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投資法・投資哲学

日本の半導体が凋落した原因をどのように整理していますか?

質問

日本の半導体が凋落した原因をどのように整理していますか?アメリカの圧力(日米半導体協定)?経産省の失策?それとも日本の花形だった家電メーカーのイノベーションのジレンマ?

回答

最大の要因は「日本は半導体専業メーカーではなかったこと」だと考えています。日本で半導体事業を手掛けたのは、主に総合電機メーカーで、半導体事業はその1部門でした。重電部門や家電部門の出身者などが経営トップに就くことが多くて、彼らには半導体に関する深い知見なんてありませんでした。半導体事業には長期的視野に立って巨額投資を実施することが必要ですが、それを彼らに求めるのは無理な話でした。

最近はあまり聞かれませんが、半導体には「シリコンサイクル」があって、かつては4年に1回の谷の時、巨額の赤字を計上しました。日本の総合電機はこのタイミングで赤字を最小限にしようとして投資を大幅に圧縮しました。ところが海外の半導体メーカーは、このタイミングで次の山で儲けるため、巨額投資を実施した。これでシリコンサイクルのたびに日本企業と海外メーカーの差がどんどん開いてしまったわけです。

もうひとつ、メモリ半導体を日本メーカーに独占された米国のIntelなどの半導体メーカーは、ロジック半導体に注力するという経営判断が出来ました。この判断をするだけの知見が日本の総合電機メーカーの経営者にはなかった。自分たちが手掛ける製品の中にどんどん半導体が組み込まれていくことまでは、見えた筈なんですが。

これに日米貿易摩擦で「日米半導体協定」が結ばれたこと、この摩擦の過程を経て通産省(現・経産省)が萎縮してしまったことが、凋落に拍車をかけることになります。これは私見ですが通産省は「自動車や製鉄を守るため、半導体を捨てた」気がしてなりません。これで1990年代後半のPCの爆発的普及、モノのデジタル化などの波に決定的に出遅れました。

総合電機メーカーが半導体部門をスピンオフして合併独立させたのは、ルネサスエレクトロニクス(日立、NEC、三菱電機)が2010年、ソシオネクスト(富士通、パナソニック)が2015年です。時遅しでした。

日本のメモリ半導体として最後までフラッシュメモリで頑張った東芝の半導体部門が独立してできたキオクシア(旧東芝メモリ)が2017年で、同社は今なお世界有数の半導体メーカーですが、東芝が不適切会計の余波を受け「重電部門や社会インフラ部門を守った」ので、事実上パンゲア傘下になっています。最後の最後に産業革新機構や政策投資銀行が出張って、Western Digitalやホンハイに買収されるのを防いで、日本の議決権を過半数で維持したのが唯一の救いです。

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