、京都散歩のおともにします。最近は東京でも買えるようになりましたが、本店でしか売っていないお品もあります。ただし「究極の金平糖」は要予約です。

ここで金平糖を仕込んだら、それをつまみながらぶらぶらと下鴨方面へ行きます。すると下鴨の住宅街に「茶寮　宝泉」という立派な門構えの甘味処があります。ちょっと気後れするような雰囲気ですが、気にせずに入ってそこで一休みします。ここは下鴨にある「宝泉堂」が経営するお店なんですが、お座敷で枯山水を眺めながら、お菓子とお茶が頂けます。上生菓子もその日作ったものなので美味しいですが、おすすめはわらび餅です。京都にわらび餅のお店はたくさんありますが、食べ比べた結果、僕にとっては宝泉堂さんのわらび餅が一番でした。

12月ですよね。となると、五条烏丸にある「末富」さんで、「雪餅」という師走だけの生菓子が買いたいかな。こし餡を道明寺でくるんで、氷餅を砕いたものをまぶしたもので、シンプルだけど綺麗なお菓子です。お値段も500円ぐらいです。「末富」さんなら師走だけのお菓子が他にもあるはずです。ちなみに僕は京都の古刹の住職をしている親族がいるんですが、そこでの檀家さんの集まりに利用しているのも「末富」さんです。京都の旦那筋の信頼が厚い和菓子屋さんだと思います。

有名どころでは祇園の「鍵善良房」さんにも季節の生菓子があるんじゃないかなぁ。喫茶を併設しているので、運が良ければそこでお茶を頂きながら美味しい和菓子が食べられます。同じ祇園の「柏屋光貞」さんも美味しい和菓子屋さんだけど、あそこは生菓子は要予約だった気がする。僕は基本的に京都は長居するし、和菓子屋さんはできるだけ予約してから行くので、要予約かどうかわからないんですよね。

祇園からほど近い白川筋の甘味処「ぎをん　小森」はいわゆる京都の和菓子のお店ではないけれど、和風の良い雰囲気の建物でお菓子が頂けます。抹茶パウンドケーキと抹茶わらび餅がオススメ。祇園で僕が愛しているのは「甘泉堂」さんという和菓子屋さんです。本当にこんなところにあるのかよと思う路地裏にお店がありますから、上手く辿り着けたら行ってみてください。店構えは有名店に比べるとショボいですが、味は引けを取りません。本当は水羊羹が美味しいんですが、季節外ですね。

祇園で和菓子と言えば、下弁天町の「小多福」さんも外せませんね。おはぎは京都では有名な「今西軒」さんとこちらが双璧だと思います。小ぶりな、ちょっと可愛らしいおはぎのバリエーションがこちらの名物です。ここも予約した方が良いですが、朝早く行けば、まだ完売になっていない可能性があります。ばらまき用のお土産だったら、八坂神社の前にある「祇園小石」さんで京飴を買うのもいいです。月替わりの飴を売っています。祇園ではそんなに混んでいない部類です。

祇園で僕が最後に紹介するのは「ZEN CAFE」という甘味処です。四条通を南に下ったちょっとわかりにくい場所にあるんですが、「ホテルささりんどう」というホテルを目指していけば、いけると思います。まだ新しいお店ですが、ここは実は「鍵善良房」さんが出した新業態店なんです。さきほど鍵善の喫茶部は「運が良ければ」と言いましたが、こちらはまだ知名度が低いので席がある可能性が高いです。ここで頂けるのはもちろん鍵善の和菓子ですが、このお店限定のものもあります。おっと、祇園の甘味処といえば「ぎをん徳屋」さんは外せないですね。ここもわらび餅や葛餅で知られるお店ですが、これからの季節だったら、お餅を入れて味わうぜんざいやお汁粉は身体が温まると思います。12月なら座れるんじゃないかな。

僕はともかく人混みが嫌いで、何かを買うのに行列する気がありません。観光客で賑わう京都にあってもそれは変わりません。というわけで、京都で行く和菓子屋さんもそれが条件になります。

その点で良いのが四条堀川にある「亀屋良長」さんの本店です。亀屋さんはとても有名な和菓子屋さんですが、この本店は観光客にとっては中途半端な場所にあるので、ほとんど混まないんです。師走のものがあるかどうかはわかりませんが、ここも季節の和菓子があります。僕は最近、亀屋さんが新しくプロデュースした新ブランド「吉村菓子店」のお菓子がお気に入りです。小さな甘味処も中にあるので、そこで一休みすることもできます。

後は鞍馬口で降りて10分ちょっとのところにある「聚洸」さんかな。京都ではとても新しい和菓子屋さんです。ご主人は「塩芳軒」の次男さんだと聞いています。ここの生菓子は基本的に要予約だけど、とにかくお菓子が美しいです。ぜったい予約してから行くことをおすすめしますが、朝早く行けば、幸運に出会えるかもしれません。今、京都で美味しい和菓子屋さんを５店挙げろと言われたら、僕は必ず「聚洸」さんを入れると思います。

京都で上品な和菓子のお店としては、七条の鴨川の近くに佇む「甘春堂」さんもオススメ。季節の上生菓子や和菓子がとても綺麗です。たぶん予約しなくても買えると思いますが、これはご自分で確認してください。お店の構えは「ザ・京都の老舗和菓子屋」です。

西陣の千本今出川にある「玉壽軒」さんも予約なしで買えるかもしれません。「西陣風味」が名物ですが、季節の上生菓子や干菓子も綺麗です。並びに喫茶店もあります。周辺では堀川今出川の有名な「鶴屋吉信」さんも外せないです。中村外二建築の立派な数寄屋の建物の中にお休み処があって、そこで美味しいお茶とお菓子が頂けます。確かこのお休み処は逆に予約ができなかった気がします。冬だったらお汁粉やおぜんざいでしょう。和菓子には要予約のものも予約不要のものもあると思います。西陣なら同じく有名な「塩芳軒」さんも予約なしで行けるんじゃないかな。「聚楽」というお菓子が有名ですが、ここは季節の生菓子を選ぶといいでしょう。たぶん予約不要です。

お干菓子であれば、僕は姉小路通りの車屋町にある超老舗の「亀末廣」さんに買いに行きます。お茶会を開いた時のお菓子に最適です。京都の本店での相対売り以外では売らないというお店の方針なので、亀末廣さんのお干菓子はお店に行かないと買えません。なんでも東京で手に入る時代では貴重な存在です。ハイシーズン以外は予約不要です。僕は「京のよすが」という干菓子のセットをよく京土産に使います。知っている人は知っているので、とても喜んでもらえます。

桂離宮の近くにある「中村軒」さんも予約なしで大丈夫なんじゃないかな。これからだったら、名物の麦代餅のほか、あずきを使ったお菓子がいいと思います。ここも甘味処があります。洛北にあって戦後の創業と京都では新参の和菓子屋さんですが、「御倉屋」さんもオススメです。看板商品は「旅奴」と「ゆうばえ」というお菓子ですが、上生菓子も美味しいです。すべて手作業で作っているそうなので、量産ができませんから予約した方がベターだと思いますが、予約必須ではありません。中に抹茶を頂きながらお菓子が味わえるスペースがあります。

団子なら、下鴨の松ヶ崎にある「美玉屋」さんがいいです。ここの黒蜜団子は名物なので、それなりに混みますが、京都で団子なら、僕が真っ先に思い浮かべるお店です。黒蜜といってもあっさりとした味わいで、とても美味しいです。餅菓子なら今宮神社の門前にある「一和」さんと「かざりや」さんもありましたね。どちらもあぶり餅で有名です。食べ比べてみてください。ただ1人では食べきれないかも。甘味処があって、意外と混んでいません。ちょっと待てばすぐに座れます。

餅菓子といえば出町柳の「ふたば」さんや「阿闍梨餅本舗」さんが有名ですが、ここは並ぶと思います。まだ「阿闍梨餅本舗」さんの方に可能性があります。なお、「ふたば」さんの豆大福がどうしても食べたかったら、京都駅の伊勢丹のお店に行くことをおすすめします。餅菓子で忘れていけないのは上賀茂神社の前にある「神馬堂」さんもそうですね。焼きたての「やきもち」の専門店です。売り切れたら店じまいするので、出来るだけ午前中に行った方がいいです。神社関連では北野天満宮の前にある「澤屋」さんに行くのも手です。ここの粟餅は絶品だと思います。ここも売り切れ終了です。

上七軒や嵐山にお店がある「老松」さんも悪くないです。僕はここの「夏甘糖」というちょっと苦味のある夏蜜柑のゼリーが好きで、夏になるとお取り寄せします。さすがにこれは季節外れですが、12月ならまだ栗のお菓子とかがあるかもしれません。僕は上七軒の本店の方に行きます。「琥珀流し」で有名な「大極殿本舗」さんは六角のお店はとても混みますが、高倉通四条にある本店は意外と穴場です。最近、本店にも甘味処を設けたので、そこで季節の琥珀流しを味わってください。

詩仙堂の近くにある「一乗寺中谷」さんには和菓子も洋菓子も置いてあります。素朴だけど「でっち羊かん」は美味しいと思います。ここはあんまり知名度は高くないんじゃないかな。12月だったら、嵐山の「竹路庵」さんもそんなに待たなくて済むと思います。ここの売りはわらび餅ですが、12月ならもう「いちご大福」も売っているはずです。

京都名物の生麩を使ったお菓子なら、丸太町の「麩嘉」さんだと思うけど、確か本店は小売りをもうしていなかったと思います。錦の支店に行ってください。生麩のお菓子だったら、五条橋にある「五建外良屋」というういろう屋さんの生麩ういろうや麩饅頭も悪くないです。

最後に京都ならではの洋菓子屋さんとして、京都市役所の近くの寺町にある「村上開新堂」さんを挙げておきます。100年以上の歴史がある、言わずとしれた洋菓子の老舗です。東京の村上開新堂さんは要紹介者ですが、こちらはそんなことはなくて、併設のカフェで美味しいクッキーがいつでも食べられます。京都というとみんな和菓子の老舗に行くので、意外と穴場です。開店間際に行って、とても雰囲気の良いカフェで限定商品の「ほうじ茶シフォン」を味わってください。

京都で要紹介者ではなく、予約必須でもなく、そんなに並ばなくて済んで京都らしいお菓子屋さんとして思いついたのは、この辺りです。