逮捕された時に、報道される人とされない人は、何が違うのでしょうか？

「報道する」ってどういう意味？まず「逮捕されたこと」を報道するかどうかは、その事件を報道することにニュースバリューがあるかどうかで、各メディアが判断する。例えば強盗事件が話題になっている時は強盗事件が大きく報道されやすいし、オレオレ詐欺が話題の時は、それが報道されやすい。また逮捕者に社会的な地位や公職性があれば、まず報道する。

この逮捕された人を実名で報道するのか、肩書きをどう報道するのかが微妙な問題で、報道各社には社外秘の社内ルールがある場合が多い。実名報道に積極的な社もあれば、控えめな社もある。おおむね公職者や社会的地位のある人であれば、実名報道する。例えば贈収賄事件で逮捕された人を実名で報道しない社はまずない。今回の野村證券の事件の場合なんて、デカデカと社名入りで実名報道するのが当然で、伏せる社はまずない。

一方、精神障害者などの場合には実名報道を控えるのが原則。だから最初は実名報道されていた殺人犯が、精神障害があったと推定された場合、匿名報道に切り替える社が多い。もちろん未成年者は原則として匿名。

後は犯罪が重大か軽微か、初犯か累犯者か、実名報道することに利益やニュースバリューがあるかどうかが、実名か匿名かの判断の分かれ目になる。

経済犯罪は実名が原則だけど、関係者が多い場合、首謀者だけを実名報道するケースもよくある。一方、自転車泥棒を実名報道していたらキリがないから、報道しても公職者であるなど特別な事情がない限り匿名だし、そもそもニュースバリューが低いので、記事にしない場合が多い。

一番ややこしいのは肩書き。特に民間企業の場合。例えば上場企業の会社員が痴漢行為だとか未成年者への性行為なんかで逮捕された場合。性犯罪は罪の重さに比べて実名報道するのが原則。ただこの時に「◯◯社社員の◯◯」と報道するか、「会社員の◯◯」と報道するかどうかってケース。

この場合、その◯◯社の広報宣伝部は必死に自社名を入れてこないように全力を挙げてくることが多い。この場合は逮捕された報道をするのは社会部だけど、広報宣伝部が自社名を入れないようにお願いして来るのは、自社を担当している経済部記者で、バーターに何か情報をくれる場合が多い。後は経済部と社会部の社内ネゴ次第。

また広告代理店を通じて広告局などに自社名を伏せてもらえるよう、お願いしてくる場合もけっこうある。この場合「広告を出すから許してくれ」という場合もある。こうなると広告局から社会部にお願いが行く。

ここで社名付きにするか伏せるのかは、社会部の部長やデスク、それに当の社会部記者の気持ち次第。硬派な記者は広告局とかが介入してくるとヘソを曲げて、突っぱねることもあるけれど、社名を入れることに本質的な意味がない場合、まあそれぐらい見逃してやるか、ということになる場合も多い。

中小企業みたいに社名を入れても誰もわからない場合は、会社員とか会社経営者っていう肩書きでの報道になる。

まだわからないところはあるかな？