自民党公認取り消し、あれどうなんでしょ？

石破茂さんと小泉進次郎さんにとって、公認問題はどっちに転んでも地雷でした。公認すればマスコミや世間、そして野党から「石破さんたちは政治と金の問題にケリを付けられない」と攻撃されます。一方、非公認にすれば、非公認にされた代議士たちを敵に回します。

今回は「公認しない」「比例復活を認めない」という選択をしたわけですが、これで旧安倍派を完全に敵に回しましたね。裏金問題から距離を置こうとすれば、確かに無派閥で大臣待機組だった方々を10人以上入閣させざる得なかった理屈です。ですが石破さんはもともと党内基盤が弱く、議員間の人望もない方だったので、「選挙後」の後始末が大変そうです。旧安倍派を敵に回すということは、旧二階派を含めて、自民党保守派を敵に回すということです。衆院選で敗北すれば、「禊ぎが済んだ」この方たちが早くも「石破下ろし」で動き出す可能性もありそうです。

「非公認」にしたのは旧安倍派の中ボスたちが多く、裏金問題がなければ総裁選に立候補してもおかしくなかった方もいます。選挙に強い方もいるので、非公認でも当選できそうな方もけっこういます。「公認はするけれど重複立候補は認めない」という方たちにとっては死に物狂いの選挙になりますが、「自分の職」がかかった選挙での遺恨だけは、政治家はぜったい忘れません。

しかもこの措置は中途半端なので、「石破と小泉はよくやった」という評価を世間から得られてはいません。さらには線引きが厄介なので、今後他派閥で同種の問題が出ればどう対処するのかが問題です。旧二階派や旧岸田派、さらには麻生派でも類似の問題は指摘されているので、今後なんらかの報道があれば、同様の措置を迫られる可能性もあります。ということは自民党保守派も自民党リベラル派も、自民党のメインストリームにいた代議士たちををすべて敵に回すということです。

石破さんも、小泉さんも、無派閥の方でしたからこの選択ができたんでしょうが、これで「仲間を守らない人たち」という烙印が押されましたね。古い話ですが、三木武夫さんが首相だった時、政治資金規制法を改正しようとしたり、田中角栄さんが逮捕されるのを黙ってスルーしたりしました。これは世間の喝采を浴びましたが、自民党内では激しい「三木おろし」が発生しました。これで党内の協力が得られなかったので、三木内閣は2年間で政治資金規正法強化以外、ほとんど成果らしい成果が出せなかったと思います。

自民党の派閥というとネガティブな面ばかりが強調されますが、「政策研究会」という側面があって、政治的な方向性が同じベテラン議員がまだ右も左もわからない新米議員に各種の政策について勉強させる場として機能します。国会議員としての振る舞い方についても教える場合が多々あります。

また代議士というのは当選4-5回になって大臣になるぐらいまでは日々の活動や選挙に向けての活動で、資金的に持ち出しになるケースが多いです。そういう議員を資金的に支えるのも派閥の役割だったんですが、この一線を踏み越えてしまったのが裏金問題というわけです。ですから非公認だとか重複立候補を認めないというだけでは、根本的な解決策にはなっていません。

このままいけば、自民党は「当選に苦労しない世襲議員で、人気だけある政策には不勉強な代議士(小泉さんを特に指しているわけじゃないですよ)」や「自分で選挙活動をする資金に困らないお金持ちのお年寄り議員」がどんどん増えてしまい、若くて有能なやる気だけある議員が枯渇してしまうんじゃないかとも心配しています。「資金集めに汚い代議士」も返って増える恐れもあります。

どっちみち3人人が集まれば、派閥ができると言われます。裏金問題で各派いったん派閥を解散しましたが、「政策集団」といった形で、いずれ新しい派閥が形成されていくと、僕は思います。その時に、ちゃんと政策を論じられる集団であればいいんですが。