【雇用統計】米国の強い労働市場は本物か?
アメリカは現在、インフレ率が再び上昇傾向にあります。インフレ率は6月を底に反発しています。
インフレ率と雇用がどう関係するの?という人もいるでしょう。
誰でも分かるように簡単に解説しますね。
1️⃣雇用が強いということは、企業はお金をたくさん出してでも労働者を集めたいということですね。
2️⃣つまり、賃金が高止まりします。
3️⃣そうすると、人件費が高くなるので、サービスの価格も高止まりします。
4️⃣よって、サービスの価格を下げてインフレを抑えるためには、失業者が増えて賃金が下がる必要があります。
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サービスのインフレは、全く沈静化せず2022年から高い状態を維持しています。
パウエル議長は先日行われたFOMCで「利上げにおいては検討の余地あり」といったハト派な姿勢を見せました。
しかし、利下げについては「委員会は利下げについて検討、協議していない」と強く否定しました。
FRBパウエル議長が利上げペースに対して難色を示してるのは、サービスのインフレが強いことが大きな要因ですね。
サービスインフレが沈静化しないのはFRBにとって大きな悩みでしょうね。
仮に利下げをしたくても、インフレ再燃の火種になりかねませんからね。中東情勢が悪化している事で原油価格も上昇傾向になり、インフレ再燃材料は集まるばかりです。
そんな中、「依然として労働市場は強い!」「アメリカの労働市場は堅調だ」といった文言をよく見かけます。
本当でしょうか?実際はどうなのか見ていきましょう🐰
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現在の米国の失業者を見ると、失業者は8月に急上昇。年初来高値を更新しました。次の9月も高い水準を維持しています。
しかし就労者数を見てみると、本年度5月に一度下落したものの、そこから前月を下回る事なく上昇しています。
では就業者の内訳についても見ていきましょう。常勤労働者は7月から下降傾向。
逆にパートタイム労働者は7月から急上昇していました。
この要因の一つに「GM」「クライスラー」「フォード」の一斉ストライキが大きく関係しています。
自動車産業が電気自動車に移行する中での構造変化で、米自動車大手との労使交渉が停滞。
ゆえに各所でストライキが起きました。
賃金や雇用保障を巡る対立が長期化したことで、労働者たちはパートタイマー雇用に流れていったのではないかと推測されます。
パートタイム雇用の位置づけと特徴の重要な項目について、論文より抜粋します。
※抜粋部分は読み飛ばして平気です。
━━━━抜粋ここから━━━━
✔︎ かつてパートタイム雇用の多くはフルタイムの安定雇用への通過儀礼だったが、ここ数十年間でパートタイム雇用の永続性と増加傾向はとても強くなっている。
✔︎ パートタイマー雇用は非正規労働の中でもっとも一般的な形態。テランポリー労働者(日雇いや臨時雇用など非正規雇用で働く労働者の総称)の約8割を占める。
✔︎ 企業はフルタイム労働者数を削減することで、パートタイム労働力と低賃金を増大させることができる。福利厚生を削減することができるほか、医療保障を排除、雇用の柔軟性レベルを拡大することができる。
✔︎ パートタイム労働は、景気後退時に増加する傾向がある。多くの者が「非自発的に」こうした職(パートタイム雇用)を奪い合う。
✔︎ 労働者はフルタイム雇用の確保を大いに好むが、理想とは言いがたいが収入を生み出す労働形態に妥協してしまう。パートタイム労働者の約4分の1は非自発的パートタイム労働を行っており、そのほとんどがフルタイムの仕事を見つけられない。
アーベル・ヴァレンズエラJr.氏(カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授)非正規雇用の国際比較―欧米諸国の最近の動向―
━━━━抜粋ここまで━━━━
簡単にまとめます。
✅景気後退時には企業はパートタイムの採用を強化する傾向にある。
✅望んでいないのに正規雇用にありつけない。
✅パートタイマーにならざるを得なくなっている人が結構いる。
つまり、強い雇用者数は見せかけの可能性もあるのです。
上記のことを加味すると、雇用数だけを見て「労働市場は堅調だ」と断定するのは難しいですね。
また年間平均時給をみると、本年度2月から下降傾向にあります。
このままインフレが再来すると、今の労働市場は堅調ではなく、悪化の一歩手前ではないでしょうか?
沈静化しないサービスインフレは多くの労働者を苦しめています。
その日暮らしを強いられている労働者が実は多く「なりふり構わず働かないと、現在のインフレでは生活していけない」というのが、今のアメリカ労働市場の実態ではないかと考えます。
そういう意味では、米国経済は一寸先は闇なことを承知の上で前に進んでいるのではないかと考えてしまいますね。
雇用統計では、出てくる表面的な数値だけではなく中身を精査する必要があるのです。
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