昭島市はどうでしょうか。

東京の都心から見て「果ての方にある街」という点では稲城市に似ています。人口もほぼ同じで新宿からの所要時間もだいたい同じです。ですからポジションは似ています。ただいくつかの違いもあります。

①稲城市の京王相模原線沿線地域は1970年代に多摩丘陵の山林が切り拓かれてできた「まったく新しい街」です。古いお寺や神社を別にすれば何もなかった場所に造られましたから、何もかも起源が新しいです。

一方、昭島市はもともと昭和町(その前は昭和村)と拝島村という江戸時代から続く古い村に起源があります。両者が合併したので両者から一文字ずつ取って「昭島」になったわけです。この後さらに中神村などが加わっています。

自然発生で成立しているので、稲城市のように丘上と丘下が無理矢理統合されたような無理がなく、昭島、拝島というコアがあります。この両者も鉄道で連結されているので一体感もあります。成立が古いですから、起源が古いものもあり、稲城市の丘上部分のように何もなかったところに住宅地として新しく設計された訳ではありません。既存のものの中に新たに宅地開発が行われたり、あるいは既存のものが建て替えられて宅地開発が行われている。ですから稲城市の京王相模原線沿線のような街のスッキリ感はありません。

②稲城市の京王相模原線沿線は、多摩ニュータウン建設にともなって開業しています。沿線は東京のベッドタウンになるように開発されたので、京王相模原線の稲城駅より先にある駅の街づくりは、住宅地とその居住者を相手にする商業施設など「だけ」です。ですから純然たる住宅街です。

一方、昭島や拝島は成立が古く、特に住宅街になるように設計されたものではありません。中神には工業団地もありますし、けっこうな企業が工場や事業所、本社、研究所などを置いています。工業地、商業地、住宅地が入り混じっていることが両者の大きな違いです。昭島市がベッドタウンとして注目されて宅地開発が進んだのは比較的最近のお話だと思います。

このため街に雑然感はどうしてもありますが、逆におそらくですが市の財政規模は昭島市の方がずっと大きくて財政状況が良いはずです。その上古い施設もあるので市民サービスが充実しやすいです。

③インフラの部分がまったく異なります。稲城市の京王相模原線沿線地域は新たに宅地開発されたので、電気ガス水道などのインフラも新たに引き込んだものばかりです。

一方の昭島市は江戸時代から続く街として成立してきたので、自立するインフラがあります。最近の事情はよく知りませんが、電気は東京電力ですが、ガスは昭島ガスという都市ガス業者なんじゃなかったでしょうか。また水道も東京都水道局ではなく昭島市営水道だった記憶があります。このあたりに違いがあります。

以上のように新宿から30-40分の距離にある住宅地というポジションは同じでも、テイストがだいぶ異なります。稲城市の京王相模原線沿線は「新しくて純然たる住宅街」ですから「住環境を求める人」に向いています。

一方、昭島市は「利便性を求める人」に向いています。だからあなたは「便利だ」と考えて移り住むことにしたんでしょう。商業施設は昭島駅や拝島駅の周辺にあるほか、電車に乗れば立川駅も直ぐです。車があれば国道16号線沿いのロードサイド店舗も使えるでしょう。交通も青梅線のほか、コミュニティバスや立川駅を目指す私営バスなどバス網が張り巡らされています。

稲城市の方はほぼ同世代の方が移り住んで子育てをされています。一方、昭島市の方はさまざまなライフステージの方が居住されていることも大きな違いでしょう。