質問
TSMCを最初に知ったのはいつ頃ですか?
創業したばかりの頃からご存じでしたか?
回答
TSMCはある意味、「創業する前」から知っていました。1980年代の台湾は孫ウンセンといった政治家が極めて長期的な視野で「科学技術立国」を図っていました。この孫が、Texas Insutrumentsの半導体部門のトップを務めた後、General InstrumentasのCEOをやったモリス・チャンを引っ張ってきて「工業技術研究院(ITRI)」の董事長に据えたんです。半導体事業の大物が就いたということで、1985年だったか86年だったかに最初にインタビューしています。
でこのモリスチャンがITRIの董事長をやりながら1987年に創業したのがTSMCです。ITRIは台湾経済部直属の法人ですから、日本でいえば経産省直属の科学技術推進機関のトップが、そのトップをやりながら半導体事業を自ら手がけたようなもんです。これはもう国策事業としか言いようがないので、設立の報を聞いて注目せざる得ませんでした。
そもそもRCAとの技術移転契約を結ぶことに成功して、台湾に「半導体産業」っていうもののタネを撒いたのがITRIです。ITRIが関係して設立した会社にはTSMC以外にもUMCやVISなど世界を代表する半導体製造企業があります。この他にも台湾国内のノートPC会社を41社集めて分業体制を作って国際競争力を上げるなんていうこともしています。
1981年には日本のジェトロに相当する対外貿易発展協会の肝煎りでComputex Taipeiというコンピュータに関する国際見本市を開催、勃興期だった台湾ハイテク産業の売り込みを図っています。僕は1985年からほぼ毎年、この催しを取材に行って台湾ハイテク産業の発展を見てきました。
台湾のハイテク産業や半導体産業の「今」があるのは個人の偶然によるものではないんです。孫ウンセンといった政治家やモリスチャンみたいなのが長期的な視点に立って育成に努めてきたからなんです。
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