鈍行列車の旅で一番の思い出はなんですか？？

「ひたすらのんびりと旅をして、鉄路の匂いを嗅ぐのが「鈍行列車の旅」の醍醐味です。最近はけっこう田舎のローカル線の鈍行まで鉄道マニアが乗るようになりましたが、僕の若い頃にはそんな酔狂な人間は少なかったので、1両の車両を独り占めなんてことがしばしばありました。

ただ僕は何かことがあると楽しくなってしまう性格なんです。鈍行列車の旅をしていて、何かトラブルに巻き込まれたり、列車が事故を起こしたり、あるいは大雪や大雨で動かなくなったことが何度もあります。「一番楽しい」と聞かれると、そのどれかっていうことになりますね。

これは鈍行列車ではなく、金沢駅発上野駅行きの寝台急行「能登」という列車の話です。高校時代、僕が金沢と東京の間を青森や下関を経由するので「行方不明になるから心配」と怒った伯母が、乗車券と寝台急行券を買って、僕が金沢駅でこれに乗車するところまで見張りに来ました。「今回はつまらない旅になる」とブーブーしていた僕ですが、天は僕に味方しました。急行「能登」は大雪のために上越線内で長時間運転不能になってしまったんです。

そこからは僕の好き放題。平謝りするカレチさんを慰めて仲良くなってしまい、カレチさんもすることがないので、ふだんは見せてもらえない列車の中をいろいろ見せてもらいました。先頭車両から連結部分を見に行ったり、14系客車の最後尾に行って雪の状況を見たり。

偶然、僕が乗った席が僕以外は女子大生3人組だったので、不安がる彼女たちをなだめて、一緒にトランプなんかして遊びました。長時間、列車がストップしたのでみんな空腹になりましたが、伯母が僕を金沢で乗せる時、嫌がる僕に無理矢理持たせた大量のお土産がこの時には役に立って、4人で仲良く分けて食べたものです。その頃には3人とも僕をすっかり頼りにするようになったので、動き出してようやく駅でお弁当が買えるようになった時にも、僕がみんなの分をまとめて買ってきました。

上野駅に着く頃にはもうみんな仲良くなっていて、降りる時に僕がみんなの荷物を下ろしてあげていたら、涙ぐんじゃう女の子もいたぐらいです。この時に連絡先も交換したので、その後もけっこうみんなでわいわいお出かけする間柄になりました。これなんかはけっこう「青春の思い出」として可愛いんじゃないでしょうか？