質問
なぜイエス・キリストは「右の頬を殴られたら左の頬を差し出せ」 なんて教えを説いたのでしょうか?繰り返し囚人のジレンマゲームとか考えたらむしろその真逆のしっぺ返し戦略が最適ですよね。
回答
これは長い間、神学者やキリスト教信仰者たちの間でさまざまな解釈が行われてきました。聖書にはもともと「目には目を、歯には歯を」というハンムラビ法典でも知られる有名な一節が繰り返し出てくるんです。「骨折には骨折、目には目、歯には歯である。負わせたのと同様の傷を負わされる」(レビ記24:20)といった具合です。出エジプト記や申命記にも同様の一説があります。でも同じレビ記には「隣人に復讐をしたり、恨みを抱いたりしてはならない」ともあって、なかなか難しいです。
「右の頬を〜」という一節は新訳聖書のマタイ記に出てくるんですが、その一文しか知らない人が多いですね。正確には「あなたたちはこう言われたのを知っています。「目には目を、歯には歯を」。しかし私は言います。悪人と争ってはなりません。誰でもあなた方の右の頬を平手打ちする人には、ほかの頬をも向けなさい」(マタイ記5:38、9)。だいぶニュアンスが違うでしょう。
まず「あなたたち」は山上の垂訓を聞くキリストの信者に向けたとも取れますが、復讐法の律法を説くユダヤ教の律法学者に向けたとも取れます。これで意味が大幅に変わってきます。解釈はそんなに簡単ではないんです。少なくとも聖書は、旧約、新訳を通してみれば、罪を犯した人間に償いを求めること自体は、否定していないと僕は思います。無抵抗主義ではないんです。ただ、私的な復讐に制限を求めてはいます。
その上で、「復讐心や恨む心を昇華しなさい。それは私の死をもって引き受けてあげよう」とイエスは言いたかったんだ、と僕は解釈しています。これはもちろん僕なりの解釈。この一説には本当にさまざまな解釈があるんです。
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